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薬院法律事務所

刑事弁護

超高濃度酒気帯び運転と責任能力の問題(ChatGPT4.5作成)


2025年05月31日刑事弁護

了解しました。呼気アルコール濃度が1.5mg/L前後で飲酒運転を行い、刑法第39条の責任能力(心神喪失・心神耗弱)が争点となった裁判例について調査します。最高裁判所の判例が優先ですが、なければ信頼できる法律事務所や法情報サイトの情報も含めて報告いたします。

調査が完了次第、詳細な情報をお届けしますので、少々お待ちください。

飲酒運転(呼気アルコール約1.5mg/L)と刑法39条の責任能力に関する裁判例

1. 自ら飲酒を計画した場合:責任能力は肯定(減軽なし)

呼気アルコール濃度約1.5mg/L(法定基準0.15mg/Lの10倍)もの泥酔状態で車を運転した事案について、最高裁判所第三小法廷昭和43年2月27日決定(事件番号: 昭和42年(あ)第1814号)は、刑法39条2項による減軽を認めませんでした。この事件の被告人は自家用車でバーに行き、「帰りも自分で運転するつもりで飲酒し」、ビール約20本を飲んで高度の酩酊状態に陥り酒酔い運転に及んだものです。裁判所は「犯行当時、酩酊により心神耗弱状態だったとしても、飲酒時にすでに酒酔い運転の意思が認められる場合には刑法39条2項を適用すべきではない」と判示し、原因において自由な行為の理論を適用して減軽措置を排除しました。飲酒行為と運転行為を一体のものと評価し、飲酒開始時には正常な判断能力があった以上「全体として完全な責任能力がある状態で犯行に及んだ」とみなしたのです。その結果、被告人には通常どおりの刑事責任が認められ、刑法39条2項に基づく刑の減軽は否定されました。※本件では原審が「犯行時は心神耗弱状態」と認定しながら減軽を行わなかったことにつき争われましたが、最高裁は「罪質に鑑みて当然」としています。

判例要旨(昭和43年2月27日・最高裁三小決定):酒酔い運転の行為当時に飲酒酩酊により心神耗弱の状態にあったとしても、飲酒の際に酒酔い運転の意思が認められる場合には、刑法第39条第2項を適用して刑の減軽をすべきではない。

この判例は、自発的な泥酔による責任逃れを認めないリーディングケースと評価されています。実務上も、単に酩酊がひどいだけでは心神喪失・耗弱はほとんど認められません。「犯行の記憶がないほど酔っていた場合でも、多くは単純酩酊(完全責任能力)と判断される」のが現実です。飲酒計画性や犯行の態様・動機などから総合判断し、通常の泥酔なら責任能力ありとされるケースがほとんどです。前記最高裁決定も、「飲酒段階から代行運転を頼むつもりであった等、飲酒時点で運転の意思がなかったなら結論は異なり得る」と示唆しており、自ら飲酒運転を予期・容認して酩酊した場合に限って、原因において自由な行為の理論で厳しく責任を問う趣旨と解されます。

2. 異常酩酊・病的酩酊の場合:責任能力が限定または否定

もっとも、酩酊の質が通常と異なる場合は判断が分かれます。刑法学や判例は、異常酩酊を大きく2類型に区別します:

  • 複雑酩酊:一時的な異常言動(激情型の泥酔など)
  • 病的酩酊:てんかんや慢性アルコール中毒等の素因により急性の意識障害や幻覚妄想を伴う異常酩酊

一般に、**複雑酩酊は限定責任能力(心神耗弱)**と評価され刑の減軽事由となり、**病的酩酊は責任無能力(心神喪失)**と評価される傾向があります。もっともその区別は難しく、専門的な精神鑑定が必要です。

病的酩酊の事例(責任能力否定)

実際に病的酩酊が認定され、責任能力が否定された裁判例として、東京高裁平成25年3月28日判決(平成25年(う)第78号)が挙げられます。この事件は、被告人が飲酒中に突然錯乱状態に陥り、駆け付けた警察官に暴行・公務執行妨害を働いた事案です。原審(地裁)は精神鑑定を踏まえ「犯行当時、被告人は病的酩酊状態だったが是非弁別・行動制御能力を完全に欠いていたとは言えず、著しく減退(心神耗弱)していた」として有罪(心神耗弱減軽)判決を下していました。これに対し東京高裁は、鑑定結果等から判断して「犯行当時、被告人が事理弁識・行動制御能力を欠いていた可能性を否定できない」と認定し、心神喪失の疑いありとして原判決を破棄、自犯について無罪を言い渡しています。すなわち高裁は、病的酩酊による一時的精神障害で責任能力が喪失していた蓋然性が高いと認め、刑法39条1項を適用したものです。専門家の鑑定と異常酩酊の医学的根拠が揃った場合には、このように責任能力が全面的に否定される判例も存在します。

病的酩酊者の予見可能性と過失責任

異常酩酊に関連して、過去の重要判例として最高裁大法廷昭和26年1月17日判決(刑集5巻1号20頁)があります。この事件では、多量飲酒により病的酩酊から心神喪失状態に陥り他人に危害を加える素質をもつ被告人が、酩酊中に殺人を犯しました。最高裁は「そのような素因を常に有する者は、あらかじめ大量飲酒を控える義務がある」とし、仮に犯行時に心神喪失状態であっても、それを自覚しながら飲酒し酩酊に陥ったのであれば刑事責任は免れないと判示しました。具体的には、被告人が自身の病的酩酊の素質を認識しつつ深酒して心神喪失に至った場合、殺人罪は成立しないものの過失致死罪の責任を負うとされたのです。この判例は「酩酊による心神喪失も、その原因において本人に自由があれば責任を問える」ことを示したものとして、以後の裁判例に影響を与えています。

3. まとめと出典

以上のように、呼気1.5mg/L前後の深酩酊状態での飲酒運転については、自ら酩酊を招いた場合は刑法39条の責任能力阻却・限定は原則として認められません。最高裁昭和43年決定はその典型例であり、故意の飲酒運転に因る泥酔は完全責任能力と判示されています。一方、酩酊の質が異常である場合や予見不可能な酩酊であれば、心神耗弱による減軽や心神喪失無罪が認められた例も存在します。裁判所は医学的鑑定や行為状況を総合考慮し、責任能力の有無・程度を判断しているのが実情です。

出典:

  • 最高裁判所第三小法廷昭和43年2月27日決定(刑集22巻2号67頁)
  • 最高裁判所大法廷昭和26年1月17日判決(刑集5巻1号20頁)
  • 東京高裁平成25年3月28日判決(LLI/DB判例秘書 登載)
  • デイライト法律事務所「飲酒を理由に責任能力を争えませんか?」解説記事
  • 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所ブログ「名古屋の飲酒運転事件~責任能力が問題になった事例~」
  • 弁護士村田英幸「酒酔い運転と刑法39条2項(原因において自由な行為)」判例紹介