load

薬院法律事務所

刑事弁護

特殊詐欺の受け子事件の標準的弁護要領※chatGPTo1pro作成(詐欺、刑事弁護)


2025年01月25日刑事弁護

回答内容が不十分でしたので、追加質問をしています。

chatGPTo1proは80点の回答を出してきますが、100点の回答にするためにはまだ弁護士の介入が必要だと考えています。

 

プロンプト

【あなたは福岡にいる一流の刑事弁護人です。次の事件についての標準的な弁護要領を説明してください。あなたの事務所に次のような電話がありました。「東京に住んでいる私の25歳の息子が、福岡県警に捕まったということで連絡がありました。警察からは詳細なことはいえないといわれたのですが、詐欺にかかわったといわれています。」。あなたが警察署に接見に行くと、その息子はこういう説明をしました。【SNSで流れてきた「荷物運び」の日給1万円というバイトに応募した。すると、SNSのメッセージ機能で、身分証明書の写真を求められたので送信して、銀行口座を教えて、具体的なことは現地でいうから、指定された時間にマンションの部屋に行って他の人と合流してと言われたのでいったところ、鍵が空いていてその部屋は空っぽで誰もいなかった。SNSのメッセージ機能で連絡すると、行き違いがあったといわれて、荷物が届くから本来くるはずだった他人名義で荷物を受け取ってくれと言われたので、受け取ろうとした。すると突然、「警察だ」と言われて、詐欺未遂罪の現行犯で逮捕する、と言われて、そのまま携帯電話も取られて飛行機で福岡まで運ばれてきた。警察では弁解録取書というのを言われたのでこのことを話したが、詐欺とわかっていただろうと責められている】】

以下に示す内容は、あくまでも「日本国内の刑事事件で、SNS上の『荷物運びバイト』に応募した結果、詐欺未遂の現行犯で逮捕された」という典型的な事案を想定し、福岡で活動する刑事弁護人がとる「標準的な弁護要領」をまとめたものです。実際の事件では、地域の捜査慣行や裁判所の運用方針、依頼者(被疑者)の具体的な証拠状況などによって内容は柔軟に変化します。本稿では、できる限り一般的かつ詳細な流れを解説します。


第1章 依頼の受任と初動対応

1-1. 家族からの連絡と受任経緯

  1. 家族(母親)からの電話相談
    • 「東京に住む25歳の息子が福岡県警に詐欺に関与したとして逮捕された。警察からは詳細は言えないとのことだが、どうすればよいか」という問い合わせが事務所に入る。
    • この段階で、事件概要や依頼者(被疑者)の身柄がどこにあるか(福岡県内の警察署か留置場か)を可能な範囲で確認。
  2. 受任と費用等の説明
    • 逮捕事案である以上、即座に現地の警察署へ行って接見する必要がある。
    • 弁護契約締結の趣旨や着手金・報酬金などの費用、弁護活動の見通しを大まかに家族に説明しておく。
    • そのうえで書面(委任状)の取り交わし等が間に合わない場合でも、早期接見を優先するために暫定的に動く場合もある。

1-2. 警察署での初回接見(いわゆる初動接見)

  1. 身柄の所在確認
    • 福岡県警のどの警察署に留置されているかを確認し、可能な限り早期に接見時間帯を押さえる。
    • 逮捕後48時間以内に検察庁送致、送致から24時間以内に勾留請求という流れが一般的であり、時間勝負となる。
  2. 接見の目的
    • 被疑者本人の話を直接聴き、正確な事実関係を把握する
    • 身体拘束の状況(逮捕容疑、被疑事実)の確認
    • 取調べの状況と捜査の進み具合の把握
    • 今後の弁護方針の大枠を検討するための情報収集
  3. 接見室でのヒアリング項目
    • SNSバイトの応募経緯: いつ、どのような募集を見て応募したのか。
    • やり取りの詳細: メッセージアプリやSNSでの指示内容、身分証明書や銀行口座情報を送った理由とタイミング。
    • 現地の状況: 指定されたマンションに行ってからの経緯、誰とも会わず荷物を受け取ろうとした際に警察に逮捕された点。
    • 警察の見解: 「詐欺とわかっていただろう」と責められているが、本人は本当に知らなかったのか、その点の認識。
    • 携帯電話の押収状況: スマホが取られている場合、中のやり取りが証拠として活用される可能性。
    • 前科・前歴の有無: 過去に似た事件に関与した履歴があるかどうか(捜査機関の評価に影響する)。
  4. 被疑者の心情ケアと黙秘権の説明
    • いきなり厳しい取調べを受け、不安やパニックに陥っている可能性が高い。
    • 弁護士として、黙秘権や供述調書の作成手続、捜査の流れ(勾留請求の可能性)などを平易に説明し、今後どう対応すべきか助言する。
    • 「供述するときは弁護士とよく相談のうえ、実際の状況を正確に伝えること」と念を押す。

