遺産分割も遺留分減殺請求の対象になる?
2019年04月16日一般民事
この最高裁判例ですが、家庭の法と裁判19号のコメントからすれば、遺産分割で一部の相続人に法定相続分より多く財産を取得させた場合も、遺留分減殺請求の対象になりそうです。
そうすると、遺留分で争いがある事案では,過去の遺産分割協議まで視野に入れる必要が生じてくると思います。
ちょっと文献を調べましたが、相続分の譲渡が遺留分減殺請求の対象になるかどうかという問題を指摘している文献はありましたが(埼玉弁護士会『遺留分の法律と実務(第2次改訂版)』(ぎょうせい,2018年5月)91頁,遺産分割が遺留分減殺請求対象になるという文献は見当たりませんでした。
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「(4)遺産分割の遡及効との関係
遺産の分割は相続開始の時に遡ってその効力を生じ, これによって相続分の譲渡人は相続開始時から相続財産を取得しなかったことになるから当該譲渡人から譲受人に対する相続持分の贈与があったとはいえないこととなるのではないかという問題もある。
確かに。相続分の譲受人は,民法909条に定める遺産分割の遡及効の適用を受ける地位をも承継しているから, その点のみを根拠に形式論理的に考えれば上記のような考え方も成立しないではない。しかし,現行民法においては909条ただし書が,遺産分割の遡及効は第三者に対抗できないと規定し, 911条ないし913条は,各共同相続人は他の共同相続人に対し担保責任を負うと規定していること等から法律の定める遡及効は擬制にすぎず, 遺産分割の遡及効は現実に遺産共有状態が存したという事実までもなかったとするものではないと考えられる。
また、相続分の譲渡と類似の機能を有する相続放棄(民法938条)は,絶対的遡及効が認められているが, これは,家庭裁判所への申述等厳格な要式行為であり,二当事者の合意だけで可能な,公示手段もない相続分の譲渡がそのような強い効果を有するとも考え難い。
少なくとも本件のように,相続分の譲渡によってYが財産上の利益を得ている場合,遺留分の算定に当たってこれを考慮すべきであるのは遺留分制度の趣旨にかなうものであり, このような場合にまで遡及効によって上記利益の移転がないと擬制することは相当でないであろう。
3 本判決は,以上の議論状況の下で, 共同相続人間での相続分の譲渡について民法903条1項の特別受益としての「贈与」に当たり得ることを示したものである。同項の「贈与」に当たることを示したにとどまるのであって, 当然に「婚姻、養子縁組,生計の資本」としての贈与かどうかは, なお個々の事案で検討されなければならないであろう。もっとも,相続分を譲渡した場合には多くの場合は生計の資本といってよい場合が多いと思われる。」
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88060
共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は,譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き,上記譲渡をした者の相続において,民法903条1項に規定する「贈与」に当たる。