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薬院法律事務所

刑事弁護

警察から呼び出されたときに持っていくべき資料


2026年06月13日器物損壊

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、警察から電話があり、「事件のことで話を聞きたいので警察署に来てください」と言われました。

逮捕はされていません。任意の事情聴取だと言われています。心当たりはあります。

警察署に行くとき、何を持っていけばよいのでしょうか。身分証明書やスマートフォン、事件に関係する資料を持っていくべきでしょうか。逆に、持っていかない方がよいものはありますか。

A、警察から呼び出されたときに持っていくべき資料は、事件の内容によって異なります。

もっとも、共通して重要なのは、次の3つです。

第1に、本人確認に必要なものです。
運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証などの身分証明書は持参すべきです。警察から指定された資料があれば、それも確認します。

第2に、自分の記憶を整理するための資料です。
事件の時系列、警察からの電話内容、関係者、場所、日時、やり取り、既に提出した資料などを整理したメモは、弁護士相談や取調べ準備に役立ちます。

第3に、弁護士に確認してもらうための資料です。
防犯カメラ、ドライブレコーダー、LINE、メール、領収書、契約書、経費精算書、診断書、保険資料、勤務先規程など、事件と関係する資料は、警察に出す前に弁護士に確認してもらうべきです。

警察から呼び出された場合には、できれば出頭前に弁護士へ相談し、何を持参し、何を提出し、何を提出せずに説明だけにとどめるかを整理すべきです。

 

【解説】

 

1 まず確認すべきこと

 

警察から電話があった場合、まず次の点をメモしてください。

・警察署名
・担当部署
・担当警察官の氏名
・電話番号
・呼出し日時
・呼出し場所
・事件名又は何の件か
・被疑者としての呼出しか、参考人としての呼出しか
・持参するよう指定されたもの
・スマートフォンや車両、資料の提出を求められているか
・逮捕の可能性について何か言われたか

警察からの呼出しは、軽く考えるべきではありません。

「少し話を聞きたいだけ」と言われていても、取調べの結果、供述調書が作成されたり、スマートフォンや資料の任意提出を求められたり、後に逮捕や送致につながったりすることがあります。

まず、警察から何を求められているのかを正確に把握することが大事です。用件を答えてくれないことはよくありますが、少なくとも部署は教えてくれるはずです。

 

※心当たりがない場合は詐欺を疑ってください。

警察に偽装した電話番号に注意!

https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/250325/01.html

 

2 最低限持っていくべきもの

 

一般的に、警察署へ出頭する場合、最低限持っていくべきものは次のとおりです。

・身分証明書
・運転免許証
・健康保険証
・警察から指定された書類
・担当警察官の氏名、部署、電話番号を書いたメモ
・弁護士の連絡先
・眼鏡、常用薬など長時間の取調べに必要なもの
・帰宅手段に必要な交通費
・家族や勤務先への連絡先メモ

運転免許証については、交通事件では特に重要です。酒気帯び運転、無免許運転、救護義務違反、交通事故などでは、免許の有無、免許種別、有効期限、行政処分歴が問題になることがあります。

また、取調べが長時間になることもあります。常用薬がある方は、薬を持参すべきです。体調に不安がある場合は、そのことも警察官に伝えるべきです。

 

3 時系列メモは重要です

 

警察に行く前に、事件の時系列を整理したメモを作ることをおすすめします。

ただし、このメモは、まず弁護士相談用・自分の記憶整理用として作るものです。警察にそのまま提出する前提で作るべきではありません。

時系列メモには、次のような内容を書きます。

・事件前の経緯
・事件当日の行動
・相手方、被害者、関係者とのやり取り
・警察から連絡が来るまでの経緯
・既に話した内容
・提出した資料
・今後心配していること
・家族、勤務先、学校への影響
・自分が覚えていること
・覚えていないこと
・後から知ったこと
・推測にすぎないこと

大事なのは、事実、記憶、推測、後から知った情報を分けることです。

たとえば、交通事故であれば、

「その時、人に当たったと思った」

と抽象的に書くのではなく、

「左後方から擦れるような音が一度聞こえた」
「ミラーを見たが転倒者は見えなかった」
「後日、警察から相手がけがをしていたと聞いた」
「今から考えると、あの音が接触音だったのかもしれない」

というように分けて整理します。

これは、取調べで不正確な供述をしないために重要です。

 

4 時系列メモを警察に提出するかは慎重に判断する

 

時系列メモは有用ですが、そのまま警察に提出すべきかは別問題です。

本人が作ったメモには、不正確な表現、推測、感情、不利な評価が混ざることがあります。

たとえば、

・「逃げたような形になった」
・「横領と言われても仕方ない」
・「盗撮したのかもしれない」
・「相手がけがをしたと思った」
・「会社に迷惑をかけたので全面的に悪い」

