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薬院法律事務所

一般民事

浮気相手に認知請求権を放棄させ、養育費を一括払いして関係を絶ちたいという相談


2024年09月08日家事事件

【相談】

 

Q、妻以外の女性と交際し、相手方が出産してしまいました。認知請求権を放棄してもらい、養育費を一括払いすることで関係を絶ちたいのですが、問題ないでしょうか。

A、認知請求権は放棄することができません。養育費の一括払いについては、後日請求される可能性があります。また、贈与税が課される可能性などのリスクが存在します。

 

【解説】

 

認知請求権の放棄はできないとする最高裁判例がありますので、仮に「契約書」に認知請求権を放棄すると書いても認知請求はできます。養育費の一括払いについては、後日に請求されるリスクや贈与税がかかるリスクがあります。信託銀行を活用して分割で支払いがなされるようにするといった手法の活用も考えられるでしょう。

 

【参考文献】

 

前田陽一ほか『民法Ⅵ 親族・相続〔第6版〕(LEGAL QUEST)』(有斐閣,2022年3月)141頁

【(vi)認知請求権の放棄 父が嫡出でない子の母に金銭を給付し,母が将来にわたって認知請求しないという約束をすることがある。認知請求権の放棄とは,このような場合に,子の認知請求権が放棄され,子は父に認知を求めえないのか, という問題である。放棄を認めると子の保護に欠けること,身分上の権利は当事者による自由処分になじまないことから,判例・多数説は認知請求権の放棄は認められないと解する(否定説)。他方,学説では,一定の場合には認知請求権の放棄を認めてもよいとする説も唱えられている(肯定説・折衷説)。】

 

第一東京弁護士会人権擁護委員会編『離婚をめぐる相談100問100答』(ぎょうせい,2016年2月)117頁

【家庭裁判所の調停では、父母双方が養育費の一括払いに合意した場合でも、裁判官は一括払いとした場合の法律的な問題点を改めて説明し、合意が揺るぎないことを確認したうえで一括払いを認めています。一括払いの法律上の問題点は、子どもが途中で死亡した場合には、残された養育費は子の相続財産となり、子の相続人が取得することになるという問題、監護親が非監護親の信頼に反し自分自身のために費消してしまい、子どもが再び要扶養状態となった場合の危険、支払われる養育費の額によっては贈与税の支払義務が生ずる可能性があること(072 参照)などです。】

 

家事事件実務研究会編『Q&A 家事事件の実務と手続①』(新日本法規出版,2018年3月)764頁

【【例4】養育費の一括払いを定めた例
相手方は申立人に対し、当事者間の長男A (平成00年00月00日生)の平成00年00月00日から同人が成年に達するまでの養育費として00万円を支払うものとし、本調停期日の席上で全額の授受を了した。
養育費の支払の履行に不安がある場合など一括支払の合意をする場合もあります。
なお、扶養義務者相互間において生活費又は教育費に当てられるために贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるものには、贈与税が課税されることはありません(相税21の3①二)。贈与によって取得した財産か否かは、個別の事案ごとにその具体的事実関係に即して判断されますが、一括払いの場合は、課税実務上、単なる贈与との区別に疑義が生じるので注意が必要です。】

 

※相続税法

(贈与税の非課税財産)
第二十一条の三次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
二扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの

https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073#Mp-Ch_2-Se_2

 

【参考裁判例】

 

最判昭和37年4月10日

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=77616

子の父に対する認知請求権は、その身分法上の権利たる性質およびこれを認めた民法の法意に照らし、放棄することができないものと解するのが相当であるから、原判決の引用する一審判決の所論判断は是認することができる。論旨は右と異る見解に立脚するものであつて採用できない。

 

裁判では、6歳の子が成年に達するまでの養育費として1000万円が一括払いされ、将来相互に金銭請求をしない合意が成立していたが、その後養育費を請求したという事案で、養育費を増額すべき事情が認められないとして申立を却下したものがあります

 