第2章 事件の概要と成立し得る罪名

2-1. 「詐欺未遂」の典型構造

  1. 特殊詐欺の受け子・出し子・受取役の可能性
    • SNS経由の「荷物運びバイト」は、いわゆる「オレオレ詐欺」「架空請求詐欺」などの特殊詐欺グループが、被害金や品物を回収するために募集する手口。
    • 本件では、「他人名義の荷物を受け取る」行為が詐欺の執行行為(または幇助)とみなされる恐れがある。
    • 受け取る予定だった荷物にキャッシュカードや金銭が含まれている可能性もある。
  2. 今回の逮捕容疑: 「詐欺未遂罪」
    • 未遂に終わったのは、警察が張り込んでいて、荷物を受け取る前に逮捕されたから。
    • よって「現行犯逮捕された」という形になりやすい(捜査員が荷物配達員を装うことも多い)。
    • 被疑者は「詐欺と認識していなかった」と主張しているが、警察は「最初から詐欺の一環と知っていて、荷物の受取役として手伝っている」と疑っている。
  3. 構成要件と主な争点
    • 詐欺罪(刑法246条)の成立には、財物の交付を「欺罔行為」によって被害者から受け取る故意が必要。
    • 未遂であっても、故意(「騙し取る意図」)がなければ成立しない。
    • 「騙し取る意図など知らなかった。バイトと思っていただけだ」という被疑者の主張がどこまで通るかがポイント。

2-2. 他に問題となる可能性がある罪名

  • 窃盗罪・有印私文書偽造罪など
    • 何らかの書類に他人名義を使用したり、虚偽の名義で契約行為を行っている場合、補充的に問題となる可能性あり。
  • 組織的詐欺・犯罪収益移転防止法違反
    • 規模が大きい詐欺グループの場合、組織的犯罪処罰法が適用され得る。ただし、一般的な「受取役」レベルなら当てはまらないケースが多い。
  • 共謀共同正犯か、幇助犯か
    • 「詐欺グループと共謀し、共犯として行動していたのか」「結果的に詐欺を手助けした幇助なのか」。
    • 未遂罪の共犯がどのように評価されるかが量刑に影響。

第3章 被疑者の弁解内容:SNSでのアルバイトと思っていた

3-1. 被疑者の主張整理

  1. 「日給1万円の荷物運び」だと思った
    • 特殊詐欺の典型的な募集手口ではあるが、一般の人間が見れば怪しいと思いそうな案件にも「気づかなかった」と言う。
    • どの程度、不審に思わなかったかが重要。具体的なやり取りや指示の文言をヒアリングして把握する。
  2. 「身分証の写真や口座情報を送った」理由
    • 普通のバイトでも身分証提出はあるかもしれないが、SNSの見知らぬ相手に渡す行為は通常リスクが高い。
    • そこをどのように正当化または説明するか。
    • 「応募の際に身分確認が必要と言われたから」「相手は法人を装っていたので怪しまなかった」など具体的事情。
  3. 「現地に行ったら空室で誰もいなかった」
    • 連絡すると「行き違い」と言われたため仕方なく指示通りに待機して荷物を受け取ろうとした。
    • ここで疑問を抱かなかったのかが厳しく問われる。
    • 被疑者が「あれ?変だな」と思いつつも断れなかったのか、それとも本当に気づかなかったのか。
  4. 故意の問題
    • 本人は「詐欺とわかっていなかった」と主張。
    • 警察・検察は「それだけ怪しい内容なら普通は気づくはず。わざと目をつぶったのでは」と追及。

3-2. 弁護士の方針:故意の否定または軽減

  1. 完全否認不法性の認識が希薄だったとする情状主張
    • (a) 本当に詐欺の意思がなく、騙す行為に加担していないという無罪方針
    • (b) 「ちょっと怪しいと思っていたが本格的な詐欺だとは認識していなかった」→ 完全な故意がなかったと主張するが、法的には「未必の故意」とみなされる可能性がある。
    • (c) いずれにせよ、「詐欺を認識して主導的に加担した」ケースよりは悪質性が低いと情状を争う方針もあり得る。
  2. 真に受け子としての立場を自覚していない可能性
    • 若年層がSNSで違法行為の片棒を担がされる事案は多い。
    • 弁護士は被疑者の事情(社会経験の乏しさ、金銭的困窮など)やコミュニケーション履歴を確認し、「騙された被害者に近い」といえるか検討。

第4章 捜査段階の弁護活動

4-1. 身柄拘束の回避・早期釈放を目指す

  1. 勾留請求阻止
    • 逮捕後、警察・検察は勾留請求を検討する。
    • 弁護士は被疑者に逃亡や証拠隠滅の恐れがないことを主張し、在宅捜査に切り替えてもらうよう働きかける。
    • たとえば「東京に実家があり、家族の監督が期待できる」「余罪の証拠は携帯電話を押収されており隠滅できない」など。
  2. 準抗告の検討
    • 万が一、勾留が決定されたら「準抗告」(裁判所の勾留決定に対して不服を申し立てる)を行うかどうか判断する。
    • 通常、詐欺事案では勾留が認められやすいが、必ず検討はする。
  3. 家族への連絡・差し入れ等
    • 福岡の警察署に身柄がある場合、東京在住の家族は面会が困難。弁護士がコミュニケーションの橋渡しを行う。
    • 生活必需品の差し入れや被疑者の仕事関係の連絡など、必要に応じて対応する。

