相続開始後、銀行預金解約後に多額の借金の存在を知らされたという相談(相続)
2025年02月04日一般民事
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は40代の主婦です。子供も2人います。先日、単身赴任中の夫が突然亡くなったということで会社から連絡があり、葬儀を済ませました。一人暮らしをしていた自宅を引き払い、100万円程度でしたが、預金などの相続手続きを銀行でしました。会社からは退職金や給料の振込がなかったのですが、ご迷惑をおかけしたと思い特に私から請求はしていませんでした。ところが、亡くなったことの連絡があってから3か月経過した後、会社から連絡があり、「実は亡くなった旦那さんは会社に対して借金があります。以前に3000万円横領したことの返済金がまだ2000万円以上残っている。」といわれました。慌てて弁護士さんに相談に行ったのですが、既に3か月間が経過しているということと、預金などの相続手続をしているから払わないといけないといわれて途方にくれています。両親から受け継いだ私名義の自宅があるから、会社は3か月経過するまで借金の存在を黙っていたのだと思います。このままでは自宅も競売にかけられてしまい、露頭に迷ってしまいます。どうすれば良いでしょうか。
A、原則として相続放棄はできないのですが、状況からすれば例外的処理が認められる余地がないではないです。早急に弁護士の面談相談を受けられてください。
【解説】
以下はあくまで架空事例に対する一般的な法的観点からの解説であり、具体的な案件については必ず弁護士などの専門家にご相談ください。
1.相続放棄の「3か月」の起算点について
相続放棄や限定承認をするかどうかを判断するための「熟慮期間」は、民法915条1項で「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月とされています。通常は「被相続人(亡くなった方)の死亡を知った時点」と解釈されることが多いのですが、裁判例や実務では、
- 相続財産に負債があると認識することができなかった正当な理由 がある場合
- 実際に 債務を知った時点を改めて起算点 とできる場合
が考えられます。
例えば、「亡くなった方に多額の借金があるとは全く知らず、かつそれを知る手段もなかった状況で、後から債権者が現れた」といったケースでは、「実際に負債を知った日」から3か月以内に相続放棄を申し立てられる可能性があります。もっとも、これが認められるには裁判所に対し、
- 夫に負債があるとは全く知らなかったこと
- 知らなかったことに過失がなかったこと
- どの時点で初めて確実にその負債を認識したか
を具体的に立証していく必要があります。
2.会社側が負債を「隠していた」場合の影響
会社が借金(横領金の返済義務)を知りながら3か月間一切触れず、3か月を過ぎてから請求してきたという事実関係があると、「知る機会を奪われた・遅らされた」と主張したいところです。しかし、会社側に故意(わざと隠していた)があったとしても、法律上当然に「相続放棄ができる」と結論づけられるわけではありません。
ただし、会社側が積極的に「借金なんてないですよ」などと誤情報を与えていた場合や、通常ならば債務通知を速やかに行うはずが、あえて遅らせた証拠などがあれば、裁判所は「相続人が3か月以内に負債の存在を知り得なかったこと」を認めやすくなるでしょう。結果的に「熟慮期間の起算が遅れる」「相続放棄の申述を受理してもらえる」となる可能性があります。
3.既に預金の相続手続きをしたことによる「単純承認」の問題
民法921条では、相続人が
- 相続財産の全部または一部を処分した場合
- 相続放棄や限定承認の申述期間を過ぎた場合
などに「法定単純承認」が成立すると定めています。一度「単純承認」となると、原則として借金も含めた全財産を無制限に引き継ぐことになります。
3-1.預金の払戻し・名義変更は「処分行為」に当たるか
相続預金の引き出しや名義変更は、状況によっては「処分行為」とみなされ、単純承認が成立してしまうおそれがあります。ただし、葬儀費用の支払など必要最小限の範囲で遺産を使用した場合には、必ずしも処分行為とまでは評価されないこともある(実務上柔軟に判断される)とされています。
