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薬院法律事務所

刑事弁護

軽犯罪法違反事件の弁護要領・第23回 軽犯罪法1条23号(軽犯罪法、刑事弁護)


2024年12月28日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は大阪府に居住する公務員の男性です。既婚者ですが、職場の年下の部下に好意を持ってしまい、その人のことをもっと知りたくなりました。職場には更衣室があるので、その女性が着替えているタイミングでこっそり窓の隙間から覗いていたのですが、発見されて騒ぎになり、自分から申し出ました。女性は凄く怖がって泣いていたのをみて、本当にとんでもないことをしたのだとわかって反省しています。上司から「この件は警察に通報する」といわれて、警察がきました。警察からは「大阪府迷惑行為防止条例」違反だといわれています。職場は自主退職するつもりで辞表を出していますが、前科がつくことは困ります。軽犯罪法違反ではなくて条例違反になるのでしょうか。

A、確かに条文を見ると大阪府迷惑防止条例第6条3項1号に該当するように思われますが、軽犯罪法違反に留まるという主張はあり得ます。現在は、性的姿態等撮影罪が成立しましたが、この法律が成立する前は各地の迷惑防止条例で屋内の着替え盗撮などが取締りされていました。そこで、軽犯罪法1条23号と抵触して無効ではないか(憲法94条)という論点がありました。もっとも、私が把握している限りでは、盗撮行為の規制について、無効とした裁判例はありません。ただ、「盗撮行為」ではなく、「のぞき見」行為まで迷惑行為防止条例でより重く処罰できるかどうかは別の論点です。東京都の迷惑防止条例では規制対象とされておらず、大阪府や山形県など一部の自治体で規制対象とされています。軽犯罪法の上乗せ規定となることから、この点は無効とされる可能性があると考えています。弁護士の面談相談をお勧めします。

 

【解説】

 

本日は、軽犯罪法第1条第23号「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」について解説します。

その趣旨は、【本号は、人の個人的秘密を侵害する抽象的危険性のある行為を禁止し、ひいては国民の性的風紀を維持しようとするものである。】(伊藤榮樹原著・勝丸允啓改訂『軽犯罪法 新装第2版』(立花書房,2013年9月)167頁)とされているところです。

近年、スマートフォンやカメラ付携帯電話、盗撮用の隠しカメラ等を利用して、「他人の下着や衣服で隠された身体部分をひそかに撮影する行為」が増加していました。これらの性的盗撮行為等に対する規制としては、窃視罪(軽犯罪法1条23号)、児童ポルノ盗撮製造罪(児童ポルノ規制法7条5項)、各都道府県の迷惑防止条例による規制が存在していたが、性的盗撮行為そのものを対象として取り締まる法律はありませんでした。一方、軽犯罪法1条23号は「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」(窃視罪)と定めており、盗撮行為も規制対象とされてきました。そして、迷惑防止条例は、従前、「公共の場所又は公共の乗物」での性的盗撮行為を規制しており、軽犯罪法と迷惑防止条例の規制が重複した場合には、軽犯罪法違反のみが成立するとされてきました。

しかし、それでは盗撮行為の抑止が不十分ということで、迷惑防止条例における性的盗撮行為の規制範囲を広げる自治体が増加しており、事務所・集会場所などのいわば「準公共空間」に規制を及ぼす自治体、住居等の私的空間について規制を及ぼす自治体、私的空間における性的盗撮行為のみならずのぞき見行為も規制する自治体など、規制状況は広範化していました。このうち「盗撮行為」についての規制は適法と解釈する裁判例が散見されるところですが、「のぞき見」については正面から判断をした公刊されている裁判例は見当たりません。

 

ご相談の事例ではこの「のぞき見」の規制が適法な規制か否かが問題となります。

 

ア、 条例制定権の限界
憲法94条は「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」と定めています。
現在、条例制定にあたって主に問題とされることは、①事柄の性質上条例で定められない事項か否か、②既に法律の定めがある場合に、重複した規制をすることが「法律の範囲内」といえるか否か、③憲法の人権規定と適合するか否か、という点です。
相談事例では、特に②が問題になります。