といった表現があると、実際の認識や法的評価より重く見られるおそれがあります。

メモは、まず弁護士に見せてください。

弁護士と相談したうえで、警察に提出する資料、説明に使う資料、提出しない資料を分けるべきです。

 

5 スマートフォンを持っていく場合の注意

 

警察から呼び出されたとき、多くの人はスマートフォンを持って行きます。

しかし、事件によっては、スマートフォンが重要な証拠になります。

たとえば、

・盗撮
・痴漢
・薬物事件
・詐欺
・横領、経費不正
・名誉毀損、脅迫
・交通事故後のやり取り

などでは、LINE、メール、写真、動画、SNS、位置情報、検索履歴、決済履歴が問題になることがあります。

警察からスマートフォンの任意提出や中身の確認を求められることがあります。

この場合、何も考えずに提出し、パスコードを教えるべきとは限りません。

一方で、提出を強く拒むことで、捜索差押えや逮捕のリスクが高まることもあります。

したがって、スマートフォンが事件に関係する可能性がある場合には、出頭前に弁護士へ相談してください。

絶対にしてはいけないのは、警察に行く前にデータを消すことです。

写真、動画、LINE、SNS、検索履歴、アカウント、クラウド上のデータを削除すると、証拠隠滅と見られる可能性があります。

 

6 交通事故・交通犯罪で持っていくべき資料

 

交通事故、酒気帯び運転、救護義務違反、報告義務違反、無免許運転などで呼び出された場合には、次の資料が重要になります。

・運転免許証
・車検証
・自賠責保険証明書
・任意保険の資料
・事故現場の写真
・車両損傷写真
・ドライブレコーダー映像
・相手方とのやり取り
・保険会社とのやり取り
・診断書、治療費資料
・修理見積書
・事故当時の天候、時刻、道路状況のメモ
・勤務先や社用車に関する資料
・免許が仕事に必要であることを示す資料

ただし、ドライブレコーダー映像は、原本をそのまま提出する前に、コピーを保存すべきです。

映像を消したり、編集したりしてはいけません。

交通事故では、本人の記憶だけでなく、客観資料が重要です。特に、救護義務違反や報告義務違反が問題になる場合、事故当時の認識、相手方の動き、停車状況、現場確認の有無が重要になります。

 

7 万引き・窃盗事件で持っていくべき資料

 

万引き、窃盗、置引き、社内窃盗などで呼び出された場合には、次の資料が重要になります。

・警察からの呼出し内容のメモ
・被害店舗、日時、商品内容のメモ
・購入した商品がある場合のレシート
・店舗とのやり取り
・既に被害弁償した場合の資料
・謝罪文案
・家族の監督書
・勤務状況を示す資料
・通院、カウンセリング資料
・過去の同種前歴の有無を整理したメモ

万引き事件では、被害店舗への謝罪・被害弁償・示談交渉が重要です。

しかし、本人や家族が直接店舗に行くことが適切とは限りません。店舗側からすれば負担になることがありますし、口止めや圧力と受け取られる危険もあります。

被害弁償や示談は、弁護士を通じて行うことを検討してください。

 

8 盗撮・性的事件で持っていくべき資料

 

盗撮、痴漢、性的姿態等撮影、青少年条例違反などで呼び出された場合には、スマートフォンや記録媒体が問題になりやすいです。

持参や提出については特に慎重に判断すべきです。

弁護士に相談する際には、次の資料が重要になります。

・警察からの呼出し内容のメモ
・事件日時、場所、状況のメモ
・スマートフォンやカメラの状況
・任意提出を求められている機器
・被害者対応の有無
・現場で何を話したか
・防犯カメラや目撃者の有無
・勤務先、学校、家族への影響
・余罪の有無
・再犯防止のための相談先、通院歴

警察へ行く前に、スマートフォンの画像や動画を消してはいけません。アプリやアカウントを削除することもNGです。

一方で、スマートフォンを提出するか、パスコードを教えるかは、事案ごとに検討すべきです。

逮捕の可能性を減らすために積極的に提出することもあります。できるだけ出頭前に弁護士へ相談してください。

 

9 薬物事件で持っていくべき資料

 

大麻、覚醒剤、麻薬、向精神薬などの薬物事件では、次の資料が問題になります。

・警察からの呼出し内容のメモ
・問題になっている薬物の種類
・所持、使用、譲受け、譲渡のどれが疑われているか
・スマートフォン、SNS、通信履歴
・通院歴、処方薬の資料
・家族の身元引受書
・専門機関への相談記録
・薬物から離れるための再犯防止計画
・大学、勤務先への影響に関する資料

薬物や使用器具を警察署に持って行ってはいけません。

また、薬物や使用器具を捨てたり、隠したりすることもしてはいけません。

存在する場合には、すぐに弁護士へ相談してください。

薬物事件では、刑事処分だけでなく、薬物から離れるための環境調整が重要です。家族の協力、専門機関への相談、入手経路・使用仲間との遮断を具体化する必要があります。

 

