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薬院法律事務所

刑事弁護

軽犯罪法違反事件の弁護要領・第24回 軽犯罪法1条24号(軽犯罪法、刑事弁護)


2024年12月28日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は東京都に住んでいる30代女性です。婚活のためマッチングアプリを始めて、爽やかで高身長・高収入の男性とマッチングしました。最初は騙されているかもと警戒していたのですが、話しているうちに安心して、お付き合いをすることにしました。付き合って肉体関係も持って、半年間がたったのですが、結婚の話が出てこないので、「結婚はいつ頃にする」と訊いてみました。すると彼は「いや、来月結婚するから。まあだからあなたとは今日までね。」とこともなげに言われました。確かに「結婚する」という話はなかったですが、私は結婚することを目的にしていましたし、そうプロフィールにも書いていました。弁護士さんに相談したのですが、結婚するという約束の下で肉体関係を持ったわけでもないので婚約破棄ともいえず、既婚者が独身と偽っていたわけでもないので貞操権侵害ともいえないそうです。どうしても赦せないので、彼の結婚式の日に結婚式場に乗り込んで嫌みの一つでも言って帰りたいのですが、犯罪にならないでしょうか。

A、軽犯罪法1条24号違反の成立が考えられます。もっとも、被害届が出されるかどうか、あるいは立件されるかどうかはわかりません。

 

 

【解説】

 

本日は、軽犯罪法第1条第24号「公私の儀式に対して悪戯などでこれを妨害した者」について解説します。

その趣旨は、【社会生活上行われる儀式には、各種のものがあるが、これらの儀式を、厳粛に、または少なくとも、それにふさわしい雰囲気のうちに、円滑に遂行したいと考えることは、人間の自然な感情である。本号は、このように、社会の一般感情によって尊重されている儀式の平穏、円滑な遂行を保障しようとするものである。本号は、旧令二条九号(「祭事、祝儀又ハ其ノ行列二対シ悪戯又ハ妨害ヲ為シタル者」)を受け継いだものである。】(稲田輝明・木谷明『軽犯罪法』平野龍一ほか編『注解特別刑法7 風俗・軽犯罪法編〔第2版〕』(青林書院,1988年1月)112-113頁)とされているところです。

警察官向けの書籍などを見ると、告別式で故人のスキャンダルを暴露する行為などが該当事例として挙げられています。ご相談の事例では、発言の内容によっては名誉毀損罪の成立が認められることもあるでしょう。

 

軽犯罪法

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039/

第一条左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二十四 公私の儀式に対して悪戯などでこれを妨害した者

 

【参考文献】

 

井坂博『実務のための軽犯罪法解説』(東京法令出版,2018年3月)168頁

【被疑者は,令和0年0月08午後0時0分頃, 00県00市00町0番0号0000方で開催された甲野太郎の告別式の席上において,大声で同人のスキャンダルを暴露して大笑いするなどし, もって,儀式を妨害したものである。】

https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I028891969

 

軽犯罪法違反事件の弁護要領・総論(軽犯罪法、刑事弁護)