酒気帯び運転の自転車による交通事故、「重過失致死傷」といわれているという相談
2026年02月09日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、東京都に住む公務員男性です。先日自動車の酒気帯び運転で歩行者とぶつかってケガをさせてしまいました。警察からは酒気帯び運転と重過失致傷といわれていますが、罰金はまだしも公判請求をされてしまった場合には拘禁刑になってしまい確実に失職します。
A、酒気帯び運転の一事をもって重過失があるとはいえないでしょう。危険性の程度が問題になると考えられますので、詳しい弁護士に面談相談することをお勧めします。
【解説】
現在の道路交通法では、自転車の酒気帯び運転は自動車の酒気帯び運転と同一の法定刑とされています。しかしながら、酒気帯び運転をして事故を起こしたからただちに重過失と認められるものではないでしょう。前例は把握していませんが、酒気帯びの数値も重要になるでしょうし、スピードや無灯火だったかなどほかの事情も総合考慮しての判断になると思います。弁護人に依頼して、擬律判断について意見書を提出する、示談交渉をするといった弁護活動をすることが大事でしょう。なお、自転車事故と重過失傷害の成否については、福嶋斉「自転車事故-過失傷害と重過失傷害の分かれ道」(警察公論2018年3月号)が高裁判例を複数掲載しており参考になります。
※刑法
(過失傷害)
第二百九条 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
(過失致死)
第二百十条 過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。
(業務上過失致死傷等)
第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045#Mp-Pa_2-Ch_28-At_209
【参考文献】
髙森高徳『Q&A実例捜査における事実認定の実際〔第2版〕』(立花書房,2014年4月)143頁
【これらは、注意義務違反の程度というよりは、行為の危険性が判断基準となっているように思われる。すなわち、上記各事案の行為は、人の死亡という重大な結果を招来する危険性の高い行為であり、行為に当たってはより注意深さが要求されるが故にこれに違反したときは著しい注意義務違反とされるのである。したがって、実務上、重過失か否かは、人の死という重大な結果を招来する危険性の有無を基淮に判断すればよい。】
https://cir.nii.ac.jp/crid/1971712334700080288
加藤隆義「交通捜査のあれこれ 第5回自転車による事故における重過失の考え方」捜査研究2023年10月号(877号)
【平たくいってしまえば、定型的に結果発生の危険性が極めて高いので、行為自体がいけない(前記赤・黄色信号無視・看過、無灯火、一停無視等々)、「してはならない」差し控えなくてはいけなかった事案の場合は重過失、そうでない、行為自体「してはならない」わけではなく、行為をするうえで安全確認を怠った事案の場合は単純過失というのが、区分けが比較的明確であり、判断の拠り所にはなるのではないかと思います。】
https://www.tokyo-horei.co.jp/magazine/sousakenkyu/202310/


