酔っぱらった相手から財布を盗んで「昏睡強盗」といわれているという相談
2026年02月02日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、福岡市に住む30代男性です。先日、相席屋で知り合った女性と意気投合して一緒に二軒目に行ったのですが、途中で女性がお店のなかで眠り込んでしまいました。私が料金を払ってお店を出たのですが、深く眠り込んでいるのでこっそりハンドバックの中を漁ったら財布の中に現金がたくさん入っていました。夜中だし顔もわからないのでバレないだろうと思って現金だけ抜いて女性を置いて帰ったのですが、後日警察が自宅に家宅捜索にきました。警察から「昏睡強盗」という重い罪だと責められています。
A、昏睡強盗については、昏酔させる行為の時点で財物奪取の意思を有することが必要です。逮捕される可能性も高い重大な犯罪ですので、早急に弁護士の面談相談をして、計画的な犯行ではないことを主張すべき事案でしょう。黙秘するという選択肢もありますが、いずれにしても弁護人との協議が必要です。
【解説】
酔っぱらった相手から財布を盗るという犯行はしばしばあります。これは、単に眠り込んでいる人から財布を奪ったということであれば「仮睡盗」として刑法235条の窃盗罪になるのですが、最初から財物を奪う目的で昏睡させた場合には、昏睡強盗として罪が格段に重くなります。睡眠薬を相手に飲ませたなどといった計画的事案であれば昏睡強盗罪として判断されやすいですが、単に相手が酒で酔いつぶれただけであれば昏睡強盗罪にならないでしょう。虚偽自白をしないように、弁護士の面談相談をお勧めします。
※刑法
(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
(強盗)
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期拘禁刑に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
(昏酔強盗)
第二百三十九条 人を昏こん酔させてその財物を盗取した者は、強盗として論ずる。
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045#Mp-Pa_2-Ch_36
【参考文献】
前田雅英ほか編『条解刑法〔第5版〕』(弘文堂,2025年6月)783-784頁
【2) 昏酔 「昏酔させる」とは,一時的又は継続的に,相手方に意識喪失その他意識又は運動機能の障害を生じさせて,財物に対する有効な支配を及ぼし得ない状態に陥らせることをいう。典型的には失神させたり睡眠状態に陥らせる場合がこれに当たるが,意識はあっても身体的機能を麻溥させる場合も含むと解される。昏酔させる方法は,薬物の使用 麻酔薬の施用等制限はないが,相手方を殴打して昏倒させるような行為は,強盗罪(236)の手段にほかならない。また,薬物を施用する場合でも,相手の腕をつかんで無理やり注射したときは強盗における暴行に当たり得る(注釈(6)118,大コンメ3版⑫519) 。】
松原芳博『刑法各論 第2版』(日本評論社,2021年3月)256頁
【昏酔させるとは、睡眠薬、麻酔薬、アルコールを摂取させるなどして、意識作用に障碍を生じさせることをいう。意識を喪失させる場合に限られない(東京高判昭和49年5月10日東時25巻5号37頁)。
本罪の重罰の理由は、人を昏酔させるという、人の生理的機能に対する侵害・危険を含んだ手段を用いて障碍を克服し、財物を奪取するところにある。
それゆえ、昏酔は、本罪の防止すべき害悪の一部をなす「中間結果」であって、行為者によって惹起されることを要する。また、本罪の成立には昏酔させる行為の時点で財物奪取の意思を有することが必要であり、他の目的で昏酔させた後に奪取意思を生じて財物を奪った場合には窃盗罪となる。】
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8510.html


