逮捕留置中(逮捕後勾留前)の被疑者に、弁護士以外の者が面会することは可能か(刑事弁護)
2025年01月31日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、東京都に住む40代女性です。先ほど警察から連絡があり、21歳の息子が不同意わいせつ罪で現行犯逮捕されたといわれました。インターネットを見て弁護士さんを探したのですが、金曜日の夜のためかどこの事務所にも繋がらず、24時間対応という事務所でも電話代行の応答でいつ行ってくれるかわからないということでした。息子は発達障害があり、おそらくパニックになっていると思っているので、私が面会して安心させたいのですが、面会ができないのでしょうか。インターネットでは、勾留されるまでは弁護士さん以外は会えないとされているので心配しています。
A、原則として逮捕後勾留前は一般面会はできませんが、警察の裁量により面会が許可される場合があります。弁護人を手配することがもっとも適切だと思いますが、警察に交渉することは十分考えられます。
【解説】
以下はchaTGPT o1 proの解説です。
以下の内容は、日本の刑事手続法(刑事訴訟法)や関連法令に基づく一般的な解説となります。実際の可否や手続きは、事件の内容、捜査機関の方針、裁判所の判断などによって異なる場合がありますので、最終的には専門家(弁護士)にご確認ください。
1. 逮捕後から勾留までの一般的な流れ
- 逮捕(最大48時間)
逮捕後、警察は被疑者(容疑をかけられた人)を最大48時間以内に検察官へ送致(送検)するかどうかを判断します。 - 送検後、検察官の勾留請求判断(最大24時間)
送検後、検察官は被疑者を勾留する必要があるかどうかを判断し、裁判所に勾留請求するかを決めます。勾留請求をする場合、逮捕から通算して72時間以内に裁判官が勾留の可否を判断します。 - 勾留の決定
裁判所が勾留を認めると、最長10日間(延長でさらに最大10日)身柄を拘束されることとなります。
2. 「勾留前」に家族が面会できるのか
2-1. 法的根拠と原則
- 弁護士の接見交通権は刑事訴訟法第39条に定めがある
刑事訴訟法第39条では、逮捕・勾留されている被疑者・被告人は、いつでも弁護人と立会いなしで接見(面会)ややり取り(書類・物の授受)ができると定めています。これは「弁護士接見交通権」と呼ばれ、警察・検察は原則これを制限できません。 - 家族や友人が面会できるかどうかは法律上の“権利”としては明文がない
被疑者本人やその弁護士を除き、家族や友人による面会(接見)を認めるかどうかは、捜査機関(主に警察)の判断に委ねられる部分が大きいのが現状です。刑事訴訟法や「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下、刑事収容施設法)」では、勾留後の「被収容者」については一定の面会権の規定がありますが、**勾留前(警察留置段階)**では、手続上「証拠隠滅のおそれ」や「捜査への支障」を理由に制限されることが多いです。 - 逮捕後すぐの段階では家族面会は“認められることがかなり少ない”
特に性犯罪(わいせつ事件など)の場合、捜査機関が「共犯者や周囲と口裏合わせをする危険性」などを重視して、家族であっても面会を原則許可しないケースが一般的です。
2-2. 実務上の取り扱い
- 多くの警察署では、逮捕~勾留決定前(72時間以内)に家族面会を認めない運用がほとんど
法的には厳格に「絶対ダメ」と定めた条文があるわけではありませんが、実務慣行として捜査を優先するために認められないことが多いです。とりわけ性犯罪は被害者の保護・証拠保全の観点から、警察が家族との面会を厳しく制限する傾向にあります。 - 特別な事情がある場合も、捜査機関の裁量により許される可能性はゼロではない
例えば、重病・死亡の危険がある親族に会わせたい、被疑者自身が重篤な健康状態で医師の立会いが必要、といった“緊急性や特別の事情”が認められる場合に限り、警察官・検察官の判断で一時的に許可されるケースはあり得ます。ただし、そのハードルは高いのが現状です。 - 発達障害を有する被疑者の精神的ケアという観点からの面会も、実務上は困難が多い