東京高決平成10年4月6日家庭裁判月報50巻10号130頁〔28033263〕

■28033263

抗告人 A
相手方 B
事件本人 C

主  文

1 原審判を取り消す。
2 相手方の本件申立てを却下する。

理  由

第1 抗告の趣旨及び理由
本件抗告の趣旨は、「原審判を取り消し、本件を東京家庭裁判所に差し戻す。」との裁判を求めるものであり、その理由は、第1に、相手方は、昭和60年11月22日に抗告人との間で成立した調停において、養育費についての合意をした上、そのほかには何らの金銭上の請求をしない旨合意したのであるから、抗告人に対する金銭請求権を失った、第2に、仮に金銭請求権があるとしても、その額の算定に当たっては、同調停に基づいて抗告人が支払った養育費を相手方が短期間のうちに消費してしまった点を考慮すべきである、第3に、原審判は、事件本人が成人に達したのちまで養育費の支払を命じた点で誤っている、第4に、原審判後に抗告人の勤務先の○○証券株式会社は廃業を決定し、抗告人が多額のローンをかかえていることからすると、抗告人が原審判の定めた金員を支払うことは不可能である、というものである。
第2 相手方の本件申立ての趣旨及び申立ての実情
相手方の本件申立ての趣旨及び申立ての実情については、原審判2丁表2行目から同丁裏2行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
第3 当裁判所の判断
1 事実関係
一件記録によると、次の事実が認められる。
(1) 抗告人と相手方は、昭和51年5月26日に婚姻し、昭和54年8月28日に事件本人をもうけたが、昭和60年11月22日に調停離婚(東京家庭裁判所昭和60年(家イ)第××××号婚姻費用の分担調停申立事件)した。
(2) 抗告人と相手方は、調停離婚に際し、事件本人の親権者を相手方と定め、抗告人は相手方に対し、事件本人が成年に達するまでの養育費として1000万円、離婚に伴う財産分与・慰謝料として3000万円を支払うこと、事件本人については相手方において責任をもって養育すること、当事者双方は同調停をもって離婚に関する一切を解決したものとして、将来相互に名義のいかんを問わず何ら金銭上の請求をしない旨合意し、抗告人は各金員の支払いを完了した。
(3) 抗告人は、○○大学を卒業して○○証券に勤務しているものであるが、離婚後、相手方の希望に従い事件本人とは一切交渉をもたず、その養育について意見を述べたこともなく、昭和62年10月に再婚した。
一方、相手方は、○△大学英文料を卒業しており、離婚後は昭和61年4月から翌62年3月までと昭和63年2月から8月まで秘書として稼働したものの心身の状況が思わしくないことから就労状態が安定せず、平成元年9月頃からは家業の古美術商を手伝い、両親の協力を得ながら事件本人の監護に当たった。
事件本人は、両親の離婚当時幼稚園児であったが、その翌年4月に私立甲小学校に、平成4年4月に私立乙中学校に、平成7年4月に同丙高等学校にそれぞれ入学し、平成10年3月に同校を卒業した。
(4) 相手方は、離婚後抗告人と交渉をもつことはなかったが、家業は不振続きであった上に平成6年6月に父親が死亡して家業からの収入がなくなり、調停によって抗告人から支払われた金員もほとんどなくなったことから、平成7年2月14日に子の監護に関する処分(養育費)調停申立事件(東京家庭裁判所平成7年(家イ)第×××号)を申立て、平成7年4月以降の養育費を求めた。しかし、相手方は、調停委員が公正を欠くとして、平成7年8月4日、調停を取下げ、即日本件調停申立事件を申し立てた。
