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薬院法律事務所

刑事弁護

軽犯罪法違反事件の弁護要領・第13回 軽犯罪法1条13号(軽犯罪法、刑事弁護)


2024年12月24日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は東京都に住んでいるものです。とあるプラモデルの発売日に家電量販店の行列に並んでいたのですが、電話がかかってきて、内密の話でしたので列を離れました。5分ほど話してから列に戻ったところ、私の後ろにいた人は隙間を空けてくれたので並び直しました。そうすると、もっと後ろにいた人から「並び直せ」と言われました。「ここ並んでいたので」と言ったのですが、「関係ないだろ」といってきたので、私もカチンときて「なんであんたにそんなこと言われないといけないんだ」と怒鳴ったところ、店員から警察を呼ばれました。軽犯罪法違反といわれているのですが、前科がつくのは困ります。

 

A、ご相談者の行動については、仮に「威勢を示して」にあたるとしても、「威勢を示して」「割り込んだ」のではなく、「割り込んだ後」に「威勢を示して」いるので、理論上は軽犯罪法違反にはならないと考えられます。ただ、喧嘩の内容によっては「脅迫罪(刑法222条)」が成立することはあるでしょう。

 

 

【解説】

本日は、軽犯罪法第1条第13号「公共の場所において多数の人に対して著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ、又は威勢を示して汽車、電車、乗合自動車、船舶その他の公共の乗物、演劇その他の催し若しくは割当物資の配給を待ち、若しくはこれらの乗物若しくは催しの切符を買い、若しくは割当物資の配給に関する証票を得るため待つている公衆の列に割り込み、若しくはその列を乱した者」について解説します。

その趣旨は、【本号はほとんど新設の規定ともいうべきものであり、その内容から見ても、この法律の中でもっとも注目すべきものの一つであろうと思う。その立法の趣旨は、われわれの日常社会生活に必然な公共的・秩序的な行動を保護するにあると考えられる。】(野木新一・中野次雄・植松正『註釈軽犯罪法』(良書普及会,1949年2月)56頁)とされているところです。

ご相談の内容だけだと、軽犯罪法違反は成立しないと思われます。

 

軽犯罪法

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039/

第一条左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
十三 公共の場所において多数の人に対して著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ、又は威勢を示して汽車、電車、乗合自動車、船舶その他の公共の乗物、演劇その他の催し若しくは割当物資の配給を待ち、若しくはこれらの乗物若しくは催しの切符を買い、若しくは割当物資の配給に関する証票を得るため待つている公衆の列に割り込み、若しくはその列を乱した者

 

 

【参考文献】

 

伊藤榮樹原著・勝丸允啓改訂『軽犯罪法 新装第2版』(立花書房,2013年9月)131頁

【本号後段の罪が成立するためには,「威勢を示」せば足り,これにより現実に相手が不安ないし迷惑を覚えることは必要でない。また.「威勢を示す」ことを要するから.行列中にいる人の好意によって列中に入れてもらったり,偽計・詐術を用いて行列に割り込んだり.行列を乱すような行為は.本号の対象とはならない。】

https://tachibanashobo.co.jp/products/detail/3110

 

軽犯罪法違反事件の弁護要領・第1回 総論(軽犯罪法、刑事弁護)