イ、  「法律の範囲内(憲法94条)」の解釈
法律の規制と条例の規制が重複した場合のリーディングケースである徳島市公安条例事件判決(最大判昭和50年9月10日刑集29巻8号489頁)は、「条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾牴触があるかどうかによつてこれを決しなければならない。例えば、ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうるし、逆に、特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によつて前者の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同一の目的に出たものであつても、国の法令が必ずしもその規定によつて全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾牴触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえないのである。」旨判示し、「道路交通法77条1項4号は、同号に定める通行の形態又は方法による道路の特別使用行為等を警察署長の許可によつて個別的に解除されるべき一般的禁止事項とするかどうかにつき、各公安委員会が当該普通地方公共団体における道路又は交通の状況に応じてその裁量により決定するところにゆだね、これを全国的に一律に定めることを避けている」といったことから、「道路交通法77条及びこれに基づく公安委員会規則と条例の双方において重複して施されている場合においても、両者の内容に矛盾牴触するところがなく、条例における重複規制がそれ自体としての特別の意義と効果を有し、かつ、その合理性が肯定される場合には、道路交通法による規制は、このような条例による規制を否定、排除する趣旨ではなく、条例の規制の及ばない範囲においてのみ適用される趣旨のものと解するのが相当であり、したがつて、右条例をもつて道路交通法に違反するものとすることはできない。」と判断した 。
この判決は、道路交通法と徳島県公安条例の目的及び規制対象が共通することを前提にしつつも、道路交通法の規定の解釈から条例の有効性を導いたものである。軽犯罪法1条23号の窃視罪と迷惑行為防止条例違反ののぞき見規制との関係についても射程が及ぶと考えられます。

ウ、 軽犯罪法の窃視罪と大阪府迷惑防止条例第6条3項1号の趣旨目的について
前述のとおり、軽犯罪法1条23号は個人のプライバシー(性的プライバシーと私生活の平穏)という個人的法益を中心として、性的風紀の維持という社会的法益も保護法益とするものです。大阪府迷惑防止条例の同規定は性的プライバシーを保護するもので、趣旨・目的は重複しています。

エ、 規制対象について
規制対象も、これまで軽犯罪法1条23号で規制されていたものに上乗せ規制するものであり、重複しています。
大阪府迷惑防止条例第6条3項1号と軽犯罪法1条23号は、撮影場所について、条例は「住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」を規制し、軽犯罪法は「住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所」という同一場所の規制をしています。
そして、条例は、行為について「一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、姿態を見ること。」を規制し、軽犯罪法は「場所をひそかにのぞき見る」ことを規制している。
この点、軽犯罪法は「場所」を規制しているものであり、「人」を対象とする迷惑防止条例とは規制対象が異なるという説明も考えられます(伊藤・勝丸170頁等)。しかし、迷惑防止条例においては、人が不在の場合に軽犯罪法違反のみ成立するという意味で規制範囲が狭いというに過ぎず、重複は否定できません。
しかし、いずれも法令の趣旨目的が共通している上、軽犯罪法は人がいようがいまいが法定刑を変えていないことからこの説明には無理があると思われます。この理屈だと、例えば住居侵入罪について、人がいる場合には刑罰を加重する、といったことも可能になる(条例の罰則としての限界があるので罰金刑の引き上げだけになる)。規制対象は重複しています。

