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薬院法律事務所

刑事弁護

軽犯罪法違反事件の弁護要領・第32回 軽犯罪法1条32号(軽犯罪法、刑事弁護)


2024年12月29日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は東京都内で暮らしている男性です。先日、警察から連絡があり、中学生の息子が屋外駐輪場で無断駐輪を繰り返していたということを言われました。その駐輪場は、自転車を停める際に専用のロック装置に自転車の前輪を差し込み、精算機で料金を支払う仕組みとなっています。ロック装置にきちんと前輪を差し込まずに手前に停め、ロックを作動させない ようにして自転車をそのまま置いていたようです。駐輪場入口には「当駐輪場は有料です。許可なく無断駐車・無断侵入を禁止します」と明示されています。息子はどうなるのでしょうか。

A、軽犯罪法第1条第32号「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者」に該当します。家庭裁判所に記録が簡易送致されると思いますが、これだけであれば審判不開始で終わる可能性が高い案件だろうと思います。但し、常習性が高い場合には家庭裁判所の調査が入ると思いますので、まずは弁護士の面談相談を受けるべきでしょう。

 

 

【解説】

 

本日は、軽犯罪法第1条第32号「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者」について解説します。

その趣旨は、「本号は、立入禁止の場所や耕地の管理権を保護するとともに、耕作物等に対する窃盗や損壊行為を防止しようとするものである」(稲田輝明・木谷明『軽犯罪法』平野龍一ほか編『注解特別刑法7 風俗・軽犯罪法編〔第2版〕』(青林書院,1988年1月)148-149頁)とされているところです。もっとも、現在では立入禁止場所への侵入行為を広く規制する条文として活用されています。

駐輪場を不正利用するために屋外駐輪場に侵入したということですから、建造物侵入罪とならなくても、軽犯罪法違反にはなると考えられます。仮に屋内駐輪場であれば、建造物侵入罪が成立してより重い罪になっていたでしょう。軽犯罪法1条31号違反の成立も考えられます。

 

軽犯罪法

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039/

第一条左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
三十二 入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者

 

【参考文献】

 

伊藤榮樹原著・勝丸允啓改訂『軽犯罪法 新装第2版』(立花書房,2013年9月)224頁

【本号は, 刑法の住居侵人罪の規定に対し,補充関係にあるから,同罪が成立する場合には, 本号の適用はない( 注7,8)。】

https://tachibanashobo.co.jp/products/detail/3110

 

軽犯罪法違反事件の弁護要領・総論(軽犯罪法、刑事弁護)