軽犯罪法違反事件の弁護要領・第18回 軽犯罪法1条18号(軽犯罪法、刑事弁護)
2024年12月25日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は東京都内でアパートを経営しているものです。昨夜、酔っ払いらしき人が敷地内で寝ていたのですが、起こしてトラブルになるのも嫌だし、朝になれば出て行くだろうと思って放置していました。ところが、冬場だったためか、翌朝にも寝たままで亡くなられていました。警察と救急車を呼んだのですが、夜中のうちに亡くなられてるということでした。その後、警察から連絡があり、私が軽犯罪法1条18号違反にあたるといわれています。正直、私は何も悪いことをしていないと思うのですが、犯罪になるのでしょうか。
A、軽犯罪法1条18号違反の成立が考えられます。もっとも、状況からすれば立件されるのも不憫に思います。送致されるべき案件ではなく、始末書措置で済ませるように交渉することが考えられるでしょう。
【解説】
本日は、軽犯罪法第1条第18号「自己の占有する場所内に、老幼、不具若しくは傷病のため扶助を必要とする者又は人の死体若しくは死胎のあることを知りながら、速やかにこれを公務員に申し出なかつた者」について解説します。
その趣旨は、【扶助を必要とする者に対し、速やかな保護・救済を与え、人の死体や死胎に対する公務員の適切な措置(処分ないし捜査)を促すため、これらの者が発見された場所の占有者に対し、公務員への申告義務を課すことにしたのである。】(稲田輝明・木谷明『軽犯罪法』平野龍一ほか編『注解特別刑法7 風俗・軽犯罪法編〔第2版〕』(青林書院,1988年1月)94頁)とされているところです。
酔っ払いには関わり合いになりたくないという気持ちはわかりますが、警察に一報を入れるだけでも救われる命がありますので…泥酔して眠っている人を見かけた場合には、110番をすると良いでしょう。
軽犯罪法
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039/
第一条左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
十八 自己の占有する場所内に、老幼、不具若しくは傷病のため扶助を必要とする者又は人の死体若しくは死胎のあることを知りながら、速やかにこれを公務員に申し出なかつた者
【参考文献】
伊藤榮樹原著・勝丸允啓改訂『軽犯罪法 新装第2版』(立花書房,2013年9月)155頁
【扶助を必要とする原因は,老,幼,不具,傷,病に限られる。つまり,「老幼,不具若しくは傷病」は,制限的列挙である。「不具」は,身体器官の不完全なことをいうが,視覚障害,聴覚障害のほか,知的障害を含み,「病」には,精神病や薬物中毒を含む。また,にわかに産気づいた女性や泥酔して動けないため凍死のおそれのある者なども「病のため扶助を必要とする者」に当たるものと解することができる】
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