オ、 大阪府迷惑防止条例第6条3項1号による盗撮規制の合憲性について
このように、軽犯罪法1条23号と、 大阪府迷惑防止条例第6条3項1号と趣旨目的及び規制対象は重複していることから、軽犯罪法1条23号が規制する場所でののぞき見行為について規制をすることは、いわゆる上乗せ規制にあたります。
この点、軽犯罪法は、日常生活における卑近な道徳律に違反する軽い罪を拾うものであり、行政目的達成のために行政法規に別途必要最小限の罰則を定めることが考慮されていたことからすれば 、条例による規制であっても、地域による自主立法であることから、その地方の実情に応じた行政目的達成のための規制、といえるのであれば、必ずしも上乗せ規制が許されないわけではないと考えられます。
具体的には「公共の場所」「公共の乗り物」における性的盗撮行為等の規制は、性的盗撮行為等が公共の場所や公共の乗り物で行われることにより、単なる個人的法益に留まらず、(地域の実情に応じた)社会的法益が侵害されるといえるから、これを規制することは軽犯罪法とは抵触しないと考えられます 。
しかし、地方の実情に応じた行政目的達成の規制と言い難い、個人的法益のみを保護する条例までが許容されるかどうかは問題です。軽犯罪法4条が「この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。」としていることは軽視できません 。軽犯罪法は、国民の日常生活上の行為を規制することに対して、抑制的な立場を取っていると考えざるを得ません。
第2回国会参議院司法委員会第16号(昭和23年4月26日開催)の公聴会においても、團藤重光君委員が次のとおり発言しています。
「併しもう一つここで考えたいと思いますのは、地方自治法の改正第十四條の規定でありまして、これは地方團体の條例によつて二年以下の懲役、十万円以下の罰金、或いは拘留、科料といつたようなものを附けることができることになつており、いわばいわゆる白地法規と申しますか、いわゆる空白法規、内容を空にして一般的に委任する包括的委任の規定があるわけでありまして、若しこの軽犯罪法をここで規定して置かなければ、結局各地方團体で條例で以てこれと同じようなものを作る虞れがあるのではないか。そうしますと、これは私としては地方議会に不信任の意を表するわけでありませんが、併し一体どんなものができるか、相当心配するのでありまして、それよりもむしろ軽犯罪法という、いわばスタンダードになるところの法律を作つて置けば、これを國会で御審議を頂きまして、愼重な形で作り上げて行く。そうすれば又地方議会でいろいろのものができるといたしましても、これと重複することはできないわけでありまして、又重複しない分でも大体これが標準になるわけであります。そういう意味でやはりここで軽犯罪法案というものを、できればやはり成立させて、併しその内容については、やはり十分愼重なる御檢討を頂く。これが私は全体の行き方として、やはり一番いい行き方ではないかと思います。
甚だ纏りませんでした。簡單でございますが……。」 。
これは、軽犯罪法の立法過程において条例との重複を意識して、同法を成立させたら、条例は同法と重複しないような定めしかできないという趣旨です。「全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨である」ということを軽犯罪法から読み取ることは困難です。
そして、軽犯罪法の趣旨を離れても、私的空間におけるのぞき見は、地方によって偏在し、地方公共団体が独自に規制する必要が生ずるような事案ではないし(例えば、都市部については、公共の場所において人が集まりやすいから規制の必要性が高くなるといったことがありえるが、私的空間においてはこのような事情は存在しない)、私的空間について、地域の実情を理由に、法律よりも重く処罰する理由は見いだしがたいです。条例は、あくまで「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」なのである。「私人に対する暴力的不良行為」を規制するものではありません。
なお、条例制定当時の府議会の議論によれば、軽犯罪法が対象としている同じ行為に対して、軽犯罪法よりも重い刑罰を科するには、条例が軽犯罪法とは異なった目的を達成するために必要な場合でなければならないが、法律とは異なる条例の目的とは何かについて、府民に対する迷惑行為を防止するために刑法犯の周辺的な行為を、行為の反社会性に着目するのではなく、外形的に規制することにあるとしていたようです。この説明からも、軽犯罪法と異なる目的を達成するためといえない、私的空間におけるのぞき見行為の上乗せ規制を適法とみることは困難です。性的姿態等撮影罪が成立した際も、私的空間に対するのぞき見行為について軽犯罪法から独立させた規制を設けられなかったことからそのようにいえるでしょう。

なお、実際に、私的空間での盗撮行為について合憲性が争われた山形地判令和4年3月15日D1-Law.com判例体系〔283011010〕においても、【しかしながら、前記のとおり軽犯罪法立法時に条例による規制を制限することが期待されていたのだとしても、同法23号の窃視の罪の条文からすればそれは「のぞき見」についてであって盗撮についても条例による規制を制限することが期待されていたとは解されない。】とのぞき見行為を迷惑行為防止条例で取り締まることの合憲性については判断を避けるような判示がなされています。