しかし、たとえば100万円を自由に使ってしまった、あるいは相続の預金口座を名義変更して確保した、という事実があると、「相続人として当該財産を積極的に受け入れた」=「承認した」と判断されるリスクがあります。
3-2.すでに3か月経過後に弁護士から「相続を承認したと言わざるを得ない」と言われた理由
- 3か月の熟慮期間が経過した
- かつ預金を処分(使用)している
この2点を根拠に、「法定単純承認になっている可能性が高い」という説明を受けたのだと思われます。
4.相続放棄・限定承認を検討する余地がないか
4-1.熟慮期間の伸長申立て
民法915条2項では、正当な理由があるときは家庭裁判所に期間伸長の申立てをすることができます。「夫の債務を全く知らず、かつ知らされる機会がなく、その存在を知ったのは3か月を過ぎてからだった」といった事情が認められれば、家庭裁判所が期間の延長を許可する場合があります。そのうえで、改めて相続放棄や限定承認を申述できる可能性があります。
4-2.「相続放棄の撤回」の困難さ
いったん相続を放棄しなかった、あるいは法定単純承認に該当すると評価される行為があった場合、それを後から「やっぱり放棄します」と撤回するのは原則として認められません。
ただ、「詐欺または脅迫によって相続の承認や放棄をした場合」(民法919条)には撤回・取消しができる場合がありますが、会社が「借金なんてない」と積極的に嘘をついていたなど、かなり限定的な状況が必要です。
5.自宅(あなた名義の不動産)への影響
5-1.「あなたの固有財産」であるかどうか
亡夫とは関係なく、もともとあなたがご両親から相続した不動産であれば、それ自体は「夫の相続財産」ではありません。つまり、本来なら「夫の遺産」には含まれません。
ただし、相続によって負債を承継してしまった結果、あなた自身が夫の債務を引き継ぎ、個人債務者として責任を負う状態 になると、あなた名義の不動産も差押え・競売の対象になり得ます。これは「財産が夫由来かどうか」という問題ではなく、「相続した結果、自分が債務者となった」という点が重要です。
5-2.今からでも自宅を守る方策がないか
- 相続放棄(または限定承認)が認められるかを検討
- 仮に単純承認が確定してしまっている場合には、会社との 分割払いや和解交渉 を目指す
- あるいは 自己破産や民事再生手続など を検討して、生活基盤を守りながら債務処理を行う
などの選択肢を、弁護士とともに具体的に検討することになります。
6.まとめと今後の対応
- 「熟慮期間」の起算点の再検討
- 本件のように、夫の多額の借金を知らなかったことについて「正当な理由」がどの程度認められるか、会社があえて黙っていた事情などをどこまで立証できるかがポイントとなります。
- 家庭裁判所に「相続放棄申述期間の伸長」を申し立てられないか、弁護士と相談してください。
- 「単純承認」成立の有無の再確認
- すでに預金を処分していることなどにより、法定単純承認となるリスクが高いといわれているようですが、厳密に見れば、「葬儀費用に充当しただけ」「実質的に財産を手元に残していない」など、例外が認められ得るかもしれません。こちらも弁護士と詳細を詰める必要があります。
- それでも借金を免れない場合
- 最終的に借金を相続せざるを得ない場合、あなた自身が債務者として会社と交渉することになります。分割払い・減額交渉・利息制限や消滅時効の問題がないかなど、多角的に検討しながら、返済条件の合意を目指すことも考えられます。
- 支払いが到底不可能な金額の場合には、自己破産や個人再生といった法的整理の方法で生活基盤(自宅)をどこまで維持できるかを考える必要があります。
- 自宅を守るための対処
- もともとあなた固有の財産であっても、債務を引き継げば会社は強制執行(競売)の申立てをすることもあり得ます。
- したがって、「相続放棄・限定承認の可能性を改めて追求する」か、「会社との和解・リスケジュール(分割や減額)を行う」か、場合によっては「自己破産などによる免責」を検討する必要があります。
- たとえば個人再生手続を利用できれば、自宅を残したまま一定の債務整理が可能となる場合があります(ただし要件は複数あり、かつ住宅ローン特則が使える状況など細かい検討が必要です)。
