load

薬院法律事務所

刑事弁護

駐車場内での酒気帯び運転が道路交通法違反になるか否かの基準について(ChatGPT4.5作成)


2025年05月05日刑事弁護

承知しました。道路交通法における駐車場内での酒気帯び運転の違反該当性について、私有地・公共の駐車場それぞれを論じ、刑法や行政処分との関連も含め、弁護士向けに5000〜10000字で解説する調査を開始します。
調査が完了次第、詳細な記事としてご報告いたします。

駐車場内での酒気帯び運転と道路交通法の適用可否

道路交通法における「道路」の定義と適用範囲

道路交通法の適用対象となる「道路」は、同法第2条第1号に定義されています。そこでは 「道路法(昭和27年法律第180号)第二条第一項に規定する道路、道路運送法(昭和26年法律第183号)第二条第八項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所」 と規定されています。簡潔に言えば、公道だけでなく、不特定多数の人や車が自由に通行できる場所も含まれるということです。この「一般交通の用に供するその他の場所」に該当するか否かが、私有地内の駐車場で道路交通法上の違反(酒気帯び運転など)が成立するかどうかを左右します。

この判断にあたっては、判例・実務上いくつかの要素が考慮されています。例えば、当該場所に道路と同様の外観・構造があるか、通行の客観性・継続性・反復性が認められるか、場所の公開性(誰でも立ち入り・通行しうるか)や、その場所が交通経路としての機能を果たしているか、といった点です。裏を返せば、単に「物理的に車が通り抜けできる」というだけでは足りず、社会通念上その場所が一般の車両や歩行者によって交通の用に供されているかどうかが重要です。

私有地の駐車場における道路該当性:一般客利用の駐車場 vs. 関係者限定の駐車場

まず、私有地内であっても不特定多数の利用に供されている駐車場であれば、「一般交通の用に供する場所」として道路交通法上の「道路」に該当しうることは判例・実務で明らかにされています。実務的にも、「私道や私有地でも、不特定多数の通行がある場所であれば飲酒運転(酒気帯び運転)は成立します」という指摘があり、警察もそのような認識で取締りを行っています。

典型例として、商業施設の駐車場(ショッピングモール、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等)があります。これらは私有地ではありますが、買い物客など不特定多数の車両が出入りします。そのため、判例上もしばしば「道路」に該当すると認定されています。例えば、コンビニエンスストアの来客用駐車場について、大阪高等裁判所平成14年10月23日判決は、店舗を訪れる不特定多数の車両が利用する駐車場の一部は道路交通法上の道路に当たると判示し、そこでの酒気帯び運転の成立を認めました。同様に、東京高等裁判所平成13年6月12日判決でも、コンビニの駐車場が道路に該当するとして報告義務違反(当て逃げ)の成立を認めています。

他方で、利用状況の証明が不十分な場合や、その駐車場への出入りが必ずしも一般に開放されていると言えない場合には、「道路」との認定が否定された例もあります。東京高等裁判所平成12年10月31日判決では、コンビニ駐車場の利用状況が明らかでないとして、そこが道路交通法上の道路に当たるとは認められないと判断し、酒気帯び運転罪の成立を否定しました(もっとも、この事案では「その駐車場に入る直前に公道上で酒気帯び運転をしていた」との予備的訴因が追加され、公訴事実の同一性が認められるとして、そちらで有罪認定されています。これは、駐車場内が道路にあたるか争いがある場合に、公道上の運転も念のため訴因として主張された例です)。

また、月極駐車場(契約者専用駐車場)のように、利用者が特定の者に限定され一般の車両の出入りが想定されない場所は、通常「道路」には当たりません。東京高等裁判所平成14年10月21日判決は、月極駐車場について道路交通法上の道路ではないと判断しています。このような場所は物理的には車両の通行が可能でも、契約者など限られた者しか利用しない閉鎖的な空間であるため、「不特定多数が自由に通行できる場所」とは評価されないわけです。例えば企業の敷地内や工場構内の私道も同様で、外部の一般車両の立ち入りが制限されていれば道路交通法の「道路」には該当しません(実際、製鉄所構内の通路について道路に当たらないとした判例もあります)。