これらのことを考えると、本件についても、軽犯罪法違反に留まるという主張は考えられます。

 

軽犯罪法

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039/

第一条左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

 

大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例

https://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00001067.html

(卑わいな行為の禁止)

第六条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。

3 何人も、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある人に対し、次に掲げる行為をしてはならない。

一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、姿態を見ること。

 

山形県迷惑行為防止条例

https://en3-jg.d1-law.com/yamagata-ken/d1w_reiki/mokuji_index.html

(卑わいな行為の禁止)
第3条

3 何人も、正当な理由がないのに、浴場、便所、更衣場その他人が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所において当該状態でいる人に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 当該状態でいる人の姿態をのぞき見し、又は写真機等を使用して撮影すること。

 

【参考裁判例】

 

徳島市公安条例事件判決(最大判昭和50年9月10日刑集29巻8号489頁)

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51070

 

山形地判令和4年3月15日D1-Law.com判例体系〔283011010〕

【前記の最高裁判決は、前記判示に続けて「特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によって前者の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同一の目的に出たものであつても、国の法令が必ずしもその規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾牴触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえないのである。」としており、前記のような、軽犯罪法23号の窃視の罪と山形県迷惑行為防止条例3条3項2号違反に対する罰則(同条例11条1項1号)との関係からすると、同罰則が軽犯罪法23号に矛盾抵触し、同法に違反するか否かは、同号が、条例によりその処罰範囲を拡張し、かつ、重く処罰することを許容する趣旨であるか否かによると解される。】

【しかしながら、前記のとおり軽犯罪法立法時に条例による規制を制限することが期待されていたのだとしても、同法23号の窃視の罪の条文からすればそれは「のぞき見」についてであって盗撮についても条例による規制を制限することが期待されていたとは解されない。また、前記のようなこれまでの同号の窃視の罪と迷惑行為防止条例の罰則との関係についての議論を踏まえても、撮影機器の性能の向上、デジタル化、インターネットの普及等もあって盗撮の問題が一層深刻化し、これらに対する適正な処罰が求められており、かつ、地方分権が推進されている中で、盗撮に対し拘留又は科料という軽い法定刑を定める同号の窃視の罪が、条例により処罰範囲を拡張し、かつ、重く処罰することを許容しない趣旨と解する合理的な理由は見出し難い。山形県迷惑行為防止条例第11条1項1号と同旨の罰則を適用した裁判例もある。よって、軽犯罪法23号の窃視の罪は、盗撮について、条例で処罰範囲を拡張し、かつ、重く処罰することを許容する趣旨のものであると解する。】

 

【参考文献】

 

伊藤榮樹原著・勝丸允啓改訂『軽犯罪法 新装第2版』(立花書房,2013年9月)171頁

【なお,いわゆる迷惑防止条例で盗撮行為を規制するものもあり,本号との関係が問題となり得るが,本号は,「場所」をのぞき見ることを規制しているのに対し,迷惑防止条例においては,人の「下着又は身体(姿態)」を撮影することを規制しておりのぞき見る(撮影する)対象が異なっていることからすれば, 1個の行為が両者の罪名に触れるような場合には,観念的競合の関係に立つと解する注6) 。】

 

坂田正史(札幌地方裁判所判事(研究会報告当時大阪高等裁判所判事))「特別法を巡る諸問題[大阪刑事実務研究会] 迷惑防止条例の罰則に関する問題について」(判例タイムズ2017年4月号)21-43頁

26頁

【脚注20 この罰則は、公共的性質の全くない自宅の便所等での盗撮も規制の対象とするものと解されるなど、 もっぱら個人的法益を保護法益とするものと解するのが自然であろう。ただし、迷惑防止条例の沿革や保護法益論などからすると、 このような罰則が迷惑防止条例の中で定められていることについては理論的にどのように整理すればよいのだろうか。また、法定刑の関係では、軽犯罪法上の窃視の罪(正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見る行為)の法定刑が拘留又は科料にとどまっていることとの関係は、 どのように説明されるのであろうか。】

 

軽犯罪法違反事件の弁護要領・総論(軽犯罪法、刑事弁護)