自転車の青切符を切られたらどうなるか。前科はつくのか、争えるのか
2026年05月10日刑事弁護
2026年4月1日から、自転車にも交通反則通告制度、いわゆる「青切符」が導入されました。対象は、16歳以上の自転車運転者です。携帯電話使用等、信号無視、一時不停止、通行区分違反など、一定の交通違反について、青切符が交付されることがあります。福岡県の案内でも、対象行為は113種類とされ、例として携帯電話使用等、信号無視、指定場所一時不停止、右側通行・歩道通行などが挙げられています。
「青切符を切られたら前科がつくのか」「反則金を払わないと逮捕されるのか」「納得できない場合に争えるのか」と不安に思われる方もいると思います。
結論からいえば、青切符を切られただけで前科がつくわけではありません。 また、反則金を納付すれば、通常は刑事手続に進まず、起訴もされず、前科もつきません。警察庁も、反則金を仮納付すれば刑事手続に移行せず、起訴されず、いわゆる前科がつくこともないと説明しています。
もっとも、反則金を納付しない場合には、最終的に刑事手続に移行する可能性があります。したがって、青切符は「軽い手続」ではありますが、何も考えずに放置してよいものではありません。
自転車の青切符とは何か
青切符とは、正式には交通反則通告制度に基づく手続です。
交通違反について、すべてを刑事事件として処理すると、警察、検察、違反者本人のいずれにとっても負担が大きくなります。そこで、比較的軽微な交通違反については、一定期間内に反則金を納めることで、刑事裁判を受けずに事件を終了させる制度が設けられています。
これまでは、自転車の交通違反については、違反があったとしても、指導警告で終わるか、悪質な場合には赤切符、つまり刑事手続に乗るという形になりやすい面がありました。
しかし、自転車事故の増加や交通ルール違反への対応の必要性から、2026年4月1日以降、自転車にも青切符制度が導入されました。警察庁は、自転車への青切符導入について、自転車事故の抑止、交通ルール遵守、違反者に対する実効性ある責任追及、簡易迅速な違反処理を目的として説明しています。
どのような違反で青切符を切られるのか
福岡県の案内では、対象となる行為として、例えば次のようなものが挙げられています。
携帯電話使用等、いわゆる「ながらスマホ」
信号無視
指定場所一時不停止
通行区分違反、例えば右側通行や歩道通行など
反則金の例としては、携帯電話使用等が12,000円、通行区分違反や信号無視が6,000円、指定場所一時不停止が5,000円とされています。
ただし、すべての違反が直ちに青切符となるわけではありません。警視庁は、警察官が自転車の交通違反を認知した場合、基本的には指導警告を行うが、交通事故の原因となるような悪質・危険な違反であったときは取締りを行うと説明しています。
つまり、実務上は、形式的に違反があれば常に青切符というよりも、危険性、悪質性、警察官の指導警告に従ったか、交通の危険を生じさせたか、といった事情が問題になります。
青切符を切られたら前科はつくのか
青切符を切られただけで前科がつくわけではありません。
また、反則金を納付した場合も、通常は前科になりません。警察庁は、取締りを受けた翌日から原則7日以内に反則金を仮納付すれば、刑事手続に移行せず、起訴されず、裁判を受けることもなく、有罪となって前科がつくこともないと説明しています。
ここは非常に重要です。
「青切符を切られた」ことと、「刑事裁判で有罪になる」ことは違います。前科とは、基本的には刑事裁判で有罪判決を受けた場合などに問題になるものです。青切符の段階で反則金を納付して終了すれば、刑事裁判にはなりません。
したがって、一般論としては、青切符を切られ、反則金を納付して終了した場合に、「前科がついた」と考える必要はありません。
反則金を払わないとどうなるのか
青切符を交付された場合、まずは取締りを受けた翌日から原則7日以内に、銀行や郵便局の窓口で反則金を仮納付することになります。
この仮納付をしなかった場合、青切符に記載された指定日に交通反則通告センターへ出頭し、反則金の通告書と納付書の交付を受けることになります。遠隔地に住んでいるなどの理由で出頭できない場合には、通告書と納付書が郵送されることもあります。
その後、通告を受けた翌日から10日以内に反則金を納付すれば、仮納付した場合と同じく、刑事手続に移行せず、起訴もされません。
一方で、反則金を納付しない場合には、刑事手続に移行することになります。
つまり、反則金を払わないこと自体で直ちに前科がつくわけではありませんが、刑事手続に進み、最終的に起訴され、有罪となれば、前科がつく可能性があります。
青切符は争えるのか
青切符の内容に納得できない場合、争うこと自体は可能です。
