深夜に公園で全裸になっていたら、警察官に職務質問されて捕まったという相談(刑事弁護)
2024年10月12日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、福岡県大野城市に住む45歳の薬剤師です。妻もいますし、小学生と中学生の娘もいます。私には結婚前から隠している性癖があり、ストレスが溜まると全裸で外を徘徊したくなります。いつもは登山して誰もいない場所で全裸になったりしているのですが、仕事が忙しくて山に行けない日が続いています。ある時、深夜に「散歩」として出かけた時に、人のいない公園で全裸になったら凄く開放感があり、それから月に1~2回繰り返すようになりました。防犯カメラが付近にはないことを確認していたのですが、昨日、巡回中の警察官に見つかり、警察署に連れて行かれました。妻と子どもには絶対に知られたくありませんし、報道もされると困ります。資格を失うことになるかもしれません。
A、弁護士に依頼して、不起訴処分に向けた活動をすることで不起訴(起訴猶予)にできる可能性があります。ストレスが引き金となっていますので、別の合法的なストレス解消方法を見つけることも含め、ケアしていかなければいけないと思います。精神科医のカウンセリングを受けて「ストレスのケア」について相談することも有効でしょう(あえて事件のことを話す必要はありません)。本件の内容であれば、報道されずに終わらせることも可能でしょう。弁護士から意見書を出すことも有効と思います。
【解説】
真面目な方が起こす性犯罪のひとつに、「公然わいせつ事件」があります。公然わいせつ事件といっても、女性に性器を見せつけようとするタイプと、ただ、外で全裸になりたいというタイプがいます。後者の方は、知的障害があるパターンもありますが、そうでない場合は、ストレスを抱え込み過ぎて、その解消方法が深夜に外で全裸になるという形で発現してしまっていることがあります。
ご相談の事例の場合は、まず「公然わいせつ」罪が成立するかを検討し(全裸は原則として公然わいせつ罪とされますが、理論的には軽犯罪法の身体露出の罪に留まる場合もありえます)、目撃者がいる場合には目撃者に対する慰謝の措置をとるとともに、今後二度としないように具体的な行動を決め、反省文を作成します。これらを検察官に提出することで起訴を避けられる可能性があります。仮に罰金刑となった場合にも、弁護人が直接裁判所で略式命令を受け取る形にすることで、自宅への送達を避けることができるでしょう。
刑法
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045
(公然わいせつ)
第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
【参考文献】
警察実務研究会編著『地域警察官のための軽微犯罪措置要領』(立花書房,2010年12月※第5刷)
57-58頁
【Q1,男は, 酒に酔って尿意を催し,人通りの多い時間帯であるのに歩道とは反対側の植え込みに向かっていわゆる立小便をしたが,公然わいせつ罪には該当しない。
本号は, 一般国民の健全な風俗感情を保護し,併せて一般風俗の向上を図ろうとするものである。
「公衆の目に触れるような場所」とは,多数の人に見られる可能性がある場所を意味し, 現に公衆が見ていたことは必要なく,通常の状態で自然にその行為を目にし得る場所であればよい。
「しり,ももその他身体の一部」に当たる例としては,乳房などがあるが,公衆の目に触れるような状態で男子が路傍で陰部を出して放尿した場合でも,公然わいせつの罪にいうところの人の性的羞恥心を害するとまではいえない場合は,本号の対象となる。(排せつ等の罪については後述する。)】
209-210頁
【わいせつな行為とは,その行為者又はその他の者の性欲を刺激興奮又は満足させる動作であって,普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反するものをいうとされている(東京高判昭27.12.18高刑集5巻12号2314頁)。例えば,性器の露出,全裸のストリップショー(最判昭25.11.21刑集4巻11号2355頁),密室内において観客の面前で行う性交又はその類似行為の実演(前記最決昭32. 5. 22) などが,これに当たる。】
https://ndlsearch.ndl.go.jp/en/books/R100000002-I000011069117
地域・刑事実務研究会編『地域警察官実務必携』(立花書房,2019年10月)907頁
【(4) 「しり,ももその他身体の一部」とは, しり,太もも及びこれに準じる程度に通常衣類で隠されている部分をいいます。
乳房,下腹部などが「その他身体の一部」に当たりますが,陰部そのものを露出した場合は,通常は公然わいせつ罪(刑法第174条)が成立します。】