4-2. 取調べへのアドバイス

  1. 黙秘権と供述の使い分け
    • 被疑者が全面的に「知らない」「やっていない」と否認するなら黙秘権の行使も考えられる。ただし捜査機関・裁判所の心証を考慮し、必要最小限の説明はするケースが多い。
    • 「詐欺と知らなかった根拠」を具体的に語るためには被疑者本人の供述が重要。
    • 弁護士はあらかじめ供述内容を整理し、取調べで矛盾や誘導尋問に陥らないよう注意を促す。
  2. SNSメッセージの押収と解析
    • 携帯電話を押収されているため、SNSのやり取りの内容が証拠化される可能性が高い。
    • そこに「怪しそうな文言」「詐欺のニオイを感じられるやり取り」があると、故意の認定材料となる。
    • 弁護士は被疑者に対し、やり取り内容がどのようなものだったか正確に把握し、説明の整合性をチェックする。
  3. 捜査官の定番追及ポイント
    • 「日給1万円という条件が高すぎると疑わなかったのか」
    • 「他人名義の荷物を受け取る時点で違法性に気づいていただろう」
    • 「身分証や銀行口座を教えろと言われて普通じゃないと思わなかったか」
    • こうした質問に対して、被疑者が適切に答えられるよう事前に指導する。

第5章 被害者(未遂の場合)の存在と示談の可否

  1. 未遂であり被害金が発生していないケース
    • 詐欺未遂は、被害者が金銭を実際に失っていない場合が多い。警察の張り込みによって未然に防がれた。
    • そのため「示談相手」がいないか、あるいは詐欺グループからの指示により騙されるはずだった個人または法人がいても、実害が出ていない。
  2. 示談が難しい場合
    • 既遂であれば被害弁償や示談が処分軽減の大きな要素になるが、未遂で被害が生じていないと示談のしようがないことも多い。
    • ただし、捜査協力や真相解明への協力(たとえば上位者の情報提供など)が処分上有利に働く場合がある(もっとも、逆に詐欺グループへの報復リスクもあるので慎重に検討)。
  3. 犯罪被害者が存在する場合
    • もし詐欺未遂であっても、被害者が恐怖や手間を被ったとして損害賠償を求める場合があり得る(例:配達業者やマンション管理会社が迷惑を被ったなど)。
    • 現実には請求されることは少ないが、発生するなら誠意を示すことで情状改善につなげる。

第6章 起訴前・起訴後の流れと弁護活動

6-1. 不起訴・起訴猶予を目指す戦略

  1. 詐欺未遂であっても、立証が困難な場合は不起訴となる可能性
    • 「本当に詐欺と知らなかった」という点について合理的な説明がつき、捜査機関が立証困難と判断すれば、不起訴や起訴猶予となる場合がある。
    • 特に初犯で、グループ上位者の存在や被疑者の被害者性が強いと検察が判断すれば、処分保留のまま釈放される可能性も。
  2. 検察への情状弁明
    • 家族状況や職歴、これまでの生活態度などを示し、「善悪の判断が甘かっただけで、積極的に犯罪を行う意図はなかった」旨を主張。
    • 必要に応じて上申書を提出し、再発防止策(怪しいSNSバイトには応募しない、家族が監督する等)を明確にして反省の態度を示す。

6-2. 起訴された場合の想定

  1. 略式起訴か、公判請求か
    • 詐欺未遂は法定刑が重い(10年以下の懲役)。通常は略式命令(罰金刑)では済まない類型だが、事情によっては簡易な形になることも非常に稀にある。
    • 一般には正式裁判(公判請求)または執行猶予付き懲役が見込まれるが、初犯で未遂・被害なしの場合、起訴猶予や不起訴の可能性も十分ある。
  2. 保釈申請(在宅起訴の場合は不要)
    • 起訴後に勾留が続く場合、弁護士は保釈請求を行い、身柄解放を目指す。
    • 初犯・家族の身元引受が確実であれば、保釈が認められる可能性はある。
  3. 公判での立証と弁論
    • 争点: 被告人に詐欺の故意があったか否か。知らなかったとしても、客観的に「あまりにも不自然な状況」に積極的に身を置いたなら未必の故意が認められうる。
    • 弁護人の主張: 被告人自身がSNSの相手に騙されて利用されただけであり、騙し取るつもりはなかった。事情を十分に調べずに荷物を受け取ろうとした愚かさは認めるが、犯罪への認識は欠けていた。
  4. 量刑面のアピール
    • たとえ故意の認定を免れなくても、役割が小さい、金銭的利益が少ない(あるいは得ていない)、初犯・深い反省などを強調し、執行猶予判決など軽い処分を求める。

第7章 行政処分や社会的影響へのケア

7-1. 身分証の悪用リスク

  • 被疑者がSNSを通じて身分証明書の写真を送っている以上、今後その個人情報が詐欺グループに悪用される可能性がある。
  • 弁護士は家族に対し、クレジットカードや銀行口座の不正利用に注意するよう助言し、必要に応じて口座凍結や警察への相談など検討する。

7-2. 職場や家族への影響

  • 25歳であれば学生か社会人かは不明だが、逮捕・勾留によって長期欠勤・退学リスクが出る。
  • 弁護士として、早期の身柄解放を図りつつ、家族や職場・学校への連絡調整を行い、事情を説明。
  • 本人が「詐欺グループに利用された形」と理解してもらうよう努力するが、実際にはイメージが悪い事案であるため、丁寧に対応が必要。

7-3. 再犯防止

  • 社会に戻っても、またSNSバイト等に騙される恐れがある。
  • 弁護士は被疑者と面談し、違法バイトの危険性、SNS求人の注意点などを具体的に指導。
  • 家族にも監督やサポートを依頼し、再発を防ぐ取り組みを示すことで処分軽減の要素にもなる。

