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薬院法律事務所

刑事弁護

被害者に加害者の住所氏名を知られたくないという相談(盗撮、痴漢、置き引き、自転車窃盗等)


2019年03月19日刑事弁護

【相談】

 

Q、酔っ払って駐輪場に放置されている自転車に乗って帰っていたところ、職務質問を受けて盗んだことがバレてしまいました。被害者に自分の名前が知られないか心配です。

A、そういった状況であれば、わざわざ伝えられる可能性は低いと思います。ただし、壊してしまったなど示談交渉が必要な場合は、弁護士をつけておく方が安全でしょう。

 

【解説】

 

良くある相談です。被害者側の場合、犯罪捜査規範に基づいて加害者の住所氏名を知ることができる場合があります。しかし、今の時代、これを知られるとSNSでのプライバシー侵害などの危険は大きいです。そこで、弁護人の立場からはあらかじめ窓口を弁護人にすることや、住所氏名を教えないように申し入れることもあります。これも弁護人をつける意義の一つです。犯罪捜査規範10条の3で言うところの(住所氏名の開示が)「被害者の救済に資する」をなくして、「関係者の名誉その他の権利を不当に侵害する」ことを指摘します。とはいえ、ご質問のような事例では、わざわざ被害者に名前を伝える可能性は低いと思います。

 

※犯罪捜査規範

https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50400000002

(被害者等に対する通知)
第10条の3 捜査を行うに当たつては、被害者等に対し、刑事手続の概要を説明するとともに、当該事件の捜査の経過その他被害者等の救済又は不安の解消に資すると認められる事項を通知しなければならない。ただし、捜査その他の警察の事務若しくは公判に支障を及ぼし、又は関係者の名誉その他の権利を不当に侵害するおそれのある場合は、この限りでない。

 

【参考文献】

 

刑事法令研究会編『新版第2訂 逐条解説犯罪捜査規範』(東京法令出版,2002年3月)21頁

「(被害者等に対する通知)
第十条の三
捜査を行うに当たっては、被害者等に対し、刑事手続の概要を説明するとともに、当該事件の捜査の経過その他被害者等の救済又は不安の解消に資すると認められる事項を通知しなければならない。
ただし、捜査その他の警察の事務若しくは公判に支障を及ぼし、又は関係者の名誉その他の権利を不当に侵害するおそれのある場合は、この限りでない。

〔平二国公委規八・追加〕一

被害者等の「救済」に資すると認められる事項その他の事件の内容 には、
○犯罪被害給付制度、損害賠償謂求制度等の概要
○警察やカウンセリング機関等の各種相談窓口
○捜査により明らかになった被疑者の氏名及び住居その他事件の内容等が含まれる。

このように、事件の内容を被害者等に通知することにより、被害者等は捜査が適正に遂行されていること等を知り その精神的打撃の軽減に資することとなる。」

兵庫県弁護士会「実践 犯罪被害者支援と刑事弁護」出版委員会 編著『実践犯罪被害者支援と刑事弁護』(民事法研究会,2015年7月)21頁
「警察段階では「被害者連絡制度」を利用して、捜査状況や検挙状況を確認することができます(平成18年12月7日付け警察庁丙刑企発第53号ほか)。捜査が進捗していない場合には、本制度で照会することが督促的な意味も持ちます。
また、民事賠償の請求先を特定するため、犯罪捜査規範10条の3を根拠に加害者情報(氏名・連絡先等)を知らせてもらうことも可能です。同規定に基づく照会は、捜査終了後は断られることがありますので、捜査中に行っておく必要があります。」