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薬院法律事務所

刑事弁護

軽犯罪法違反事件の弁護要領・第10回 軽犯罪法1条10号(軽犯罪法、刑事弁護)


2024年12月23日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は東京都に住んでいる大学生です。インターネットオークションで大量の古いかんしゃく玉が売っており、興味を持って購入しました。早速公園で遊んでいたのですが、一度に大量にぶつけてみたところ、想像していたより凄まじい威力で周囲に大きな音がして、通行人から通報を受けた警察が駆け付けてきました。その後、警察から呼び出しがあり、軽犯罪法違反といわれています。前科をつけたくないのですが、どうすればいいでしょうか。

 

A、ご相談者の行動については、軽犯罪法1条10号の爆発物使用等の罪が成立する可能性があります。ただ、実害が出ていないのであれば、送致されたとしても嫌疑不十分ないし起訴猶予処分を狙えると思います。

 

 

【解説】

本日は、軽犯罪法第1条第10号「相当の注意をしないで、銃砲又は火薬類、ボイラーその他の爆発する物を使用し、又はもてあそんだ者」について解説します。

この条文は、“爆発の危険”を内在するものを適切な注意なく扱う行為を未然に抑止しようとしています。

その趣旨は、【本号も、前号と同じく、公共の危険を防止するための規定である。ただ、前号では火災を生じ易い行為を規定したのに対し、本号では銃砲の爆発又はその他の物の爆発による生命・身体・財産の危険の直接の防止を主眼としている。】(野木新一・中野次雄・植松正『註釈軽犯罪法』(良書普及会,1949年2月)50頁)とされているところです。

本件の場合は、かんしゃく玉は「火薬類」には該当しないと解釈されていますが、大量の場合は「爆発物」に該当することもあるとされています。どの程度の量を、どのように取り扱ったがポイントになりますので、具体的な事情を弁護士に相談されてください。

 

軽犯罪法

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039/

第一条左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
十 相当の注意をしないで、銃砲又は火薬類、ボイラーその他の爆発する物を使用し、又はもてあそんだ者

 

【参考文献】

 

伊藤榮樹原著・勝丸允啓改訂『軽犯罪法 新装第2版』(立花書房,2013年9月)114-115頁

【「火薬類」とは,火薬頻取締法(昭和25年法律第149号) 第2条にいう火薬,爆薬及び火工品をいうが,同条第2項にいう「がん具煙火」は,原則として本号の「火薬類」には当たらないものと解する(101問99頁) 。なぜなら,本号は,暴発や爆発によって他人の生命.身体,財産等に危害を及ぼすこととなるおそれのある銃砲や爆発する物の相当の注意をしないでの使用等を禁じたものであるところ,玩具花火や爆竹. クラッカー(かんしゃく至など)などといった「がん具煙火」(火薬類取締法施行規則〔昭和25年通産省令第88号〕第1条の5参照)は,火薬類取締法上も,他の火薬,爆薬及び火工品に比し各種規制が大幅に緩和されていることからも分かるように通常一般にはこのような抽象的危険性を有しないものと認められるからである(注1)。もっとも,「がん具煙火」であっても,多量に存在する場合であれば,本号にいう「爆発する物」に当たることになろう。】

https://tachibanashobo.co.jp/products/detail/3110

 

軽犯罪法違反事件の弁護要領・第1回 総論(軽犯罪法、刑事弁護)