第8章 最終的な弁護方針のまとめ

ここまでを踏まえて、本事案における**「標準的な弁護要領」**を整理すると、以下のステップになる。

  1. 初回接見・ヒアリングで事実関係を詳細に把握
    • SNSバイトの応募経緯、やり取り内容、逮捕状況、警察の主張とのギャップを確認。
  2. 勾留阻止または早期釈放に全力を尽くす
    • 在宅捜査可能性を探り、準抗告や意見書の提出などで身柄拘束の必要性の低さを主張。
    • 家族の監督や仕事・学業の継続性を訴えて逃亡・罪証隠滅の可能性が低いことを示す。
  3. 捜査段階での取調べ対応を指導
    • 「詐欺と本当に知らなかった」旨を具体的事実で裏付け、矛盾をなくすようアドバイス。
    • 頭ごなしに否認するより、「こういう理由で疑わなかった」という説得的供述を目指す。
  4. 不起訴・起訴猶予を狙う
    • 初犯、被害なし、深い反省、家族の監督など情状を検察官にアピール。
    • 任意の携帯解析やSNSアカウント情報を開示し、捜査協力姿勢を見せる場合も考慮(ただし上位者からの報復リスクにも配慮)。
  5. 起訴後は執行猶予など軽い処分を求める
    • 万一、起訴されても「共犯中でも最下位の立場」「日給1万円に惹かれただけで主導ではない」「深く謝罪・反省している」等を強調。
    • 被告人質問で「決して騙す意図はなかった」「SNSの相手に騙された」と述べ、量刑を軽くする情状酌量を求める。
  6. 家族との連携、再発防止策の実行
    • 事件後に同種犯罪に関わるリスクをなくすため、SNS利用方法の見直し、家族との同居管理などを具体化。
    • こうした再発防止策を裁判所にも伝え、処分軽減に寄与。

第9章 想定される最終結論・処分の例

実務上、詐欺未遂で「受取役」として逮捕された初犯の若者には、以下のようなパターンが考えられる。

  1. 不起訴(起訴猶予)
    • まだ捜査段階で、グループ全体の動向が掴めず、被疑者の役割が軽微だと判断される場合。
    • 反省を示し、捜査協力姿勢があることなどを理由に検察官が起訴猶予とする可能性。
  2. 略式命令(罰金刑)
    • 詐欺未遂は法定刑が懲役刑中心であるため、略式罰金だけで済む例はそう多くないが、被害が未然に防げていて、なおかつ本人の役割がごく軽微と認められればゼロではない。
  3. 正式起訴→執行猶予付き懲役刑
    • 「うっかり」「軽率」と言っても、詐欺未遂は法定刑が重い。初犯でも懲役刑が言い渡され、そのうえで執行猶予が付与されるのが比較的一般的。
    • 刑期は10か月〜2年程度の範囲で設定され、執行猶予が3〜5年付くケースもよくある。
  4. 実刑
    • 過去に同種前科がある、または余罪多数・常習性が高い場合には実刑のリスク。
    • 本事案は25歳で初犯との前提なので、よほど悪質な事情がない限り実刑は回避できる可能性が高い。

第10章 まとめと留意点

  1. SNSバイトによる詐欺未遂は若年層に多い典型トラブル
    • 「簡単にお金が稼げる」と安易に信用してしまい、結果的に詐欺グループの末端役となって逮捕される。
    • 弁護人は「本当に知らなかったのか」「怪しさに気づいていたのではないか」という故意の有無が最大の争点と理解し、適切に弁解を組み立てる必要がある。
  2. 初動対応の重要性
    • 被疑者がSNS上のやり取りや状況をどれだけ詳しく覚えているかで、捜査機関の立証を崩せるかどうかが決まってくる。
    • 逮捕直後に面会し、早期に事実関係を整理することが必須。
  3. 家族の協力
    • 遠方(東京)から福岡までの移送がなされており、家族との連絡が困難な状況。
    • 弁護士が積極的に連絡・調整を行い、家族が保証人や監督者になる意志を示して勾留阻止や早期釈放につなげる。
  4. 処分の見通し
    • 初犯・未遂・被害なしであれば、不起訴や執行猶予が得られる余地は十分ある。
    • ただし、SNSのやり取りが明確に「詐欺」とわかる文言を含んでいる場合など、故意を強く推認されると、検察・裁判所の判断は厳しくなる可能性がある。
  5. 今後の対策
    • 同様の事件に巻き込まれないようにするためのネットリテラシー啓発や、怪しい募集広告を報告する体制づくりも重要。
    • 依頼者本人が「二度とこんなバイトをしない」「家族が常に求人内容をチェックする」など具体的策を立てることで、情状改善を図る。

付記:弁護士からご家族への一言

  • 「ご子息がSNSバイトと信じて詐欺未遂の『受け子』扱いで逮捕されるのは、残念ながらよくあることです。まずは冷静に事実を整理し、捜査機関に対して『本当に詐欺とは知らなかった』ことを説得的に説明していく必要があります。
  • 実際にどのようなメッセージのやり取りをしたかがカギとなりますので、警察が押収しているスマホの解析結果が出るまでに矛盾のない説明を固めましょう。
  • 私が接見で詳しく話を聞き、必要に応じて捜査機関に働きかけ、本人の権利と利益を最大限守るよう活動します。何か不安なことがあればすぐにご連絡ください。」

以上が、福岡の一流刑事弁護人が「SNSで流れてきた荷物運びバイト」に応募し、詐欺未遂で逮捕された若年男性(東京在住)の弁護を引き受けた際にとる標準的な弁護要領です。