最後に
- まずはすぐに専門家(弁護士)に再度相談 し、負債を知った時期・会社が黙っていた経緯・預金の使用実態など事実関係を整理してください。
- 「相続放棄可能か」「限定承認を申立てできるか」「3か月の起算や伸長申立てが認められる見込みはあるか」を中心に検討します。
- やむを得ず債務を引き継ぐことになった場合には、会社との交渉・返済条件の見直し・民事再生や自己破産などの手続 も視野に入れて、生活の再建に向けた最善策を検討していくことになります。
このように、事案の詳細次第で取れる法的手段は変わります。まずは事実関係を可能な限り正確に弁護士に伝え、方針を立てることが重要です。あくまで本回答は一般的な法的視点を示したものにすぎませんので、実際には速やかに専門家と直接ご相談いただければと思います。
はじめに
ご提示の高松高裁平成20年3月5日決定(以下「高松高裁決定」といいます)は、
- 被相続人に債務があるかどうか を相続人が積極的に農協へ照会したところ、農協から「債務は存在しない」との誤った回答を受け、
- その回答を信じて「消極財産(借金)はない」と考え、相続放棄をしないまま3か月を過ぎてしまった
- 後に実は残元金7500万円超の保証債務があることが判明し、初めて知った時点から3か月以内に相続放棄を申し立てた
という事例で、「要素の錯誤」を理由として法定単純承認の効果を否定し、改めて相続放棄を有効にできると判断したものです。
ポイントとなる争点
- 相続人は「熟慮期間内に,債務の有無について適切に調査を行った」
- しかし,債権者(農協)の誤った回答によって「借金はない」と確信してしまい,結果として相続放棄をしないまま3か月を経過。
- その後,実は大きな保証債務があると判明した時点で初めて「放棄するかどうか」再考の機会が生じ,そこで「錯誤を理由に法定単純承認を否定して相続放棄が可能」と高裁が認めた。
1.高松高裁決定の事案概要と結論
- 相続開始後,早い段階で農協に問い合わせ
- 「被相続人に借金があるか?」→ 農協は誤って「ない」と回答。
- その誤回答を信頼して,農協口座の解約や出資金の払戻し,建物更生共済の名義変更などを行った(形式的には“処分行為”にあたり得る)。
- しかし,後に実際には被相続人が大きな保証債務を負っていたことが判明(連帯債務分で7500万円超の残元本が残っていた)。
- 誤回答という特別な事情 があったため,裁判所は「要素の錯誤(=相続財産の重要部分について勘違いがあった)」として,いわゆる法定単純承認(民法921条)の効果を否定。「判明した時点から3か月以内」の相続放棄が有効と判断した。
このように高松高裁決定では,
- (a) 相続開始直後に負債調査をした(努力義務を果たした)
- (b) 債権者である農協が明確かつ誤った回答をした
- (c) その回答を信頼したことについて相続人側に落ち度がない
という点がポイントです。
2.高松高裁決定が示す「錯誤理論」と最高裁昭和59年判決との関係
ご提示の決定理由中では、
最高裁昭和59年判決(いわゆる“相続財産不存在を誤信”した場合の熟慮期間遅延を認める判例)とは事案を異にすると指摘しつつ、
債権者からの誤回答があった場合 に限り、「錯誤を理由に単純承認を否定しうる」と解釈している
と書かれています。この点をまとめると:
- 最高裁昭和59年4月27日判決
- 「被相続人に一切の遺産(プラス財産・マイナス財産ともに)がない」と信じていたため熟慮期間を徒過した場合に,その誤信に相当な理由が認められれば,結果として後から相続財産の存在(特にマイナス)が判明した時点が熟慮期間の起算になるという理論。
- いわば**「ゼロだと思っていたのに実はあったパターン」**を救済する判例。
- 高松高裁平成20年決定
- 「プラス財産は認識していたが,債務の有無を誤って信じさせるような債権者側の言動(誤回答)があったため放棄をせずに3か月を経過」 → 要素の錯誤
- 借金なしという“誤回答”があったことで,「熟慮期間内にさらに探すという発想自体が封じられていた」=相続人に過失がなく,不利益をかぶるのは酷だという趣旨。
3.本件(質問文の事例)との比較:本当に「高松高裁決定」を使えるのか?