医療職やカウンセラーの面談などが必要な場合も、まずは弁護士を通じて警察・検察に「適切な配慮」を求める形が多いです。家族が直接面会してサポートすることは、勾留前では厳しく制限されるのが実情です。
3. 発達障害がある場合の留意点
- 弁護士による早期接見が重要
発達障害によりパニックになりやすい特性や、コミュニケーション上の配慮が必要な場合は、一刻も早く弁護士を通じて捜査機関にその情報を伝えることがポイントです。逮捕直後であっても、弁護士ならば警察官の立会いなしで接見できるため、息子さんの心理的負担を和らげ、誤解を招く供述をしないようサポートすることが期待できます。 - 当番弁護士制度の利用
各都道府県の弁護士会では、逮捕直後に無料で1回接見に行ってくれる「当番弁護士制度」を実施しています。東京都の場合は「東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会」が共同で運営しており、休日や夜間でも連絡手段が用意されています。弁護士会に直接電話して当番弁護士の派遣を依頼するのが確実です。 - 弁護士が家族の面会許可を働きかける
勾留前は難しくても、勾留請求が行われて勾留が開始された後に「接見禁止(※)」が付されなければ、家族による面会は可能になる場合があります。ただし、性犯罪の場合は接見禁止が付くことも少なくないため、どのように捜査機関や裁判所に働きかけるか、弁護士と十分に相談する必要があります。
※「接見禁止」が付されると、弁護士以外の面会や手紙のやり取りが一切認められなくなります。ただし、この処分についても弁護士が準抗告などの手続きをとることで解除を求める可能性はあります。
4. まとめ
- 逮捕~勾留決定前の72時間は、家族が面会することは原則として困難
- 性犯罪事件では特に証拠隠滅や口裏合わせを懸念して、捜査機関が許可を出さないことが一般的。
- 法律上、家族面会を「絶対に禁止する」という明文はないが、実務では事実上認められないのが通常。
- 弁護士ならば逮捕直後でも接見可能
- 刑事訴訟法第39条の規定により、弁護士は警察官の立会いなしで面会できる。
- 発達障害への配慮が必要な点を、弁護士を通じて早急に捜査機関に伝えることが大切。
- 勾留後は面会できる可能性が出るが、接見禁止が付される場合もある
- 勾留が決定されても、裁判官が接見禁止を付けた場合は家族面会ができない。
- それを解除してもらうには、弁護士を通じた法的手続きが必要。
- まずは当番弁護士への連絡を
- 金曜日の夜間や土日でも、弁護士会が当番弁護士を派遣してくれる可能性が高い。
- 直接弁護士会に電話すれば、電話代行の事務所を介さず手配してくれるケースが多い。
最終的なポイント
- 勾留前(逮捕後72時間以内)は、家族による面会は“ほぼ不可能”だが例外はゼロではない
ただし、極めて例外的な事情でない限り、性犯罪事案での面会許可は見込めないのが実務です。 - 逮捕直後に息子さんに会って安心させたい気持ちは痛いほど理解できますが、まずは弁護士接見が最優先
息子さんの発達障害の特性やパニックへの配慮を一刻も早く捜査機関に訴え、適切な取り調べ環境を確保するためにも、弁護士の力を借りることが不可欠です。 - 当番弁護士制度の利用を検討し、逮捕後72時間以内に弁護士から情報を入手し、今後の方針を一緒に考えてください。
以上が「勾留前に家族が面会できるのか」という点に関する法的根拠および実務の概要です。もしご不安や疑問があれば、早急に弁護士会や当番弁護士制度に連絡することをおすすめいたします。弁護士の接見が実現すれば、息子さんの様子についても情報が得られ、今後の進め方について具体的な助言を得ることができます。どうか少しでも状況が好転するよう、お力になれれば幸いです。
刑事訴訟法
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131#Mp-Pa_1-Ch_8
