緊急事態宣言でテナントビルが閉鎖された場合、賃料は発生するか?
2020年04月16日賃貸借事件(一般民事)
例えば、テナントビルで感染者が出たとか、あるいは緊急事態宣言の自粛要請でテナントビル全体が閉鎖された場合、テナントの賃料は当然発生しません。賃借人の責めに帰すべき事由の履行不能とはいえないからです。
問題になりえるとすれば、感染者が出たテナントそのものでしょう。法律家にとっては常識ですが、念のため文献を紹介します。
司法研修所『民事訴訟における要件事実 第2巻』(司法研修所,1992年3月)8頁
【履行不能が一時的なものにとどまる場合には、賃貸借契約は当然には終了せず(広中・前掲一八二。最判昭三○・三一・二○民集九・一四・二○二七〔135〕参照)、この場合、右履行不能が当事者双方の責めに帰すべからざる事由によるとき又は賃貸人の責めに帰すべき事由によるときは、賃借人はその間の賃料支払義務を当然に免れるが(六○六条の解説三(1)・五○頁参照)、賃借人の責めに帰すべき事由によるときは、これを免れないものと解すべきである(五三六条二項、六二条参照)。】
https://www.moj.go.jp/content/001320302.pdf
Q3:テナントが新型コロナウイルス感染症の影響により営業を休止することとなった場合,賃料が減額されることにはならないのですか。
A:当事者間でこのような場合についてあらかじめ合意している場合には,それによることになります。また,当事者間での協議も重要です。協議に当たっては,賃料の減免の要否や程度等について,事案ごとの事情を考慮して判断していただくことになります。
なお,テナントが休業した場合にも様々な場合がありますが,一例を挙げると,別段の合意がない場合において,オーナーは賃貸物件の使用を許容しているにもかかわらず,テナントが営業を
休止している場合には,賃貸物件を使用収益させる賃貸人の義務は果たされており,テナントは賃料支払義務を免れないものと考えられます。他方,商業施設のオーナーが施設を閉鎖し,テナ
ントが賃貸物件に立ち入れず,これを全く使用できないようなときは,賃貸人の義務の履行がないものとして,テナントは賃料支払義務を負わないことになると考えられます。