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薬院法律事務所

刑事弁護

違法薬物自己使用事件、否認しながら一部執行猶予判決を得られるか


2026年02月23日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

Q、私は、東京都に住む30代男性です。先日、大麻の自己使用で捕まってしまい、現在保釈されています。執行猶予中の犯行ということで実刑は間違いないところなのですが、どうしても刑務所には行きたくないので友人が吸った副流煙で尿鑑定が陽性になったと思うと嘘をついています。ただ、弁護士からは実刑になる可能性が高いということで、仮に実刑になった場合は刑務所に行く期間を少しでも短くしたいので、一部執行猶予をつけてもらいたいです。どうすればいいでしょうか。

A、法律上は、否認事件でも一部執行猶予付判決は可能ですが、現実的には困難です。弁護人と良く協議をされて方針を検討されるべきだと思います。

 

【解説】

 

平成25年の法改正で、「刑の一部執行猶予」という制度が設けられました。刑の一部執行猶予制度は、いわゆる初入者等(刑務所に服役したことがない者、あるいは刑務所に服役したことがあっても前刑の執行終了後5年以上経過した者】と薬物使用等の罪を犯した累犯者が対象となります。実刑判決の一種ですが、刑務所内で服役する期間が減るため、希望される方もいます。通常保護観察が付くことから全部実刑に比べて楽ということではないのですが、再犯防止に一定の効果はあるものと考えています。もっとも、どんな場合にでも適用されるものではなく、相談のような否認事件の場合には基本的に不可能と考えるべきでしょう。

 

※刑法

(刑の一部の執行猶予)
第二十七条の二 次に掲げる者が三年以下の拘禁刑の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、一年以上五年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができる。
一 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者
二 前に拘禁刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
三 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者

https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045#Mp-Pa_1-Ch_4-At_27_2

 

【参考文献】

 

白井智之ほか「刑法等の一部を改正する法律及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律について」(法曹時報68巻1号)25-102頁

95-96頁

【(3)必要性及び相当性
薬物使用者に対する刑の一部の執行猶予制度においても,初入者に対する刑の一部の執行猶予制度と同様に,被告人の刑事責任に見合った刑を科すという観点及び被告人の再犯防止・改善更生を図る特別予防の観点から,刑の一部の執行猶予の言渡しの必要性及び相当性の要件が判断されることとなるところ,薬物法の趣旨を踏まえ,その必要性については, 「刑事施設における処遇に引き続き社会内においても規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが,再び犯罪をすることを防ぐために必要」であると認められることが要件である。
具体的には,例えば,
(略)
③不合理な弁解によって犯行自体を否認し,犯した罪に対する反省・悔悟の情を示さず,更生の意欲が認められないことや,犯行当時所属していた暴力団に今後も所属し続ける旨を述べるなど,被告人において,保護観察の指導監督に服さないことが見込まれることから,刑の一部の執行猶予の相当性がないとされる例
(略)
などが考えられる】

 

大阪刑事実務研究会「刑の一部執行猶予制度に関する実証的研究」(判例タイムズ2019年4月号)5-19頁

【保護観察の枠組みに従わないことを推認させる事情,すなわち,①被告人が暴力団等の反社会的勢力に所属するなどしていること,②罪と向き合っていないこと (否認又は不合理な弁解〔違法収集証拠の主張等のうち同様の事情が認められるものを含む〕をした,保釈中に逃走したなど),③過去の保護観察において指導等に従わなかったこと (受講態度が不良であった,保護観察中に無断転居した,更生保護施設から逃走した,出頭を拒否したなど)について言及した裁判例については, そのほぼすべてにおいて一部執行猶予が否定されており, これらの事情はいずれも一部執行猶予を強く否定する事情といえる。】