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薬院法律事務所

刑事弁護

被害届を出したのに捜査してくれないという相談


2021年07月31日読書メモ

被害届はあくまで捜査の端緒に過ぎず、警察に捜査義務を課すものではないです。

従って、捜査することを保証してもらえるものではありません。

一方、告訴すれば検察庁への記録送付義務(捜査義務含む)が生じます。そこで、処罰を求めるのであれば、弁護士に依頼して告訴することが考えられます。

刑事訴訟法

第二百四十二条 司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。

 

参考になる記述を紹介いたします。

こういったことから、被害届を出したとしても「犯罪があると思慮するとき」にあたらない、とか、軽微だとかいった理由で捜査がされないことがあります。

伊藤栄樹ほか『新版注釈刑事訴訟法〔第三巻〕§189~§20』(立花書房,1996年7月)

【「犯罪があると思料するとき」とは、特定の犯罪の嫌疑があると認められたときの意味である。およそ犯罪捜査に当たっては、まず何らかの端緒があり(略)、次いで、多くの場合、端緒の内容をなす事項の真偽の判定やいかなる犯罪が存在するかの認知のための作業が行われる(このような作業が「内偵」と呼ばれることがある)。具体的な犯罪の嫌疑は、そのような作業の過程で、あるいは、事案によってはそのような作業をまつまでもなく生じてくる。嫌疑の有無の認定権は、司法警察職員にあり、恣意的な認定は許されないが、認定の根拠となる資料のいかんを問わない。一応の心証を形成するに足りる資料があればよい。

このように、犯罪の嫌疑が生じたと認めるときは、司法警察職員は、「犯人及び証拠を捜査するものとする」。捜査は、犯人を発見すること及び証拠を収集することをその内容とする。「犯人及び証拠を捜査する」とは、単に「捜査をする」と言いかえても同義である191Ⅰ参照)・「ものとする」というのは、捜査をするのが建て前であることを意味している。「捜査をすることができる」のではないから、捜査をするかどうかが司法警察職員の自由裁量に委ねられているわけではない。しかし、「捜査をしなければならない」ものでないから、どのような軽微な犯罪でも、すべて捜査しなければならないという絶対的義務を課しているわけでもない。特別な事情があるときは、捜査を行わないこととしても、司法警察職員の責任に違背することにはならないものとした趣旨と解すべきであろう。】