軽犯罪法違反事件の弁護要領・第7回 軽犯罪法1条6号(軽犯罪法、刑事弁護)
2024年12月21日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は動画制作者です。先日、夜間に商店街でコスプレーヤーの撮影をしていたのですが、ある街灯の光が邪魔なので、電源スイッチを探して撮影時のみOFFにしていました。すると、警察官から職務質問を受けて、軽犯罪法1条6号違反と言われました。誰も通りかかっていない時間帯だったのですが、それでも罪になるのでしょうか。
A、軽犯罪法第1条第6号「六 正当な理由がなくて他人の標灯又は街路その他公衆の通行し、若しくは集合する場所に設けられた灯火を消した者」違反になります。もっとも、初犯で悪気がなかったということであれば、「現場注意」か「始末書」で終わる案件だと思います。
【解説】
本日は、軽犯罪法第1条第6号「六 正当な理由がなくて他人の標灯又は街路その他公衆の通行し、若しくは集合する場所に設けられた灯火を消した者」について解説します。
この条文は、他人の設置した街灯などを消す行為を禁止しています。
その趣旨は、【本号に規定する行為は、夜間における交通や集合の便利と安全を害するものであるから、これを処罰の対象としこの種公共の利益と安全を保護しようとするものである。】(野木新一・中野次雄・植松正『註釈軽犯罪法』(良書普及会,1949年2月)41頁)とされているところです。相談の事例では、問題なく成立するでしょう。
この条文のポイントは、「他人の標灯又は街路その他公衆の通行し、若しくは集合する場所に設けられた灯火」とあり、実は、個人所有の街灯であり、それを消した場合にでも軽犯罪法1条6号違反が成立するという点です(後掲参考文献)。
軽犯罪法
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039/
第一条左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
六 正当な理由がなくて他人の標灯又は街路その他公衆の通行し、若しくは集合する場所に設けられた灯火を消した者
【参考文献】
須賀正行『擬律判断・軽犯罪法【第二版】』(東京法令出版,2022年11月)143頁
【1想定問答
Q、Aは、 Y女に対し嫌がらせを行う目的で、自己所有・管理の街灯を消して路地を暗くした。
この場合、 Aはいかなる刑責を負うか。
A、Aが架設した街灯であったとしても、平素から多数人の通行の用に供される場所に設置されているのであるから、「公衆の通行する場所」に設けられた街灯に当たる。
消したことに正当な理由がなければ、その道路及び街灯ともにAの所有物であっても,軽犯罪法第1条第6号違反の罪の刑責を負う。】
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