実際の案件では、さらに詳細な事実調査(SNSの文言・時系列・金銭授受の有無など)や家族背景の聞き取りを行い、弁護方針を固めていきます。場合によっては、不起訴や起訴猶予を勝ち取れる可能性があり、少なくとも執行猶予判決にとどめられるよう全力を尽くすことが刑事弁護人の役割となります。

 

プロンプト

【この事案であれば、完全黙秘という戦略になるのではないでしょうか。あと、詐欺罪には罰金刑はないので略式請求はないです。】

 

以下のポイントを踏まえて、改めて「完全黙秘の戦略」「詐欺罪における罰金刑・略式命令の有無」について解説いたします。


第1章 「完全黙秘がよいのでは」という指摘への検討

1-1. 完全黙秘権の原則とメリット・デメリット

(1)黙秘権の基本原則

  • 日本国憲法38条および刑事訴訟法上、被疑者・被告人には黙秘権が保障されています。
  • 自己に不利益な供述を強要されないという点では、黙秘権は極めて重要な権利です。

(2)完全黙秘を貫くメリット

  • 取り調べで検察・警察が「不利な供述」を取ろうとしても、口を割らずに済む。
  • 虚偽の自白や捜査機関による誘導尋問のリスクを回避できる。
  • 供述調書の作成を拒否することで、後の公判や処分において不利な証拠を生まない。

(3)完全黙秘を貫くデメリット

  1. 「故意がなかった」「本当に騙された立場だ」という主張との矛盾
    • 詐欺罪(未遂含む)では「だます(受け取る)意図・故意」があったかどうかが大きな争点です。
    • 被疑者が「SNSのバイトだと思っていて、詐欺だとは知らなかった」と主張するなら、本来、積極的に「知らなかった理由」や「疑わなかった事情」を話さないと説得力が出にくい。
    • 黙秘してしまうと、「なぜ怪しいと気づかなかったのか」「そもそも本当にグループに利用されただけなのか」が不明なままになり、結果的に捜査機関や裁判所が「やはり知っていたのでは?」と推定しやすくなる。
  2. 反省の態度や情状を示す機会を失う
    • 仮にまったく故意がなかったとしても、少なくとも「うかつにSNSバイトを信じた」「身分証や口座を安易に提供してしまった」等の反省点はあるはずです。
    • 完全黙秘だと「一切話をしない→事実関係の説明も不十分→反省していないのか?」という悪い印象を与えるリスクがあります。
    • 特に詐欺未遂は法定刑が懲役刑で重い(後述)ため、量刑や不起訴の判断で「どういう立場か」を明確に示しておくことが非常に重要です。
  3. 身柄拘束(勾留)の継続を強化しかねない
    • 日本の刑事実務では「黙秘を理由に不利な処分をすることは許されない」は建前ですが、現場で「話さない→真相解明できず捜査を続行→勾留継続」とされるパターンが少なくありません。
    • また「逃亡・罪証隠滅のおそれがある」とみなされやすくなる恐れもあります。

1-2. 「本当に詐欺とは知らなかった」旨を主張する場合の現実的対応

  • 一切黙秘→裁判所からも検察からも「じゃあどういう状況だったのか全く分からない」と判断されやすい。
  • 結果的に『やはり詐欺の故意があったんだろう』と推定される危険が高い、というのが実務上の実感です。
  • したがって「知らなかった」「詐欺なんて思ってもみなかった」と主張するのであれば、むしろ必要最小限の供述はすべきという見解が一般的な弁護方針になります。
    • たとえば「こういうSNSメッセージが来たから普通の運送バイトだと思ってしまった」「時給や日給が高いと思わなかった理由は○○だからだ」などの説明は、黙秘していては伝わりません。
    • 完全黙秘よりも、**「部分的に黙秘しつつ、真に無関係な余計な追及(余罪を疑われる部分など)は語らない」「しかし詐欺の故意がなかった点は積極的に話す」**という戦略のほうが無理がないケースが多いです。

第2章 「詐欺罪には罰金刑がなく、略式請求もない」という点について

2-1. 刑法246条 詐欺罪の法定刑

  • 刑法246条(詐欺罪)の法定刑は「10年以下の懲役」と定められており、「罰金刑」の規定はありません。
  • つまり、詐欺罪は「懲役刑しかない」犯罪類型の一つです(窃盗や恐喝なども同様のケースが多い)。

2-2. 略式手続との関係

  • **略式手続(略式命令)は「刑が罰金刑または科料しか科されない事件」**に適用できる制度です(刑事訴訟法461条以下)。
  • 刑法上、詐欺罪は罰金刑が規定されていないため、原則として略式手続の対象外です。
  • ですから「詐欺(未遂含む)で起訴→罰金刑の略式命令」というパターンは制度上あり得ません。

2-3. 実際の運用

  • したがって、詐欺罪(未遂を含む)で検挙され、起訴される場合、基本的には**「正式裁判→懲役刑(執行猶予つきも含む)」**という流れになります。
  • あるいは**「不起訴処分(起訴猶予など)」「微罪処分・送致猶予」(実務上は特殊事例)**などで終了する可能性はあるものの、略式罰金で終わる可能性はありません。
  • つまり、ご指摘のとおり、「詐欺罪には罰金がない以上、略式請求は起こり得ない」というのは正確です。

2-4. ただし「準詐欺」や他の罪への切り替えは?