質問文の事例(以下「架空相談事例」とします)を要約すると:
- 夫(被相続人)が単身赴任中に突然亡くなった。
- 妻は銀行預金100万円程度を相続(すでに相続手続き済み)。
- 3か月経過後に夫の会社が「実は夫は会社に対して2000万円以上の横領金返済債務がある」と請求してきた。
- 妻は「会社が3か月黙っていたせいで放棄できなくなった」「預金を相続したから単純承認だと言われてしまった」と途方に暮れている。
この事例で高松高裁決定のように「錯誤を主張して,法定単純承認を否定し,後から相続放棄を認めてもらえないか?」を検討するには,下記のような事実関係が必要になります。
3-1.「熟慮期間内に,会社(債権者)に負債の有無を問い合わせた」か?
高松高裁決定では,相続人側が明確に農協へ債務の有無を確認し,「借金はありません」という回答を受け取った事実が極めて重要でした。
- 架空相談事例では,「会社に退職金等を請求していない」「負債の有無の問い合わせをしていない」という経緯が記載されているだけで,**“こちらから会社に確認した”**という話は見当たりません。
- もし相続人が「会社に対して夫の負債の有無を問い合わせた」にもかかわらず,「ありません」とウソを言われていた,といった事情があれば高松高裁の論理を援用できる余地があります。
3-2.「債権者(会社)が誤回答をした(または明確に欺いた)」事実はあるか?
- 高松高裁決定では,債権者である農協の説明が明らかに誤っていた(=「借金はない」という回答そのものが虚偽)という点が問題になりました。
- 架空相談事例では,会社は「退職金や給料の話をしなかった」⇒「結果的に何も言わずに3か月を過ぎた頃に“実は借金があった”と言ってきた」という状況。
- これは**「積極的な誤回答」というより「沈黙や遅延」**に近い行動であり,高松高裁のように「債権者がはっきり誤った情報を伝えた」ケースとは異なります。
3-3.「相続人に落ち度がなかった」ことの立証
- 高松高裁決定が相続人を救済した根幹は,「相続人がきちんと調査した(少なくとも直接質問した)のに,債権者が間違った回答をしたので,さらに調べる術もなかった」という部分です。
- 架空相談事例では,「そもそも会社へ問い合わせや債務調査をしていない」ようにも読めます。そうなると,「そこまで徹底的に調べていなかったのだから,会社の黙りを全面的に責めることは難しい」と判断されるおそれがあります。
4.それでも高松高裁決定を援用する余地は?