相手方は、原審に提出した資料を基に事件本人が中学校を卒業するまでに養育費の1000万円を使い切った旨説明し、財産分与・慰藉料の3000万円も父親の事業につぎ込んで消費した旨主張した。相手方は本件申立後も稼動しない状態であったが、事件本人を私立高校に通学させ、大学に進学させることを予定して、事件本人の高校及び大学の費用を抗告人に請求した。
一方、抗告人は、事件本人が成人に達するまでの養育費は抗告人が支払った1000万円と相手方の支出によって賄われるべきであり、抗告人に対して新たに養育費を求めるべきではない旨主張した。
本件は、平成7年11月20日に調停不成立となり、平成9年10月3日に原審判が出された。
2 本件養育費請求の可否
本件当事者間においては、既に調停によって抗告人が負担すべき養育費の額が合意されて抗告人はその金額を支払済みであり、調停によって定められたもの以外には何らの金銭請求もしない旨の合意が成立している。しかし、民法880条は、協議又は審判で扶養の程度や方法を定めた後に事情の変更が生じた場合には、先にされた協議又は審判を変更することができる旨規定しているのであるから、前記調停の成立後に、調停時には予見できなかった事情の変更が生じたことにより、調停で定めた養育費の額が事件本人の生活の実情に適さなくなり、新たに養育費を定めるべき相当な事情が生じた場合には、相手方から抗告人に対する養育費の請求が許されることとなる。
そこで、このような事情の変更が生じているか否かを検討するに、相手方は事件本人が中学校を卒業するまでに抗告人から養育費として支払を受けた1000万円を使い切ったと主張するが、その大半は私立学校の授業料と学習塾の費用であるところ、離婚調停における前記合意よりすれば、相手方は受領した養育費を計画的に使用して、養育に当たるべき義務があるものと解すべきであり、相手方において、事件本人を公立の小中学校に通学させ、学習塾の費用を節約すれば、抗告人から支払を受けた1000万円の大半は使用せずにすみ、事件本人に高等教育を受けさせる費用として使用することが可能であったと考えられるのに、小学校から私立学校に通わせると共に学習塾にも行かせたものである。相手方は抗告人が小学校から一貫して私立学校での教育を受けていることから、事件本人にも私立学校での教育を受けさせるのが相当であると主張するが、前記認定のとおり、当事者間において相手方がその責任において事件本人の養育に当たる旨の合意が成立しているのであり、抗告人は事件本人の養育の方法について具体的な希望を述べた形跡はないのであるから、事件本人の養育方法については、相手方の資力の範囲内で行うべきで、これと無関係に私立学校に通学させるべきものとは認められない。また、私立学校の授業料や学習塾の費用がある時期から急激に高騰したといった事情は認められないから、相手方としては、事件本人を私立学校と学習塾に通わせた場合には、高等教育を受ける以前に抗告人から支払われた養育費を使い尽くすことは当初から容易に予測可能であったと認められるのであり、これを補うためには、相手方自ら稼働して養育費を捻出するか父親からの援助を得ることが必要であったと考えられるが、相手方は離婚後就労状況が安定していないし、家業は父親の存命中から不振続きであったから、これらによって養育費を補填することは当初からあまり期待できない状況にあったと認められる。
以上の事実によれば、前記の調停成立後にその内容を変更すべき事情の変更が生じたとは認めることはできず、事件本人が、既に就労可能な年齢に達していることを併せて考慮すれば、相手方の本件養育費請求は理由がない。
3 よって、相手方の本件申立てを認容した原審判は不相当であるから、これを取り消した上、相手方の本件申立てを却下すべきものとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 町田顯 裁判官 末永進 藤山雅行)

