生姜を倉庫に預けたら、冷蔵されて腐らされたという相談(企業法務)
2024年12月14日企業法務
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は福岡市で健康食品会社を経営する者です。今回、新商品として高知県産の生姜を使った健康飲料を販売することにしました。生姜を使った飲料は一定の需要があるのですが、新商品は特に生姜特有の臭みを抑えたところがポイントです。モニター調査でも大好評でしたし、美味しくて身体も暖まるということで、地元のスーパーで試飲会をするなど冬場に大々的に発売しようと広告の準備を整えていました。ところが、製造を委託していた工場から連絡があり、原材料の生姜を保管していた倉庫で、生姜が腐ってしまったというのです。話を訊くと、工場では「定温(10度~15度程度)で保管」するように指示していたのが、倉庫側では「低温(10度以下の冷蔵庫)で保管」と誤解したようです。損害賠償請求をしたいのですが、どうすれば良いのでしょうか。
A、これは、複数の論点を含む問題であり、一概に判断できるものではないです。①工場と倉庫の合意の内容の確定、裏付ける証拠の調査、②業界の慣習・常識(生姜を低温保存してはいけないという知識が常識か否か)の調査、③損害額の算定、④損害賠償請求をすべき相手方の選択(工場も含むか否か)、といったことを最低限検討しなければなりません。丁寧なリサーチを行う弁護士を選ぶべきでしょう。
【解説】
自分にとっての「常識」が他人にとっての「常識」でないということは良くある話です。生姜を低温保存してはいけないということは生姜農家にとっては常識ですが、倉庫業の人が必ず知っているかというと、そういうことはありません。このようなコミュニケーションのギャップによるトラブルは時々起こります。こういった場合は、どちらに「過失」、落ち度があったのか激しく争われることになります。「業界の実情」などについてきちんと立証できるかがポイントになることも多く、そのためには労を惜しまず現場から丁寧なヒアリングをすることが必要です。ただ、弁護士にも色々とあり、現場に足を運ばないといった人もいます。「現場に行く弁護士か否か」は弁護士選択の一つの重要な基準になると思いますので、弁護士選びの参考になれば幸いです。弁護士の心当たりがない人は「ひまわりほっとダイヤル」を活用するといいでしょう。
民法
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_3-Ch_2-Se_11
第十一節 寄託
(寄託)
第六百五十七条 寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
(寄託物受取り前の寄託者による寄託の解除等)
第六百五十七条の二 寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、受寄者は、その契約の解除によって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。
2 無報酬の受寄者は、寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による寄託については、この限りでない。
3 受寄者(無報酬で寄託を受けた場合にあっては、書面による寄託の受寄者に限る。)は、寄託物を受け取るべき時期を経過したにもかかわらず、寄託者が寄託物を引き渡さない場合において、相当の期間を定めてその引渡しの催告をし、その期間内に引渡しがないときは、契約の解除をすることができる。
(寄託物の使用及び第三者による保管)
第六百五十八条 受寄者は、寄託者の承諾を得なければ、寄託物を使用することができない。
2 受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができない。
3 再受寄者は、寄託者に対して、その権限の範囲内において、受寄者と同一の権利を有し、義務を負う。
(無報酬の受寄者の注意義務)
第六百五十九条 無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。
(受寄者の通知義務等)
第六百六十条 寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し、又は差押え、仮差押え若しくは仮処分をしたときは、受寄者は、遅滞なくその事実を寄託者に通知しなければならない。ただし、寄託者が既にこれを知っているときは、この限りでない。
2 第三者が寄託物について権利を主張する場合であっても、受寄者は、寄託者の指図がない限り、寄託者に対しその寄託物を返還しなければならない。ただし、受寄者が前項の通知をした場合又は同項ただし書の規定によりその通知を要しない場合において、その寄託物をその第三者に引き渡すべき旨を命ずる確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。)があったときであって、その第三者にその寄託物を引き渡したときは、この限りでない。
3 受寄者は、前項の規定により寄託者に対して寄託物を返還しなければならない場合には、寄託者にその寄託物を引き渡したことによって第三者に損害が生じたときであっても、その賠償の責任を負わない。
(寄託者による損害賠償)
第六百六十一条 寄託者は、寄託物の性質又は瑕疵によって生じた損害を受寄者に賠償しなければならない。ただし、寄託者が過失なくその性質若しくは瑕疵を知らなかったとき、又は受寄者がこれを知っていたときは、この限りでない。
(寄託者による返還請求等)
第六百六十二条 当事者が寄託物の返還の時期を定めたときであっても、寄託者は、いつでもその返還を請求することができる。
2 前項に規定する場合において、受寄者は、寄託者がその時期の前に返還を請求したことによって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。
(寄託物の返還の時期)
第六百六十三条 当事者が寄託物の返還の時期を定めなかったときは、受寄者は、いつでもその返還をすることができる。
2 返還の時期の定めがあるときは、受寄者は、やむを得ない事由がなければ、その期限前に返還をすることができない。
(寄託物の返還の場所)
第六百六十四条 寄託物の返還は、その保管をすべき場所でしなければならない。ただし、受寄者が正当な事由によってその物を保管する場所を変更したときは、その現在の場所で返還をすることができる。
(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)
第六百六十四条の二 寄託物の一部滅失又は損傷によって生じた損害の賠償及び受寄者が支出した費用の償還は、寄託者が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
2 前項の損害賠償の請求権については、寄託者が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
(委任の規定の準用)
第六百六十五条 第六百四十六条から第六百四十八条まで、第六百四十九条並びに第六百五十条第一項及び第二項の規定は、寄託について準用する。
(混合寄託)
第六百六十五条の二 複数の者が寄託した物の種類及び品質が同一である場合には、受寄者は、各寄託者の承諾を得たときに限り、これらを混合して保管することができる。
2 前項の規定に基づき受寄者が複数の寄託者からの寄託物を混合して保管したときは、寄託者は、その寄託した物と同じ数量の物の返還を請求することができる。
3 前項に規定する場合において、寄託物の一部が滅失したときは、寄託者は、混合して保管されている総寄託物に対するその寄託した物の割合に応じた数量の物の返還を請求することができる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
【参考サイト】
ひまわりほっとダイヤル