軽犯罪法違反事件の弁護要領・第1回 総論(軽犯罪法、刑事弁護)
2024年12月18日刑事弁護
軽犯罪法違反の事件については、他の特別刑法や迷惑行為防止条例とオーバラップすることが多く、軽犯罪法違反単独で弁護士に相談が来ることは多くありません。とはいえ、軽犯罪法違反も犯罪ではあるため、立場のある人にとっては重大な問題となることもあります。そこで、このホームページで各条項ごとにどういった内容が犯罪になるのか、他の特別法の成立可能性も含めて解説していこうと思っています。
本日は、軽犯罪法違反に共通することを説明します。
軽犯罪法違反の特殊性として、「現場注意」「始末書措置」「送致」の三段階に分かれているということがあります。これは法律上定められているというものではなくて警察の「運用」として行われているものです。そのため、仮に「現場注意」で済まなかったとしても、弁護活動次第では「始末書措置」で済む可能性があります。そうなると、送検がなされないことから「報道」される可能性がそれだけ低くなるということがあります。
その判断要素は、「〇被疑者の行為内容,前歴などから再犯の危険性はないか〇行為の時間・場所などから計画的な犯行ではないか〇組織的な犯行ではないか〇公害等社会的事犯ではないか〇真実の反省があるかどうか」とされているところです(地域実務研究会編『地域警察官のための初期捜査活動』(立花書房,2005年8月)85頁)。弁護人としては、個別の事案ごとに、軽犯罪法違反が成立するか否か、仮に成立するとすれば送致を避けられないか検討する必要があるでしょう。
軽犯罪法
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039/
第一条左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
一人が住んでおらず、且つ、看守していない邸宅、建物又は船舶の内に正当な理由がなくてひそんでいた者
二正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
三正当な理由がなくて合かぎ、のみ、ガラス切りその他他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
四生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの
五公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯楽場において、入場者に対して、又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者
六正当な理由がなくて他人の標灯又は街路その他公衆の通行し、若しくは集合する場所に設けられた灯火を消した者
七みだりに船又はいかだを水路に放置し、その他水路の交通を妨げるような行為をした者
八風水害、地震、火事、交通事故、犯罪の発生その他の変事に際し、正当な理由がなく、現場に出入するについて公務員若しくはこれを援助する者の指示に従うことを拒み、又は公務員から援助を求められたのにかかわらずこれに応じなかつた者
九相当の注意をしないで、建物、森林その他燃えるような物の附近で火をたき、又はガソリンその他引火し易い物の附近で火気を用いた者
十相当の注意をしないで、銃砲又は火薬類、ボイラーその他の爆発する物を使用し、又はもてあそんだ者
十一相当の注意をしないで、他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ、注ぎ、又は発射した者
十二人畜に害を加える性癖のあることの明らかな犬その他の鳥獣類を正当な理由がなくて解放し、又はその監守を怠つてこれを逃がした者
十三公共の場所において多数の人に対して著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ、又は威勢を示して汽車、電車、乗合自動車、船舶その他の公共の乗物、演劇その他の催し若しくは割当物資の配給を待ち、若しくはこれらの乗物若しくは催しの切符を買い、若しくは割当物資の配給に関する証票を得るため待つている公衆の列に割り込み、若しくはその列を乱した者
十四公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者
十五官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作つた物を用いた者
十六虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者
十七質入又は古物の売買若しくは交換に関する帳簿に、法令により記載すべき氏名、住居、職業その他の事項につき虚偽の申立をして不実の記載をさせた者
十八自己の占有する場所内に、老幼、不具若しくは傷病のため扶助を必要とする者又は人の死体若しくは死胎のあることを知りながら、速やかにこれを公務員に申し出なかつた者
十九正当な理由がなくて変死体又は死胎の現場を変えた者
二十公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者
二十一削除
二十二こじきをし、又はこじきをさせた者
二十三正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
二十四公私の儀式に対して悪戯などでこれを妨害した者
二十五川、みぞその他の水路の流通を妨げるような行為をした者
二十六街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者
二十七公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者
二十八他人の進路に立ちふさがつて、若しくはその身辺に群がつて立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとつた者
二十九他人の身体に対して害を加えることを共謀した者の誰かがその共謀に係る行為の予備行為をした場合における共謀者
三十人畜に対して犬その他の動物をけしかけ、又は馬若しくは牛を驚かせて逃げ走らせた者
三十一他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者
三十二入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者
三十三みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者
三十四公衆に対して物を販売し、若しくは頒布し、又は役務を提供するにあたり、人を欺き、又は誤解させるような事実を挙げて広告をした者
第二条前条の罪を犯した者に対しては、情状に因り、その刑を免除し、又は拘留及び科料を併科することができる。
第三条第一条の罪を教唆し、又は幇助した者は、正犯に準ずる。
第四条この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。
附 則
①この法律は、昭和二十三年五月二日から、これを施行する。
②警察犯処罰令(明治四十一年内務省令第十六号)は、これを廃止する。