〔参考〕 原審(東京家 平7(家)15491号 平9.10.3審判)

主  文
1 相手方は申立人に対し、406万1160円を支払え。
2 相手方は申立人に対し、平成9年10月1日から平成10年3月31日まで毎月13万0000円を、平成10年4月1日から平成14年3月31日まで毎月12万0000円を毎月末日限り支払え。

理  由
第1 申立ての趣旨及び実情
1 申立ての趣旨
相手方は申立人に対し、事件本人の養育費として1か月20万円を支払え。
2 申立の実情
申立人と相手方は、昭和60年11月22日当庁昭和60年(家イ)第××××号婚姻費用の分担調停事件において調停離婚した。その際、事件本人の親権者を申立人と定め、事件本人の成年に達するまでの養育費として1000万円を支払う旨の合意が成立し、申立人はこれを受領した。
しかし、事件本人は私立の小中学校に通学したため、学費が嵩み、中学卒業までに上記1000万円を使い切ってしまった。事件本人は現在私立高校3年に在学しており、来春3月には同校を卒業して公立大学医学部に進学することを希望しているので、平成7年4月高校入学以降の養育費として大学医学部卒業の年である平成16年3月まで1か月につき20万円の支払いを求める。
第2 当裁判所の判断
1 本件申立てに至る経緯
本件記録及び当庁平成7年(家イ)第×××号子の監護に関する処分調停事件記録並びに家庭裁判所調査官○○作成の調査報告書によると、次の事実が認められる。
(1) 申立人と相手方は、昭和51年5月26日に婚姻した夫婦で、昭和54年8月事件本人をもうけたが、不和となり、昭和60年11月22日調停離婚した。
(2) 調停離婚に際し、申立人と相手方は、事件本人の親権者を申立人と定め、相手方は申立人に対し、事件本人の成年に達するまでの養育費として1000万円、離婚に伴う財産分与・慰謝料として3000万円を支払う旨の合意をし、相手方は各金員の支払を完了した。
(3) 申立人は、事件本人が私立の小中学校に通学したため、学費がかかり、中学卒業までに養育費の1000万円を使い切り、財産分与・慰謝料の3000万円も父親の事業につぎ込んで費消した。
(4) そこで、申立人は、平成7年2月14日、事件本人が高校に進学する同年4月1日以降の養育費の支払を求めて当庁平成7年(家イ)第×××号子の監護に関する処分(養育費)調停事件の申立てをしたが、平成7年8月4日調停委員が公平を欠くとして申立てを取り下げ、即日本件調停事件の申立てをした。
本件調停事件は、同年11月20日不成立となり、審判に移行した。
2 本件養育費請求の可否
相手方は、申立人は事件本人が成年に達するまでの養育費として1000万円の交付を受けたのであるから、成年までの養育費をその範囲内で計画的に支出すべきであり、不足が生じたときは自己の財産収入から充当すべきであって、相手方に請求すべき理由はないと主張する。
しかし、民法880条は「扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消をすることができる。」と規定する。この規定は扶養の必要状態と可能状態はたえず変動するものであるから、事情変更があった場合には一旦成立した協議又は審判の変更を可能としたものである。
たしかに、申立人が調停の結果「成年に達する迄の養育費として」1000万円を受領したのに、事件本人の中学卒業までに使い切ってしまったことについては、その支出につき計画性や工夫が足りないと批判されてもやむを得ない面がある。
しかし、前記調査報告書によれば、事件本人が平成7年3月(15歳時)までに消費した教育関係費は、次のとおりと認められる。
(1) 学校教育費(含む制服代)
甲小学校(昭和61年4月ないし平成4年3月) 4,208,366円
中学校受験料                   42,506円
乙中学校(平成4年4月ないし平成7年3月)  2,636,610円
(合計) 6,887,482円……〈1〉
(2) 家庭学習費
小学校時代 学習塾              2,067,737円
家庭教師              137,894円
中学校時代 学習塾              1,103,600円
家庭教師               39,600円
(合計) 3,348,831円……〈2〉
〈1〉+〈2〉 = 10,236,313円
以上のとおり、事件本人の中学3年までの私立学校の学校教育費及び家庭学習費の合計額だけで1000万円を超え、前調停で定めた成年に達するまでの養育費の額を超えることが認められる。このような結果となったことについては、前記のとおり申立人に計画性や工夫が足りなかったことについて批判がされてしかるべきであるが、近時家庭学習費を含め教育費が高額化する傾向にあり、特に私立校の場合にこれが著しいことが認められること、相手方自身も私立だけの教育コースを歩んでおり、事件本人にも同程度の教育を受けさせることが不相当といえないことを考慮すると、本件申立てについては、事情の変更があり、前調停の条項の存在にもかかわらず高校入学以降の養育費を請求できるとするのが相当である。
3 養育費の算定
本件記録及び前記調査報告書によると、次の事実が認められる。
(1) 申立人と相手方の収入について見るに、申立人は目下病弱であって昭和63年9月以降稼働収入を得られない状況であり、相手方からの離婚給付3000万円は父親の事業につぎ込んですべて費消し、資産として平成6年に母、妹との共有名義の町田市つくし野の自宅を売却して得た803万7785円をもとでに妹と共有で購入した岡山県倉敷市の土地の共有持分を有するのみである。
他方、相手方は○○証券に勤務し、本店外国債券部長の地位にある。昭和62年10月2日に花末香子と婚姻し、同人とともに港区のマンションに居住している。相手方の確定申告書、給与所得の源泉徴収票によると、相手方の平成8年分の給与所得は1188万1675円(月平均99万0139円)、不動産所得は778万2340円(月平均64万8528円)で、これらに対する住民税、固定資産税、必要経費、借入金返済に関する資料は一切提出されていない。相手方の平成8年分の所得税額、社会保険料の合計は470万2889円(月平均39万1906円)であるが、これから職業費(給与収入の15パーセント)214万4475円(月平均17万8706円)を控除しても十分な養育費支払能力があるものと認められる。
そうすると、本件養育費の算定方法は実費方式を採用するのが相当であるが、前調停で成年までの養育費として1000万円が支払われていること、事件本人のこれまでの学校教育費が平均から見て高額の水準となっていることを考慮すると、申立人主張の金額をそのまま基準とすることも相当でない。そこで、事件本人の学校教育費、通学交通費、家庭教育費(学習塾費用)の一部、最低生活費をもって養育費を算定することとする。
(2) 平成7年4月事件本人が私立丙高校に入学した後の学校教育費は次のとおりである。
(一) 第一学年       (金額)   (支払日)
入学金        296,000(円)(平7.4.11)
学費(第1期)    288,800   (平7.4.11)
学費(夏期講習費)   3,000   (平7.6.21)
学費(キャンプ費)   15,000   (平7.7.13)
学費(部費)      6,660   (平7.7.25)
学費(第2期)    238,400   (平7.9.21)
学費(第3期)    170,900   (平8.1.10)
小計        1,018,700
(二) 第二学年