結論としては,事案がかなり違うため,高松高裁決定をストレートに適用するハードルは高いです。ただし,以下のような事情が追加で立証できるなら,類似の論理を主張する可能性はあります。
- 会社に対して3か月以内に「夫に負債があるか」問い合わせをしていた
- 会社側が「ありません」と回答するか,「あいまいに“問題ない”と言った」など,誤信させる積極的言動があった。
- または会社から「退職金や給料はありません。借金なんて話も聞いてません」的な言動 があって,妻が「特に負債はないのだ」と誤信させられた。
- 妻がその回答を信じるに至ったことに合理的理由がある(夫と会社の特殊な関係を知らない一般人がさらに調べるのは困難等)
- 実際には夫の横領返済金債務の存在を会社が知っていたにもかかわらず,わざと隠していた → 誤回答もしくは欺罔行為に近い事実があった
これらが客観的に立証できれば,高松高裁決定の「要素の錯誤」を理由に,熟慮期間徒過後の相続放棄申述を認めてもらえる可能性がわずかに出てきます。
5.実務上の注意点
- 「何もしなかった場合」は使いにくい
- 「自ら負債調査もせず,ただ3か月が経過してしまった」ケースだと,なかなか高松高裁決定のような『錯誤』理論を適用するのは難しいです。
- “誤回答”レベルのやり取りが必要
- 相続人側が問い合わせた結果,債権者が明確に「借金はない」と答えた → それによる誤信 → 要素の錯誤 → 法定単純承認否定,という流れがポイント。
- 単なる「黙っていた」「請求せず待っていた」という事実では,不法行為や信義則違反等を別途主張できるかはともかく,高松高裁のように“錯誤”に基づいて相続放棄を認めるのは困難です。
- 実際には預金などを受け取ったことで単純承認を疑われる
- 架空相談事例では,遺産の一部(預金100万円)を受領している → 民法921条2号の「相続財産の一部を処分した」ことになりがち。
- 高松高裁決定でも,貯金解約や出資金払戻しをしていましたが,それが「債権者の誤回答による錯誤の結果だ」と評価され,単純承認を否定できました。
- 同じように主張するには,「そもそも預金の相続手続の際に会社へきちんと債務調査したが『ない』と言われたのだ」というような因果関係が要ります。
6.まとめ
- 高松高裁平成20年決定 は,「熟慮期間内に債権者へ債務の有無を確認し“借金なし”との誤った回答を受けた結果,誤信に陥り相続放棄をしないまま3か月を徒過してしまった」場合に,後から実は巨額の負債があると判明しても,“要素の錯誤”によって法定単純承認を否定し,新たに相続放棄を認められる,と判断したものです。
- これを活用するには,(1)相続人が誠実に債務調査を行った,(2)債権者から積極的に誤回答があった,(3)それを信じたことに相続人側に過失がない といった厳しい要件を満たす必要があります。
- ご質問の事例(「会社が3か月間黙っていた」「遺産100万円を受領済み」)では,そのまま高松高裁決定と同じ主張を展開するのは難しいと考えられます。特に**「相続人が熟慮期間内に会社へ負債の有無を確認し,誤回答を受けたのか否か」**が決定的に重要です。
- もし会社の方が明示的に「借金はありません」とか「返済義務はないですよ」と言っていたのであれば,高松高裁決定に近い論理で「錯誤」を主張できるかもしれません。しかし,「単に債権者が沈黙していた」「相続人の方からも確認していなかった」という程度では,この判例理論を適用するのは相当に困難です。
結論
高松高裁決定は“債権者の誤回答”という特殊な事例に基づく判断であり,一般的に「相続放棄をしそびれたが実は隠れた債務があった」というケースをすべて救済するわけではありません。黙っていたこと自体をもって直ちに「誤回答による錯誤」とは認められませんので,質問文のケース(会社が3か月後に初めて借金を通知してきた)にそのまま適用するのは相当ハードルが高いと思われます。
「会社が積極的に『借金はない』と誤解させる言動をとっていた」などの追加事実があれば,弁護士と相談のうえで高松高裁決定を参考に“錯誤”による相続放棄を検討する余地はあり得ますが,そうでなければ本決定をそのまま援用するのは難しいでしょう。
【参考判例】
最判 昭和59年4月27日
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52168
- 判示事項
- 民法九一五条一項所定の熟慮期間について相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当であるとされる場合
- 裁判要旨
- 相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となつた事実を知つた時から三か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかつたのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法九一五条一項所定の期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である。