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薬院法律事務所

刑事弁護

軽犯罪法違反事件の弁護要領・第27回 軽犯罪法1条27号(軽犯罪法、刑事弁護)


2024年12月28日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は東京都内で暮らしている者です。先日、通勤のために駅の駐輪場に自転車を停めていたところ、帰宅時にゴミが入った袋が放り込まれていました。カゴの外に出して地面に置いたところ、警察官から呼び止められて持ち帰るように言われました。「私のものではないです」といったのですが、置いていったら軽犯罪法違反だといわれて渋々持ち帰って捨てました。私は被害者なのに理不尽ではないでしょうか。

A、軽犯罪法1条27号は「公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者」としており、これは、ゴミを投げ込まれたものが外に出したような場合ですら成立するものとされています。そのため、警察官の指摘は現行法ではその通りということになります。

 

 

【解説】

 

本日は、軽犯罪法第1条第27号「公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者」について解説します。

その趣旨は、「本号の立法趣旨は,公衆衛生の保持の見地から,汚物等をみだりに捨てることを禁止しようとするのであり, 警察犯処罰令第3条第10号(「檻二禽獣ノ死屍又ハ汚稿物ヲ棄郷シ又ハ之レカ取除ノ義務ヲ怠リタル者」)を受け継いだものであるが後にも触れるように「取除ノ義務」の部分は,取り入れられていない。(伊藤榮樹原著・勝丸允啓改訂『軽犯罪法 新装第2版』(立花書房,2013年9月)182頁)とされているところです。

本件については、そのため軽犯罪法1条27号違反が成立します。理不尽だとは思いますが、警察官としては「現場注意」をしたということでしょう。

 

軽犯罪法

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039/

第一条左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二十七 公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者

 

【参考文献】

 

井坂博『実務のための軽犯罪法解説』(東京法令出版,2018年3月)182頁

【Q5 前問の事案において,その汚廃物を発見した自転車の持ち主が,それを自転車の前カゴ内から取り出して駐輪場に置いて帰った場合,本号の罪は成立するか。
• 問3と同様であり,汚廃物を投入された者は,被害者であり,同情はできるが,その汚廃物については現に自己の管理下にある以上, これを適正に処理すべきであり,その管理権(管理義務ともいえる)を放棄し, 自転車の前カゴ内から取り出して駐輪場に移し置く行為は, 「公共の利益に反し汚廃物を棄てた」との要件に該当し,緊急避難にも当たらないので,本号の罪は成立する。これは,最初に自転車の前カゴに汚廃物を投棄した者に本号の罪が成立する場合であっても,同様である。なぜなら,自転車の持ち主が汚廃物を自転車ごと持ち去れば,汚廃物の駐輪場への影響が解消するのに,そうしないで, 自転車の前カゴ内から汚廃物を取り出して駐輪場に移し置く行為は,汚廃物の駐輪場への影響を,その態様を変えて持続させるものであり,いわば新たな法益を侵害する行為といえるので,本号の罪は成立する。】

https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I028891969

軽犯罪法違反事件の弁護要領・総論(軽犯罪法、刑事弁護)