10 横領・経費不正・会社関係事件で持っていくべき資料

 

会社で横領、経費不正、背任、詐欺、情報持出しなどを疑われている場合には、資料の扱いに注意が必要です。

弁護士相談では、次の資料が重要になります。

・会社から言われている内容のメモ
・経費精算書
・領収書
・会社カードの明細
・仮払金、立替金に関する資料
・会社の経費規程、決裁規程
・上司の承認を示すメールやチャット
・会社との面談記録
・返済を求められている金額の根拠
・自認書、顛末書、返済合意書の案
・退職届や懲戒関係書類
・借金、家計、ギャンブル等の背景資料

ただし、会社の内部資料や顧客情報を無断で持ち出すことは問題になることがあります。

会社資料を持って行く場合には、それが自分が適法に保有している資料なのか、コピーしてよい資料なのかを確認してください。

会社から自認書や返済合意書への署名を求められている場合には、署名する前に弁護士に相談すべきです。

 

11 警察に提出する資料と、弁護士に見せる資料を分ける

 

警察から呼び出されたときに重要なのは、資料を次の3つに分けることです。

1 警察に提出してよい資料

本人確認書類、警察から指定された資料、提出することに問題がない客観資料などです。

ただし、提出前にコピーを取るべきものがあります。

2 弁護士に確認してから提出すべき資料

スマートフォン、LINE、メール、ドライブレコーダー、会社資料、謝罪文、反省文、時系列メモ、診断書、通院資料、家族の陳述書などです。

これらは、出し方を誤ると不利になることがあります。

 

12 反省文や謝罪文を持っていくべきか

 

警察に行く前に、反省文や謝罪文を書いた方がよいか悩む方がいます。

反省文や謝罪文が役立つ場合はあります。

しかし、内容には注意が必要です。

反省文に、

・まだ確定していない事実
・法律評価
・過大な自責
・被害者に対する不適切な表現
・言い訳に見える表現
・余罪を連想させる表現
・会社や家族に関する不正確な説明

が含まれると、かえって不利になることがあります。

謝罪文も、被害者に直接渡すべきか、弁護士を通じて渡すべきか、検察官に提出するべきかは事案によります。

反省文や謝罪文は、警察に持っていく前に、弁護士に確認してもらうべきです。

 

13 供述調書に署名する前に確認すべきこと

 

警察の取調べでは、供述調書が作成されることがあります。

供述調書は、後の刑事処分や裁判で重要な意味を持ちます。

署名押印する前に、次の点を確認してください。

・自分が話した内容と合っているか
・記憶が曖昧なことが断定されていないか
・推測が事実のように書かれていないか
・警察官の法律評価が自分の言葉として書かれていないか
・後から知ったことと当時の認識が混同されていないか
・反省の言葉で、争うべき事実まで認めた形になっていないか
・日時、場所、金額、数量、人物名が正確か
・訂正したい点があるか

違うところ、不正確なところ、ニュアンスがずれているところがあれば、訂正を求めるべきです。

内容に納得できない場合には、署名押印を拒むこともできます。

 

14 弁護士に相談してから出頭すべき場合

 

次の場合には、警察へ行く前に弁護士へ相談してください。

・被疑者として呼び出されている
・逮捕されるか不安である
・スマートフォンや資料の任意提出を求められている
・家宅捜索が心配である
・被害者対応や示談が必要である
・会社、学校、家族に知られたくない
・公務員、教員、資格職である
・交通事故で免許停止・取消が不安である
・薬物事件である
・盗撮、痴漢、性的事件である
・横領、経費不正、会社関係事件である
・余罪がある
・警察に何を話せばよいか分からない
・供述調書に署名してよいか分からない

警察から呼び出された段階で弁護士に相談することは、決して大げさではありません。

逮捕された後では、本人が自分で資料を集めたり、家族や勤務先に説明したり、被害者対応をしたりすることが難しくなります。

逮捕前・出頭前だからこそ、準備できることがあります。

 

まとめ

 

警察から呼び出されたときに持っていくべき資料は、事件の内容によって異なります。

共通して重要なのは、

・身分証明書
・警察からの呼出し内容のメモ
・担当警察官の氏名、部署、連絡先
・事件の時系列メモ
・弁護士の連絡先
・事件に関する客観資料
・家族、勤務先、学校、保険会社等への影響に関する資料

です。

ただし、重要なのは、持っていくことではなく、何を警察に提出するかです。

時系列メモ、スマートフォン、ドライブレコーダー、会社資料、LINE、メール、謝罪文、反省文、診断書、通院資料などは、提出前に弁護士に確認してもらうべきです。

証拠を消してはいけません。
嘘をついてはいけません。
口裏合わせをしてはいけません。
しかし、何でもその場で提出すればよいわけでもありません。

警察から呼び出された場合には、出頭前にできるだけ早く弁護士へ相談し、何を持参し、何を提出し、何を説明するかを整理してください。

 

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