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薬院法律事務所

刑事弁護

軽犯罪法違反事件の弁護要領・第20回 軽犯罪法1条20号(軽犯罪法、刑事弁護)


2024年12月28日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は東京都内に居住するものです。コスプレが趣味で、イベントに向けてSNSでも色々発信をしています。今回、あるアニメの女性キャラクターのコスプレをして、友人に頼んで撮影してもらおうと思ったのですが、胸の部分の露出が多いので深夜の公園で撮影してもらいました。今考えると室内でも良かったかなあと思っているのですが、誰かが通報したみたいで、警察の方から職務質問を受けて、後日警察署に来るようにといわれています。心配しているのですが、どうすれば良いでしょうか。

A、コスプレの内容によりますが、軽犯罪法第1条第20号「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」にあたる可能性はあると判断されたのかもしれません。一度弁護士に相談して、軽犯罪法違反にあたらないことを主張するとともに、厳重注意、あるいは始末書措置で終了できるように警察と交渉するのが良いと思います。

 

 

【解説】

 

本日は、軽犯罪法第1条第20号「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」について解説します。

その趣旨は、【本号の立法趣旨は,一般国民の健全な風俗感情を保護し.あわせて一般の風俗の向上を図ろうとするのであり,警察犯処罰令第3条第2号(「公衆ノ目二触ルヘキ場所二於テ担褐.裸程シ又ハ臀部.股部ヲ露ハシ其ノ他醜態ヲ為シタル者」) を受け継いでいる。】(伊藤榮樹原著・勝丸允啓改訂『軽犯罪法 新装第2版』(立花書房,2013年9月)160頁)とされているところです。

乳房の露出については、それだけでは公然わいせつ罪にあたらないと解釈されていますが、軽犯罪法違反が成立することもあるとされています。しかし、どういった場面で露出したのかが問題で、状況からすると軽犯罪法違反が成立するか否かについても疑問があります。一度弁護士の面談相談を受けられて下さい。

 

軽犯罪法

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039/

第一条左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二十 公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者

 

刑法

https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045#Mp-Pa_2-Ch_22

(公然わいせつ)
第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

 

【参考文献】

 

伊藤榮樹原著・勝丸允啓改訂『軽犯罪法 新装第2版』(立花書房,2013年9月)162頁

【社会通念上,肌を露出していることが不自然である場所もあれば,そうでない場所もある。成人のみが観覧するいわゆるストリップ劇場の舞台でストリッパーが乳房をあらわすことは,本号に当たらなくても,海水浴場で乳房を露出したいわゆるトップレス水着を着用することは,本号に当たる。さらに,海水浴場で着用することが許されるビキニスタイルの水着も,これを着用して,市街地の道路を歩いたりすれば,本号に当たることもあろう。同様に,海水浴場とこれに接着する旅館街等とを水着で往復することは許されるであろうが,水着のまま電車・バスなどに乗車して海岸と往復するような行為は,本号に当たることもあろう。さらに,土木工事の現場で労働者が上半身裸でつるはしを振るうような行為は,本号に当たらないとしても,厳粛なるべき葬儀の席上,同様の格好でいる行為などは,おおむね「公衆にけん悪の情を催させるような仕方」に当たることとなるであろう。】

https://tachibanashobo.co.jp/products/detail/3110

 

警察実務研究会「青年警察官の執行力向上を目指して 交番勤務立花巡査の一日(第83回)軽犯罪法(その6)身体露出の罪」警察公論2018年3月号28-32頁

32頁

【まずは、目撃者から事情を聴取しよう。110番通報があった場合には、その通報者からどういう状況だったのかを説明してもらい、参考人調書を作成するべきだね。それから、乳房を露出させた女性本人から、その経緯、自転車による走行経路走行時間等を聴取して、調書化しておくように。走行経路が分かれば、その経路に防犯カメラがあるかどうかを確認しておくこと重要だよ。】

 

軽犯罪法違反事件の弁護要領・第1回 総論(軽犯罪法、刑事弁護)