  • 法的には「詐欺罪」以外の罪(たとえば「詐欺幇助」「準詐欺」など)に問われる場合、あるいは刑罰法規の適用が変わる可能性がありますが、いずれも罰金刑が予定されているわけではありません(※「準詐欺」(刑法248条)も懲役刑のみ)。
  • したがって、詐欺類型・準詐欺類型で略式罰金になるのは通常ありません。

第3章 最終的なまとめ

  1. 完全黙秘戦略が望ましいかどうか
    • 「自分はSNSの怪しい指示とは気づかず、詐欺に加担するつもりがなかった」という弁解をする場合、黙秘してしまうと本来アピールすべき無罪・無故意の主張が伝わりません。
    • その結果、「何も話さないから故意を否定する証拠もない→捜査側は『知っていた』と強く推定→裁判所もそれを追認しやすい」という展開が想定されます。
    • 特に初犯・未遂・役割が軽微であれば、弁護士と方針をよく協議し、必要最小限(ないしはしっかり)事実を説明して捜査機関の誤解を解く方が、処分軽減や不起訴につながりやすいのが現実です。
    • もちろん、捜査官からの誘導尋問や「本当は詐欺と知っていたんだろう」と強要されるような質問に対しては、無理に迎合せず黙秘する(部分黙秘)ことも重要です。
  2. 詐欺罪(未遂含む)に罰金刑はなく、略式手続は不可能
    • ご指摘のとおり、詐欺罪には法定刑として罰金刑が規定されていません。
    • したがって検察官が起訴する場合は正式裁判の手続(公判請求)になり、懲役刑(執行猶予つき含む)の可能性があります。
    • 一方で、捜査段階で「本当に故意がなかった」と判断されれば**不起訴処分(あるいは起訴猶予)**となるシナリオもあり得るため、そちらを狙う弁護活動が現実的です。

付言:弁護士としての実務的アドバイス

  • 「完全黙秘」か「一部黙秘・必要な事項を供述」か
    • 弁護士の多くは、今回のような「詐欺と知らないまま『受け子』をやらされた」というケースでは、まったく供述しない完全黙秘よりも、「怪しいとは思わなかった根拠」を具体的に語る方針を選ぶことが多いです。
    • なぜなら、詐欺罪は故意犯罪であり、「何も説明しない=故意否定の立証が難しくなる→起訴や有罪リスクが上がる」からです。
  • 「略式がないから罰金で済む余地はない」
    • これはそのとおりです。詐欺罪(246条)や詐欺未遂(250条)に罰金刑はなく、略式命令(罰金)処分もあり得ません。
    • 従って、もし起訴されれば執行猶予付き懲役刑になるか、あるいは無罪を争うか(または捜査段階で不起訴を勝ち取るか)の三択に近い状況です。
    • その意味でも「捜査段階で、いかに故意を否定して不起訴を得るか」が極めて重要となります。

結論

  • 詐欺罪(未遂)においては、法定刑に罰金が定められていない以上、略式請求・罰金刑の可能性は原則ありません。
  • 「完全黙秘こそ戦略になるのでは」という見方は、確かに黙秘権は大切ですが、本件のように「本当は詐欺とは知らなかった」と故意を否定したい場合には、むしろ「知らなかった理由」をしっかり供述するメリットが大きくなるのが通例です。
  • 実務上は「一部黙秘」や「弁護士と打ち合わせたうえで必要な供述のみ行う」という形で、供述のコントロールをするのが標準的といえます。完全黙秘を貫くと、かえって「詐欺の故意があった」と推定されやすく、処分・判決の面で不利に働くリスクが高いです。

以上の理由から、「完全黙秘が絶対に有利」とは限らないことに留意する必要があります。もちろん、最終的には個別の証拠状況(SNSの履歴や他共犯者の供述がどうなっているか)を踏まえた判断になるため、弁護士と十分に協議しながら戦略を練ることが肝要です。

 

プロンプト

【うーん、スマートフォンを押さえられて、逮捕・勾留されて証拠を確認できない状況で、証拠と矛盾しない弁解ができるかというと無理なのですよねえ。記憶は変容するものですので。もし、捜査機関の証拠を完全に弁護人もアクセスできるというのであればご提案頂いた戦略は適当でしょうが。そうなると完全黙秘をした上で、被疑者の言い分は弁護人が検察官に対して伝えた上で吟味させるという手法が適当だと考えます。そうしないと、「客観的証拠と矛盾する供述調書」が作成されて、かえって弁解の信用性が失われてしまい、起訴される可能性も、有罪になる可能性も高くなると考えます。】

以下では、「押収されたスマートフォンの中身など捜査機関の証拠を確認できない状況下で、下手に被疑者本人が供述をすると、後に客観的証拠と矛盾が生じてかえって不利になるのではないか」というご懸念を踏まえて、「完全黙秘を選択しつつ、弁護人が検察官に対して被疑者の主張を非公式に伝え、証拠の整合性を探る」という方策について詳しく検討します。


第1章 「証拠を知らないまま供述するリスク」の具体的整理

1-1. 押収スマートフォンに潜む危険

  • 特殊詐欺事案やSNSを介した犯罪では、スマートフォン内のチャット履歴・連絡先・位置情報などが、捜査機関の立証において極めて重要な証拠となります。
  • 被疑者が「詐欺だと知らなかった」「自分は荷物運びバイトと思っていた」と弁解する場合でも、スマートフォン内のやり取りがその弁解と矛盾する文言を含んでいる可能性があります(「やっぱマズイっすねw」など、ほんの一言でも故意を推認されかねない表現)。
  • 反対に、本当に被疑者が「合法バイト」だと信じていたことを裏付ける文言が残っているかもしれませんが、弁護側は初期段階ではそれを把握できない。

