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薬院法律事務所

刑事弁護

酔っ払って飲食店の格子戸を壊して建造物損壊罪とされているという相談


2026年02月25日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

Q、私は、福岡市に住む男性です。先日、酔っ払って飲食店の人と揉めてしまい、玄関の格子戸を蹴破ってしまいました。警察が来て逮捕されたのですが、3日で釈放されています。現在在宅捜査中なのですが、お店の人は絶対に示談に応じないということでお話はできていません。警察からは「建造物損壊罪」といわれていますが、調べると罰金刑はないそうです。仕事柄、拘禁刑になると困るのですが、なんとかならないでしょうか。

A、弁護人をつけて示談交渉について努力することとあわせて、情状をできるだけ良くすること、弁護人から警察や検察に対して「器物損壊罪」に留まる旨の意見書を出すことで、罰金刑で終結することを目指すことが考えられます。

 

【解説】

 

玄関のドアが「建造物」にあたるか、それとも「器物」に留まるかは事案によります。法定刑が異なり、建造物損壊罪には罰金刑がないという特徴もあります。玄関ドアを「建造物」とした最高裁判例もありますので、事案に応じた分析が必要になるところです。

 

※刑法

(建造物等損壊及び同致死傷)
第二百六十条 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の拘禁刑に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
(器物損壊等)
第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045#Mp-Pa_2-Ch_40-At_260

 

※最決平成19年3月20日刑集 第61巻2号66頁

判示事項
1 建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かの判断基準
2 住居の玄関ドアが建造物損壊罪の客体に当たるとされた事例

裁判要旨
1 建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かは,当該物と建造物との接合の程度のほか,当該物の建造物における機能上の重要性をも総合考慮して決すべきである。
2 住居の玄関ドアとして,外壁と接続し,外界とのしゃ断,防犯,防風,防音等の重要な役割を果たしている物(判文参照)は,適切な工具を使用すれば損壊せずに取り外しが可能であるとしても,建造物損壊罪の客体に当たる。

 

https://www.courts.go.jp/hanrei/34384/detail2/index.html

 

【参考文献】

 

西田典之ほか編『注釈刑法 第4巻 各論(3) §§235~264』(有斐閣,2021年12月)603-604頁

【上記判例は,先に見た社会的現実からして,基本的に正当といえよう(山ロ・各357頁,前田・各315頁など)。ただし,「接合の程度」と「機能上の重要性」をどう「総合考慮」するのか,両者の関係に不分明さが残る。敷術するに,まず,壁,扉,柱,屋根といった前述の建造物の定義そのものに関わる部分については,取り外し可能性の如何にかかわらず,建造物の構成部分とすべきである。これらの物は,建造物を建造物ならしめる本質的な要素であり,その損壊は,正しく建造物に対する侵害に他ならない。たとえば「はめ殺し」の壁面ガラス(前掲東京高判昭55• 6 • 19) も,壁に準ずるものと解される。だが,スライド式のガラス窓やサッシ枠に取り付けられた雨戸等は,動かせるので壁に準ずるとは考えがたく,建造物の定義それ自体に関わる物とはいえず,独立した器物と見るしかない。そして, これら以外の物については,建造物と附合しているか,そこから取り外すことが不可能となっているかを基準とすべきである。建造物の定義上本質的な構成要素ではない物は,取り外しが不可能となることにより,建造物から独立した物たる性質を失ってその一部となるからである(井上宏「判批」研修555号0994)34頁以下,今井ほか・各284頁〔島田聡一郎〕参照)。】(島田聡一郎〔古川伸彦補訂〕)

https://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641017849

 

吉田誠治『新版第2版 記載例中心 事件送致の手引』(東京法令出版,2022年5月)633頁

【器物損壊罪も財産犯であるので,被害額の多寡及び被害の内容(被害者が大切にしていた,例えば.記念写真のような物については,財産的価格のみでその価値を計ることはできない。).被害回復(被害弁償)の有無.被害者の処罰意思の有無.程度が重要な情状となるが,この種事件では.例えば飲食店の中で暴れて店内の器物を損壊した場合のように,財産犯としての側面のほかに,粗暴犯的な面を併せ有する事案もあるので,事案によっては,犯行の動機.犯行の手段・方法.被害者等の関係者に与えた影響等も情状として考慮する必要がある。】