第八十条 勾留されている被告人は、第三十九条第一項に規定する者以外の者と、法令の範囲内で、接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。勾引状により刑事施設に留置されている被告人も、同様である。
第二百七条 前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
被留置者の留置に関する規則
https://laws.e-gov.go.jp/law/419M60400000011
(弁護人等以外の者との外部交通に関する意見聴取)
第二十四条 留置主任官は、被留置者に対し弁護人等以外の者から面会の申出があった場合において刑事訴訟法の定めるところにより面会が許されるかどうか又は被留置者と弁護人等以外の者との間で信書を発受すること若しくは被留置者がその作成した文書図画を弁護人等以外の者に交付することが同法の定めるところにより許されるかどうかについて、捜査主任官の意見を聴くものとする。
【参考文献】
林眞琴ほか『逐条解説刑事収容施設法〔第3版〕』(有斐閣,2017年11月)540頁
【11) 弁護人等以外の者との接見交通は,被勾留者,勾引状により留置されている者,鑑定のため留置されている者に保障されている(刑訴80• 207 • 167 V • 224 Il) が,被逮捕者には保障されていない。】
https://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641018457
警視庁刑事部刑事総務課編『実務(40) 対話式質疑回答 刑事訴訟法』(警視庁刑事部,2019年3月)
16頁
【〔事例3〕捜査機関が、逮捕留置中の被疑者と弁護人等以外の者との接見を拒否することの可否】
20頁
【[A刑事] そうしますと、逮捕留置中の被疑者に対して絶対に弁護人等以外の者との接見を許さないということなんですね。
[警部補]絶対に許さないというわけではなく、「捜査に支障がない」などの理由により、法令の範囲内で捜査主任官が必要と認めるときに接見を許すことは違法ではないよ。
[A刑事] つまり、今回の場合、母親と接見させることによって共犯者へ通謀されるおそれや証拠隠滅のおそれがなければ接見を許してもよいのですね。
[警部補]そのとおりだ。ただ、それが便宜供与と捉えられないようにしないといけないよ。それと、再逮捕によって、新たに逮捕留置中の状態になった場合も同様だからね。今回の場合、甲は単独犯で証拠も押収しているので接見を許そうと思うから、課長と代理に報告した後、私から留置係に連絡しておくよ。】
髙森高徳著・澁谷博之補訂『Q&A実例逮捕・勾留の実際〔第2版補訂〕』(立花書房,2022年5月)
211頁
【105 逮捕中の接見
[問]逮捕中の被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者又はそれら以外の者と接見することができるか。また、捜査機関が接見の日時を指定することはできるか。】
212頁
【次に、逮捕中の被疑者と弁護人等以外の者との接見については、これを認める規定がない上、刑訴法209 条は同法80 条を準用していない。また、同法81 条も、逮捕中の被疑者を接見交通制限の対象としていない。これは、逮捕中の被疑者については、48 時間という限られた時間内に必要な捜査を遂げなければならず、弁護人等以外の者との接見交通までも認めなければならないとすると捜在に著しい支障を来すおそれがあることから、弁護人等以外の者との接見交通を権利として認めなかったものと考えられる。したがって、逮捕中の被疑者については、弁護人等以外の者との接見交通権はないといわざるを得ない。もっとも、人権の制約は必要最小限度にとどめなければならないから、捜査に支障がなければ、捜査機関の裁量により、接見を許すことはできる。被留置者の留置に関する規則24 条は、「留置主任官は、被留置者に対し弁護人等以外の者から面会等の申出があった場合に面会等が許されるかどうかについて、捜査主任官の意見を聴く」旨規定しているが、この規定は逮捕中の被疑者の接見にも適用される。】
https://www.tachibanashobo.co.jp/products/detail/3773