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薬院法律事務所

刑事弁護

警察が職場に聞き込みに来るのを止めたいという相談(万引き、盗撮、大麻所持等、刑事弁護)


2024年09月17日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は、福岡市内に住む30代独身男性です。先日盗撮(万引き)をしてしまい逮捕されました。証拠はないのですが、警察は余罪があるのではないかということを言っており、私が認めないでいると「職場に聞き込みに行く」といってきました。職場に事件のことを知られるのは困るのですが、どうにかできないでしょうか。

A、捜査の必要性がない、名誉毀損になるといった意見書を送付することで抑止することができる場合があります。弁護士の面談相談を受けられてください。

 

【解説】

 

最近は少なくなったと思いますが、容疑を認めない人に対して「家族や友人に聞き込みにいく」「職場に聞き込みに行く」といったことを言って、自白をさせようとしてくる警察官がいます。しかし、例えば職場の車を利用しての犯行等、捜査の必要性がある事案であればともかく、そうでなければ職場への聞き込みは不要なはずです。また、被疑者の名誉にも関わります。もっとも、何もしない場合には聞き込みがなされる可能性は否定できません。私は、過去に同様の事例で、裁判例を引用して意見書を出すことで、警察の聞き込みを阻止できた経験があります。

 

刑事訴訟法

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131

第百九十六条 検察官、検察事務官及び司法警察職員並びに弁護人その他職務上捜査に関係のある者は、被疑者その他の者の名誉を害しないように注意し、且つ、捜査の妨げとならないように注意しなければならない。

 

犯罪捜査規範

https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50400000002

(秘密の保持等)
第9条 捜査を行うに当たつては、秘密を厳守し、捜査の遂行に支障を及ぼさないように注意するとともに、被疑者、被害者(犯罪により害を被つた者をいう。以下同じ。)その他事件の関係者の名誉を害することのないように注意しなければならない。

 

【参考裁判例】

 

名古屋地裁平成7年11月8日判決(判例時報1576号125頁)

【二 争点2について
《証拠略》によれば、本件逮捕の翌日、千種署所属の警部補猪又貞寿(以下「猪又警部補」という。)が聞き込み捜査のため、丙川鉄工へ臨んだ際、猪又警部補は、原告に前科のあることを知らなかった同社の従業員戊田花子から「甲野(原告)さんは、覚せい剤の前科があるんですか。」と尋ねられたので、「ある。」と答えたことが認められる。
ところで、前科は他人に知られたくない事実であり、人の名誉・信用にかかわるものであるから、前科ある者もみだりにこれを公開されないという法律上の保護に値する利益(プライバシーの権利)を有するものというべきである。
したがって、猪又警部補が右のとおり原告の勤務先の同僚に対し、前科のあることを告げたことは、右の権利を侵害する行為に該当することは明らかである。
被告県は、猪又警部補が右のように答えたのは、捜査について協力を得る必要があったからであり、ことさら原告の名誉を毀損するためではなかったと主張するが、本件全証拠によっても原告に前科があることを教えなければ、捜査について協力を得られない客観的状況があったと認めることはできず、したがって、猪又警部補が右のように即断したことは合理的根拠を欠くものであったというべきであり、仮に、同警部補に主観的に右のような目的があったとしても、本件においては右前科がある旨答えたことを正当化するものではない。
結局、猪又警部補が原告に前科がある旨答えたことは、原告のプライバシーの権利を違法に侵害するものというべきである。
そして、国家賠償法一条一項に規定する「その職務を行うにつき」には、職務の内容と密接に関連し職務行為に付随してなされる行為の場合も含むと解すべきところ、猪又警部補が前記の状況下で原告に前科があると答えた行為は、職務の内容と密接に関連し職務行為に付随してなされた行為といわざるを得ないから、被告県は、原告に対し、これによる損害賠償責任を負うものといわざるを得ない。
しかしながら、被告乙山については、被告乙山の原告に関する千種署所属警察官に対する前記供述が仮に違法であったとしても、右供述と原告の右プライバシーの権利の侵害との間には、いわゆる相当因果関係はないものというべきであるから、原告の被告乙山に対する本件プライバシーの権利の侵害による損害賠償請求は失当として排斥を免れない。】