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薬院法律事務所

刑事弁護

軽犯罪法違反事件の弁護要領・第30回 軽犯罪法1条30号(軽犯罪法、刑事弁護)


2024年12月28日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は東京都内で暮らしている男性です。大型犬を飼っているのですが、散歩に連れて行っているところ、最近トラブルが生じている近隣の男性とすれ違いました。私が挨拶をしたのに無視したので「挨拶くらい返していいだろう」と言ったところ、「あんたなんかに挨拶するわけないだろう」と返してきたので口論になりました。私は、相手の方が体格が大きく若いので、怖くなって、牽制するために連れていた犬のリードを離して「ほら行け」と声をかけました。ですが、犬は何もせずにじっとしていました。そこに110番通報でかけつけた警察が来たのですが、私の行為が軽犯罪法1条30号違反だといわれています。犬は何もしていないのですが、そうなるのでしょうか。

A、「けしかける」だけで軽犯罪法1条30号違反は成立します。もっとも、状況からすればわざわざ立件される案件ではないと思います。

 

 

【解説】

 

本日は、軽犯罪法第1条第30号「人畜に対して犬その他の動物をけしかけ、又は馬若しくは牛を驚かせて逃げ走らせた者」について解説します。

その趣旨は、「人畜に対して犬その他の動物をけしかけたり、牛馬を驚奔させる行為は、危険であり、社会の良俗にも反することであるので、これを禁圧しようとするものである。」(稲田輝明・木谷明『軽犯罪法』平野龍一ほか編『注解特別刑法7 風俗・軽犯罪法編〔第2版〕』(青林書院,1988年1月)138頁)とされているところです。

この犯罪は「けしかけ」ただけで成立します。状況からすれば正当防衛ともいえないので成立はするでしょうが、立件されるほどの事件ではないでしょう。

 

軽犯罪法

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039/

第一条左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
三十 人畜に対して犬その他の動物をけしかけ、又は馬若しくは牛を驚かせて逃げ走らせた者

 

【参考文献】

 

伊藤榮樹原著・勝丸允啓改訂『軽犯罪法 新装第2版』(立花書房,2013年9月)206頁

【禁止される行為は,けしかけることである。
「けしかける」とは,あおり立てて相手を攻撃するように仕向けることをいい,現実に攻撃がなされたかどうかは問わない。
なお,夜間侵入した盗犯等に犬をけしかけるような行為が正当防衛に当たるものと認められる場合があることはいうまでもない。】

https://tachibanashobo.co.jp/products/detail/3110

軽犯罪法違反事件の弁護要領・総論(軽犯罪法、刑事弁護)