学費(第1期)    311,300   (平8.4.11)
学費(旅行積立金)   40,000   (平8.5.13)
学費(第2期)    248,400   (平8.9.13)
学費(第3期)    168,400   (平8.1.9)
小計         768,100
(三) 第三学年
学費(第1期)    276,300   (平9.4.30)
百周年記念事業募金   60,000   (平9.4.30)
学費(第2期)    213,400   (平9.9. )
卒業記念行事      24,000   (平9.9. )
学費(第3期)    158,400   (平10.1. )
小計         732,100
合計           2,518,900(円)
1か月平均       69,969(円)(2,518,900÷36)
(3) 丙高等学校在学中の通学定期代(営団地下鉄○△駅・△△駅間)は次のとおりである。
6か月定期  24,760(円)
1か月平均 4,126(円)
(4) 以上、事件本人の教育費の平均月額は
学校教育費+通学交通費 = 69,969+4,126 = 74,095(円)となる。
(5) 事件本人の家庭教育費(学習塾費用)は、月額4万7013円であるが、「保護者が支出した教育費調査」(文部省調査統計企画課、平成4年度調査)によると、私立高校生1人当たりの平均教育費は、学校教育費の月額が5万3786円、家庭教育費の月額が9085円であることから考えると、かなり高額である。そこで、事件本人の家庭教育費(学習塾費用)月額4万7013円についてはその一部について認めることとし、月額9085円の範囲でこれを算入する。
そうすると、学校教育費、通学定期代、家庭教育費(学習塾費用)の月額合計は
74,095+9,085 = 83,180(円)となる。
(6) 事件本人が、高校を卒業し、大学に進学する平成10年4月以降の学校教育費について検討する。
事件本人は、現在高校3年在学中で公立大学医学部を目指して勉学中であるが、平成10年4月以降の学校教育費については、進学先がどこになるか不確定であることなど不確定要素があるので、一応4年制の公立大学に進学したと仮定して算出せざるをえない。公立大学に進学した場合の学校教育費等は、現在の丙高校の学校教育費を下回ることはないと推測されるので、前記学校教育費の額から家庭教育費(学習塾費用)を控除した額をもって平成10年4月1日以降の学校教育費とする。その額は
83,180-9,085 = 74,095(円)となる。
(7) 事件本人の最低生活費は、平成9年8月までは5万2369円であり、平成9年9月以降は4万7059円である(平成9年度生活保護基準による事件本人1人分第1類第2類の合計額)。
(8) そうすると、事件本人の養育費は次のとおりとなる。
(平成9年8月までの養育費)
学校教育費+通学交通費+家庭教育費+最低生活費 =
83,180+52,369 = 135,549(円)
(平成9年9月から平成10年3月までの養育費)
学校教育費+通学交通費+家庭教育費+最低生活費 =
83,180+47,059 = 130,239(円)
(平成10年4月以降の養育費)
学校教育費+通学交通費+最低生活費 =
74,059+47,059 = 121,118(円)
4 本件養育費支払の始期及び終期
以上の養育費支払の始期は、当庁平成7年(家イ)第×××号子の監護に関する処分調停申立事件における請求の始期であり、かつ事情変更の生じた時期である平成7年4月1日が相当であり、終期は4年制大学卒業時である平成14年3月末日とするのが相当である。
5 結論
以上の次第であるから、相手方は申立人に対し、事件本人の養育費として、(1)平成7年4月1日から平成9年9月30日までの合計406万1160円を直ちに支払い、(2)平成9年10月1日から平成10年3月31日までは1か月につき13万0000円を、(3)平成10年4月1日から平成14年3月31日までは1か月につき12万0000円を支払う義務を負う。
よって、主文のとおり審判する。