滞納家賃について、連帯保証人に数年間分の請求が来たという相談(賃貸借)
2024年09月08日賃貸借事件(一般民事)
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、兄弟の借家の連帯保証人をしていたところ、5年間滞納していたということで滞納家賃の請求が突然保証人に来た。減額できないか。
A、保証人に対する請求は、信義則上制限されることがあります。具体的な事案によっては減額できることがあります。
【解説】
令和2年4月1日以前は、家賃の連帯保証人について「極度額」を定める必要はなかったため、このような相談がしばしばありました。現在においても、自動更新が続いている場合には、同様の問題が生じます。ただし、貸主が漫然と契約を更新して滞納家賃額を増加させたといった場合には、全額の請求は認められないことがあります。近時の減額例として、大阪高裁平成25年9月27 日判決(平25 (ネ) 716) があります(渡辺晋『実務家が陥りやすい借地借家の落とし穴』(新日本法規出版,2020年3月)140頁参照)。
【参考判例】
最高一小判平成9年11月13日最高裁判所裁判集民事186号105頁
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=63043%0D%0A
【建物の賃貸借は、一時使用のための賃貸借等の場合を除き、期間の定めの有無にかかわらず、本来相当の長期間にわたる存続が予定された継続的な契約関係であり、期間の定めのある建物の賃貸借においても、賃貸人は、自ら建物を使用する必要があるなどの正当事由を具備しなければ、更新を拒絶することができず、賃借人が望む限り、更新により賃貸借関係を継続するのが通常であって、賃借人のために保証人となろうとする者にとっても、右のような賃貸借関係の継続は当然予測できるところであり、また、保証における主たる債務が定期的かつ金額の確定した賃料債務を中心とするものであって、保証人の予期しないような保証責任が一挙に発生することはないのが一般であることなどからすれば、賃貸借の期間が満了した後における保証責任について格別の定めがされていない場合であっても、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、更新後の賃貸借から生ずる債務についても保証の責めを負う趣旨で保証契約をしたものと解するのが、当事者の通常の合理的意思に合致するというべきである。もとより、賃借人が継続的に賃料の支払を怠っているにもかかわらず、賃貸人が、保証人にその旨を連絡するようなこともなく、いたずらに契約を更新させているなどの場合に保証債務の履行を請求することが信義則に反するとして否定されることがあり得ることはいうまでもない。
以上によれば、期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のために保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当であり、保証人は、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義別に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れないものというべきである。】