軽犯罪法違反事件の弁護要領・第19回 軽犯罪法1条19号(軽犯罪法、刑事弁護)
2024年12月27日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は東京都内で父親と二人暮らしをしているものです。朝リビングに行くと、自宅で介護していた父親がリビングで倒れていて、動かなくなっていました。救急車を呼んだのですが、先日、認知症になっていた父親が「家に帰る」といって外に出ようとするので、私が無理に引き留めてあざができていたことを思いだし、リビングで倒れていたら私が虐待したと疑われるかもしれないと思い、ベッドまで運んで救急車で運ばれました。その後、病院から警察に通報があったようで、自宅に警察官が捜査に来られたのですが、警察官が床に血がついているのを見て私を問い詰めてきたので、正直にお話しました。その後、警察署から呼び出しがあり、軽犯罪法1条19号で取調べを行いたいといわれています。どうすれば良いでしょうか。
A、軽犯罪法第1条第19号「正当な理由がなくて変死体又は死胎の現場を変えた者」にあたる可能性はありますが、警察が本当に疑っているのは虐待死亡事件という可能性もありそうです。弁護士の面談相談を受けられて下さい。
【解説】
本日は、軽犯罪法第1条第19号「正当な理由がなくて変死体又は死胎の現場を変えた者」について解説します。
その趣旨は、【人が死亡したときは、火葬・埋葬等の措置がとられるのが通常であるから、死体または死胎が放置されているということは、その背後に犯罪その他何らかの異常な事態の存することを示唆することといえる。したがって、死体・死胎の現場を変えることは、そのような犯罪の捜査上の端緒を失わせるおそれがあるので、これを防止する必要がある。本号は、このような刑事司法上の必要を考慮した規定であると考えられるが(伊藤栄樹・167頁、磯崎・110頁、大塚・115頁、植松・116頁)、公衆衛生上の必要をも考慮したものであるとする見解(野木ほか・70頁、増永・97頁)もある。】(稲田輝明・木谷明『軽犯罪法』平野龍一ほか編『注解特別刑法7 風俗・軽犯罪法編〔第2版〕』(青林書院,1988年1月)97頁)とされているところです。
本件の場合、「変死体」にあたるか疑問がありますが、それを措いても、本当に警察が疑っているのは虐待死亡事故という可能性はありそうです。現時点で早急に弁護士に相談すべきです。
軽犯罪法
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039/
第一条左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
十九 正当な理由がなくて変死体又は死胎の現場を変えた者
【参考文献】
伊藤榮樹原著・勝丸允啓改訂『軽犯罪法 新装第2版』(立花書房,2013年9月)157頁
【「変死体」とは, 刑法第192 条(変死者密葬罪)にいう「変死者」と同義であり,犯罪に起因しない死であることが明らかでない死体をいう。その意味で,それは,刑事訴訟法第229条にいう「変死者」及び「変死の疑のある死体」の双方を含む概念である(注2)。】
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