1-2. 記憶の変容リスク

  • 取り調べの緊張感や拘束中のストレスで、被疑者の記憶は曖昧・断片的になりやすく、実際の時系列や細かいやり取りの内容が混乱することが多い。
  • 「当時こう思っていた」「こう言われてやった」と供述しても、のちにスマホの記録と細部が矛盾する可能性がある。
  • 一度「公式」な形で供述調書にサインしてしまうと、後に訂正が難しく、むしろ捜査機関から「言い分がコロコロ変わる」「信用できない被疑者」と見られかねない。

1-3. 供述の矛盾が招く悪影響

  • いったん供述書に矛盾点が残れば、検察官や裁判所は「被疑者は虚偽供述をしている」と判断しやすくなり、故意があったと推定されたり、量刑で不利になる場合がある。
  • 特に詐欺事件では「知っていてやったのでは?」という推定が働きやすいため、弁明に矛盾が生じると非常に危険。

第2章 「完全黙秘+弁護人が検察官と協議する」方策の解説

こうしたリスクを踏まえ、**被疑者が取調べで一切供述を行わない(完全黙秘)**一方、弁護人が非公式・口頭ベースで検察官に対して被疑者の大まかな主張を伝え、それと捜査側の証拠との齟齬を検討してもらうという手法があります。ここでは、その具体的流れとメリット・デメリットを整理します。

2-1. 戦略の流れ

  1. 被疑者は取調べで「黙秘権を行使します」と回答
    • 警察・検察からの質問に対し、余計なことは一切話さない。
    • 供述調書を作成してもサインせず、「すべて弁護士と相談してからにします」と述べる。
  2. 弁護人が捜査機関に「検討事項」を示す
    • 弁護人は接見で被疑者から「実はこういう事情(SNSで依頼された、違法だと知らなかった等)」をヒアリング。
    • それを踏まえ、検察官(または警察)に「ウチの被疑者はこう言っている可能性がありますが、そちらの証拠と矛盾する点はありますか?」と非公式に探りを入れる。
    • 完全に対立的な形ではなく、あくまで捜査官の立場と整合するかどうか、「ファクトチェック」的にやり取りする。
  3. 証拠との矛盾点が分かれば弁護側で方針修正
    • もし検察官が「いや、スマホの中にこんなメッセージがあるよ。『詐欺バイトでもいいから金がほしい』みたいな文言が出てきた」などと言ってきたら、弁護側としては「それなら今の弁解は難しい」と判断し、最悪の場合は否認方針から方針転換するか、情状に回るかを考える。
    • 逆に検察官が「まだ具体的に怪しい記録は見つかっていない」などと表明するなら、「実は本当に本人は知らないだけかもしれない」と不起訴の可能性を模索できる。
  4. 必要があれば供述調書を最終的に作成
    • 上記の“すり合わせ”を踏まえて、スマホ記録など客観証拠と矛盾しない形で「知らなかった」という主張を供述として残す。
    • 取調べ終盤で、「この範囲なら整合性がとれる」と確信を持てる段階になって、被疑者が初めて供述調書にサインする、という手法もあり得る。

2-2. この手法のメリット

  1. 供述の矛盾リスクを大きく下げる
    • 被疑者が不確かな記憶で供述する前に、弁護人が捜査機関と証拠の方針を探ることで、致命的な矛盾を避けやすい。
    • 言わば「黙秘で保留しつつ、弁護士が証拠を確認したうえで安全な範囲で供述する」というプロセス。
  2. 捜査側にも「被疑者が全部嘘をついているわけではない」と思わせる余地
    • 完全に黙り込んでいるだけでなく、弁護士がある程度「こんな事情があるらしい」と伝えるため、検察官も捜査方針を柔軟に考慮する可能性がある。
    • 一方的に「逃げている被疑者」という印象を与えずに済む。
  3. 事実と異なる「架空の弁解」を作ってしまうリスクを回避
    • 被疑者が思い込みや記憶違いで供述をすると、その後にスマホの客観データを見て「実は矛盾していた」→信用失墜、という流れが阻止できる。

2-3. デメリット・留意点

  1. 捜査機関が非公式の情報共有をどこまで応じるかはケースバイケース
    • 必ずしも検察・警察が「スマホの中身はこうでした」と丁寧に教えてくれるとは限らない。むしろ捜査上の都合で教えず、最後まで被疑者の動向を見る場合もある。
    • 弁護士が交渉しても、手ごたえが得られないこともある。
  2. 黙秘を続けると勾留が長期化するリスク
    • 「何も話さないから捜査が進まない。よって拘束を継続する」という形で、検察や裁判官が勾留延長を認める可能性もある。
    • 家族の仕事・学業の事情等を鑑み、早期釈放を優先するのであれば、部分的な供述で誠意を示したほうが有利に働く場合もある。
  3. 最終的に弁護側で証拠分析が完全にできないまま供述を決めなければならない場合も
    • 一定の時点で「やはり不起訴は無理そうだ」「裁判で争うしかない」となったら、公判前整理手続など後の手続で改めて証拠を確認し、本格的に争うこともある。
    • 捜査段階ではどうしても「被疑事実を否認するか認めるか」という判断が迫られ、情報の非対称性が続く。

