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薬院法律事務所

刑事弁護

軽犯罪法違反事件の弁護要領・第34回 軽犯罪法1条34号(軽犯罪法、刑事弁護)


2024年12月30日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は東京都内で会社員をしている者です。フリマアプリで不要品を売っているのですが、警察本部の売店に行けば買える誰でも警察グッズ(ぬいぐるみ)を「レア 警察関係者しか買えません」と書いて定価より高く販売していました。実際のところは誰でも買えるのですが、そういった方がレア感が出て売れるかなと思ったからです。かなりの数を転売していたのですが、ある時フリマアプリが急に利用停止になり、心配しています。理由を運営に問い合わせたのですが、答えてくれません。私は何か悪いことをしたのでしょうか。

A、ご相談の内容だと景品表示法違反と、軽犯罪法1条34号違反が考えられます。もっとも、アプリ内での利用規約違反で停止されただけという可能性の方が高いと思います。

 

【解説】

 

本日は、軽犯罪法第1条第34号「公衆に対して物を販売し、若しくは頒布し、又は役務を提供するにあたり、人を欺き、又は誤解させるような事実を挙げて広告をした者」について解説します。

その趣旨は、「本号は,誇大広告.虚偽広告等の多数の人を蝙すこととなりやすい行為を禁止することとしたものであり,それが物の販売ないし有償による役務の提供に当たって行われる場合についてみれば詐欺罪の予備的行為を禁止しようとするものとみることもできる。」(伊藤榮樹原著・勝丸允啓改訂『軽犯罪法 新装第2版』(立花書房,2013年9月)260頁)とされているところです。

本件の場合は、本当は警察本部に行けば誰でも買える商品を「警察関係者しか買えない」と標記したことが利用規約違反、あるいは軽犯罪法1条34号の「誤解させるような事実」と判断された可能性はあります。景品表示法違反も考えられますが、「事業者」にあたらなければ適用されないでしょう。ただ、あまりに反復している場合には「事業者」とされることもあり得ると思います。

 

軽犯罪法

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039/

第一条左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
三十四 公衆に対して物を販売し、若しくは頒布し、又は役務を提供するにあたり、人を欺き、又は誤解させるような事実を挙げて広告をした者

 

不当景品類及び不当表示防止法

https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134

(定義)
第二条 この法律で「事業者」とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいい、当該事業を行う者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者は、次項及び第三十六条の規定の適用については、これを当該事業者とみなす。

(不当な表示の禁止)
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの

 

【参考文献】

 

法務省刑事局軽犯罪法研究会編著『軽犯罪法101問』(立花書房,1995年5月)211頁

【「人を欺く」とは、他人を錯誤に陥れ、虚偽の事実を真実と誤認させることをいい、「人を誤解させる」とは、当該行為によって他人を錯誤に陥らせること一般を意味する。しかし、いずれも「ような事実」が付加されているから、ともに客観的に見て他人が錯誤に陥りやすい事実を意味するのであり、語感の上で二つを並列したにすぎないと解される(伊藤二六六頁)。
「ような事実」とある以上、本号の罪が成立するためには、当該事実が、社会通念上、他人が錯誤に陥りやすい事実であり、かつ、行為者に当該事実自体についての認識があれば足り、行為者が人を欺岡し、又は、誤解させる意図を有したことは必要でないと解すべきである(伊藤二六七頁)。】

軽犯罪法違反事件の弁護要領・総論(軽犯罪法、刑事弁護)