交通反則通告制度は、反則金を任意に納付することで刑事手続に進まないという制度です。したがって、「違反をした覚えがない」「警察官の認定が間違っている」「現場状況からすると違反とはいえない」と考える場合には、反則金を納付せず、刑事手続の中で争うという選択肢があります。
ただし、争う場合には注意が必要です。
反則金を納付しない場合、最終的には刑事手続に移行します。そうなると、警察や検察から事情を聴かれたり、場合によっては裁判手続に進んだりする可能性があります。争えば必ず処分が軽くなる、というものではありません。
また、反則金を支払えば前科がつかずに終了できる事案であっても、争った結果、正式な刑事手続に進み、有罪となれば、前科がつく可能性があります。
そのため、争うかどうかは、感情的に判断するのではなく、次の事情を整理して判断する必要があります。
本当に違反事実がなかったのか
警察官の見間違い、認識違いの可能性があるのか
現場の信号、標識、道路状況はどうだったのか
防犯カメラ、ドライブレコーダー、スマートフォンの記録など、客観証拠があるのか
目撃者や同乗者がいるのか
その違反が、事故や危険発生と結びついているのか
争うことで生じる時間的・精神的負担を引き受けられるのか
特に重要なのは、「納得できない」という気持ちだけでは足りないということです。
刑事手続で争う場合には、客観的な事実関係、証拠、現場状況の整理が重要になります。
青切符を切られた直後にすべきこと
青切符を切られた場合、まずは落ち着いて、次の点を確認してください。
第一に、青切符に記載されている違反内容を確認してください。どの違反とされているのか、日時、場所、反則金額、納付期限を確認します。
第二に、現場状況を記録してください。標識、信号、停止線、道路の幅、歩道の有無、交通量、見通しなどが問題になることがあります。納得できない点がある場合には、可能であれば現場の写真を撮影しておくことが重要です。
第三に、警察官に対して、どの事実をもって違反と判断したのかを確認してください。感情的に反論するのではなく、「どの地点で、どの行為を見たのか」「どの標識に違反したという認定なのか」を確認することが大切です。
第四に、争う可能性がある場合には、反則金を納付する前に相談してください。反則金を納付すると、通常は手続が終了します。後から「やはり争いたい」と考えても、現実には難しくなることがあります。
酒気帯び運転や事故の場合は青切符では済まないことがある
注意が必要なのは、すべての自転車違反が青切符で処理されるわけではないという点です。
福岡県は、酒気帯び運転等の悪質な違反については、これまでどおり刑事手続、いわゆる赤切符の対象となると説明しています。
また、警視庁も、走行中の携帯電話使用によって交通の危険が生じた場合、酒酔い運転、妨害運転など、特に悪質な違反行為は反則通告制度の対象外であり、従来どおり赤切符を受け、刑事手続になると説明しています。
したがって、単なる青切符の問題ではなく、事故を起こしてしまった場合、相手にけがをさせた場合、飲酒運転が問題になる場合、警察官への対応でトラブルになっている場合には、刑事事件として対応を考える必要があります。
特に、自転車であっても、歩行者に衝突して重いけがをさせた場合には、重大な責任を問われる可能性があります。自転車だから軽く考えてよい、ということにはなりません。
現場で反則金を支払うことはない
青切符について、もう一つ注意すべき点があります。
福岡県は、青切符制度を悪用した詐欺が発生しているとして、青切符を交付した現場で警察官が反則金を徴収することは絶対にないと注意喚起しています。現場で反則金を求められた場合には、応じずに警察に通報するよう案内されています。
したがって、警察官を名乗る者から「この場で反則金を払えば済む」と言われた場合には、詐欺を疑う必要があります。
反則金は、交付された納付書を用いて、銀行や郵便局の窓口で納付する手続になります。
まとめ
自転車の青切符を切られた場合でも、それだけで前科がつくわけではありません。反則金を納付すれば、通常は刑事手続に進まず、起訴もされず、前科もつきません。
一方で、反則金を納付しない場合には、最終的に刑事手続に移行する可能性があります。納得できない場合に争うことは可能ですが、争う場合には、現場状況、証拠、警察官の認定内容を整理する必要があります。
また、酒気帯び運転、事故、危険を生じさせた違反、悪質な違反については、青切符では済まず、赤切符による刑事手続になることがあります。
青切符は「軽い手続」に見えますが、対応を誤ると刑事事件化する可能性があります。納得できない点がある場合や、事故・飲酒・勤務先への影響などが問題になる場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。