第3章 この手法が許容される実務的状況

3-1. 日本の捜査実務での現実

  • 実際には、**「黙秘しながら弁護士が検察官とコミュニケーション」**というやり方は多くの弁護士が行っている部分的テクニックです。
  • ただ、公判前整理手続などで証拠一覧が開示されるのは起訴後になることが多いため、起訴前に捜査機関がどこまで情報を出してくれるかは、捜査官の姿勢・事件の重大性・被疑者の態度等に依存します。
  • 事件全体の全容を捜査機関がつかんでいない段階であれば、ある程度情報を開示してくれる場合もありますが、本丸の決定的証拠については伏せられることもしばしば。

3-2. 逮捕・勾留段階でのタイミング

  • 捜査初期(逮捕直後): 捜査側もまだスマホ解析が進んでいない場合があり、データ復元・解析が完了するまで時間がかかる。
  • 勾留満期までの間: 10日または最大20日以内に検察官は起訴・不起訴を判断しなければならない。
  • ここで被疑者が黙秘し続ければ、検察官も「グループ全体の立証」を進めるために勾留延長や捜査継続を図る。
  • 弁護士は「不起訴を狙うなら早めに事情を説明したほうが有利か、否か」を見極める。警察や検察が押収データからすぐには証拠を出せない/あるいはその証拠が不十分な可能性が高いなら、黙秘が得策と言える。

3-3. 公判まで進む場合との関係

  • もし起訴されたら、公判前整理手続きなどを通じて検察が持つ主要な証拠(スマホ解析書、チャットログなど)が開示されます。
  • そこで初めて、弁護側が全容を把握し、「被告人質問でどう主張するか」を確定できる。
  • つまり、捜査段階ではあえて黙秘し、公判段階で開示された証拠を精査してから正式に弁論方針を固めるというのも、悪くない戦略の一つです。
  • ただし、捜査段階で(起訴前)に不起訴を勝ち取りたい場合は、その前に“決定打”となるような納得のいく説明を提供できたほうが検察を説得しやすい、というジレンマがあるわけです。

第4章 まとめ:完全黙秘+弁護人による間接的主張は現実的か

以上を踏まえると、

  1. スマートフォン等の押収証拠を完全に確認できないまま被疑者が供述してしまうと、後に齟齬が判明して不利になるリスクは確かに大きい。
    • 特に詐欺・SNS関連事件では、何気ないフレーズや表情スタンプ一つですら故意を推定される根拠になることがある。
  2. 一方で、まったく口を閉ざしてしまうと、検察・裁判所が「やはり隠していることがあるのでは」と判断し、結果的に起訴や有罪認定に傾きやすいというリスクもある。
  3. そこで、捜査段階では「黙秘をして公式な供述調書を残さない」一方、弁護人が検察官と非公式に接触し、ある程度被疑者のストーリーを伝えて“証拠との矛盾”を探るというやり方は、実務で一定の合理性をもつ。
    • 実際にできるかどうかは捜査官の対応次第だが、特に初犯の若年被疑者などでは、検察官も「本当に騙されただけなら不起訴も検討する」と考える場合があり、ある程度情報交換が行われるケースもある。
  4. **そのうえで、もし捜査機関から「致命的な証拠がある」という反応が返ってくれば、弁護側は否認や無罪主張を断念して情状に回るか、あるいは証拠の真偽を更に争うかを判断できる。
    • 逆に「特に決定的証拠は示されなかった」なら、最終的に「知らなかった」主張を捜査終盤に調書で残しておく(または公判段階で初めて詳述する)という選択肢も残る。

結論

  • **「押収証拠を見られない段階で矛盾のない弁解は難しい→完全黙秘が合理的だ」**という考え方は、確かに一理あります。
  • 同時に、現代日本の刑事実務では、完全黙秘が「必ず有利」かというと必ずしもそうではなく、公判段階まで行くと心証を悪くする可能性や身柄拘束が長引く可能性も視野に入れなければなりません。
  • したがって、多くの経験豊富な弁護士は**「一切供述しない」のではなく、段階的・部分的に黙秘しながら、弁護人が捜査当局の反応を探り、捜査後半で方針を最終決定する**というアプローチをとることが多いです。
  • その中で、**「被疑者は黙秘を続けるが、弁護人が検察官等に被疑者の言い分を伝え、証拠との整合性を捜査機関に検討させる」**という手法は、実務上あり得る合理的な方法の一つです。

補足:黙秘戦略を選ぶ際の大局的判断

  • 身柄拘束の期間・家族の都合: 勾留延長されても問題ないほど時間の余裕があるか。
  • 被疑者の記憶や認知能力: 仮にあいまいな供述をすると大きくブレそうなら黙秘が安全かも。
  • 検察官とのやり取りの経験則: 地域によっては検察が非公式協議に積極的で、ある程度開示してくれる場合もあれば、そうでない場合もある。
  • 不起訴を狙うのか、公判を視野に入れるのか: 不起訴を目指すなら捜査段階で「怪しくないんだ」と分からせないといけない半面、下手に供述で矛盾を作ると逆効果になる。

最終的には、被疑者本人と弁護人がよく話し合い、捜査の動向を見極めながら「どのタイミングで、どれだけ話すか」をコントロールするのが現実的です。
「完全黙秘」か「必要最小限の供述」かはどちらが必ずベターとは言えず、**事案固有の事情(証拠状況・被疑者の性格や記憶力・家族の要望など)**を踏まえた判断が重要になります。