軽犯罪法違反事件の弁護要領・第14回 軽犯罪法1条14号(軽犯罪法、刑事弁護)
2024年12月24日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は東京都内のマンションに住んでいるものです。自宅で小学生の子どものためにピアノを購入しているのですが、子どもが演奏をしていると下の階の人が「ピアノの音がうるさい」と苦情をいってきました。確かに多少の音はするかもしれませんが、子どもの演奏に目くじらを立てるのはおかしいと思っています。ところが、後日またその人が今度は警察官を連れてきました。警察官から「もっと音量を抑えられないのか」と言われたのですが、私は、「警察は、民事不介入でしょう。」と追い返しました。後日、今度は警察官が2人でやってきて、軽犯罪法1条14号違反といってきました。不当ではないでしょうか。
A、2つの問題があります。一つは、小学生の子どもがしたことについて、親に軽犯罪法違反を問えるかということ、もう一つは、「異常に大きく出して」「近隣の人」の要件を満たすかです。結論としては軽犯罪法違反にはあたらないと思いますが、民事上の損害賠償の問題もありますので弁護士の面談相談を受けられてください。
【解説】
本日は、軽犯罪法第1条第14号「公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者」について解説します。
その趣旨は、【本号は公衆の日常生涯の平穏のうち、音響の面における平穏-静音-と保護する規定である。】(野木新一・中野次雄・植松正『註釈軽犯罪法』(良書普及会,1949年2月)60頁)とされているところです。
ご相談の内容の場合、小学生の子どもの演奏という点から、軽犯罪法違反に問うことはできないのではないかと考えます。また、「近隣の人」は1名では足りないと解釈されていますので、その店でも成立はしないでしょう。とはいえ、民事上の損害賠償責任を問われる可能性はあります。
軽犯罪法
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039/
第一条左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
十四 公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者
【参考文献】
安西温『特別刑法〔7〕準刑法・通信・司法その他』(警察時報社,1988年8月)151頁
【異常に大きく出すとは、、その音が出される場所(都会か地方か、商店街・工場地帯であるか住宅地帯か、病院・学校の付近か)・時刻(昼間か夜問か)その他の具体的事情に照らして社会通念上一般に相当として許容される程度を超える大きな音を出すことである(拡声器による宣伝放送につき、大阪高裁昭和二八・六・八判決特報二八・三七)。そのような異常に大きな音最である限り、いかに音楽的に優れているピアノ演奏であっても、いわゆるピアノ騒音として本号の対象となりうる。「カラオケ」も同様である。(略)近隣に迷惑をかけるという場合の近隣とは、となり近所の人々をいう。「公衆」とは異なって特定少数人でも足りるが、一人では足りず、少なくとも複数人であることを要する。】
http://www.k-jiho.com/templates/shows/law/tokukei.html