以上を総括すると、私有地内の駐車場であっても一般に開放された形で不特定多数が利用できる場合には道路交通法上の「道路」とみなされ、酒気帯び運転禁止規定(65条)の適用対象となります。一方、関係者以外立ち入りできないような場所や、利用者が特定少数に限られる場所では「道路」には該当せず、同法の規制外となります。実務上は、警察・検察は駐車場の管理形態や出入りの状況(入口にゲートや許可証の有無、誰でも利用できるか等)を調査し、それを根拠に道路該当性を主張・立証します。弁護側は、物理的構造や利用実態から「一般交通の用に供されていない」ことを示し、道路外であることを争点化することになります。実際、「事実上通り抜けができる」というだけでは道路と評価するには不十分であり、その場所が社会通念上公衆の通行に供されていたか否かが決め手となります。例えば、防犯カメラ映像や利用者の証言などから、日常的に不特定多数の車が出入りしていたことが立証できれば有罪方向に働きますし、逆に利用実態が乏しければ先述の平成12年高裁判決のように無罪となり得ます。

なお、駐車場の中でも「通路部分」と「駐車スペース部分」で法律上の評価が分かれる可能性がある点にも触れておきます。判例上、駐車マス(駐車枠線で区切られ車両を停止させる場所)は車両を駐車するための場所であって「通行の用」に供される場所ではないため、道路には当たらないが、その間をつなぐ通路部分は車両が通行する経路であるため道路に当たる、という区別も示されています。東京高裁平成17年5月25日判決では、コンビニ駐車場内の通路部分は道路交通法上の道路に該当するとしつつ、車を停める区画部分は該当しないと認定しました。そして、同事案では通路部分を走行中に発生した事故ではなく、駐車区画に後退侵入した際の事故だったことから、「道路(通路部分)上の交通に起因した事故ではない」として、道交法上の救護・報告義務違反の成立を否定しています。このように、一つの駐車場内でも場所ごとに法律上の評価が分かれ、適用結果が変わる点には注意が必要です。

公共の駐車場における道路該当性:パーキングエリア・市営駐車場等

次に、公共の駐車場の場合です。高速道路のサービスエリア・パーキングエリア、道の駅の駐車場、市営・県営の公共駐車場などは、一見すると「公の施設」なので当然に道路交通法が適用されるようにも思われます。しかし、ここでも鍵となるのは利用形態です。結論としては、これら公共の駐車場も一般の交通に供されているか否かで判断されます。もっとも、公共の駐車施設は通常だれでも利用できるよう開放されているため、実務上は道路と認定されるケースが多いといえます。

高速道路のサービスエリア・PAの場合

高速道路の休憩施設であるサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)は、高速道路利用者であれば誰でも立ち寄れるもので、24時間多数の車両が出入りします。高速道路自体は道路運送法上の「自動車道」に該当し道路交通法の適用範囲ですから、その延長であるSA・PA構内も基本的には「一般交通の用に供する場所」として扱われます。実務的にも、高速道路のPA内で飲酒運転をした場合は道路交通法違反(酒気帯び運転)として検挙されており、「高速道路のPAだから適用外」とされた例は見当たりません。これはSA・PAが高速道路利用者全般に開放された施設であり、事実上も公道と一体的に機能しているためです(実際、PA内の走行はそのまま本線の走行に接続し、公道走行と連続しています)。したがって、高速道路の休憩施設内での運転行為は道路交通法の規制対象と考えて差し支えありません。

市営・公営の駐車場の場合

一方、市営駐車場や公営の無料駐車場など、行政が設置した駐車施設については注意が必要です。昭和46年の最高裁判所判例(最二小決昭46・10・27)は、神奈川県が設置した無料駐車場のケースで重要な判断を示しています。その駐車場は公道に面し舗装もされた広場でしたが、東西に駐車枠線が引かれ、全体として車を駐めるための場所と認められる構造になっていました。最高裁は、この事案において**「駐車場中央の通路部分も駐車場の一部に過ぎず、道路交通法上の道路と解すべきではない」と判断しました。さらに、付近のホテル利用客等がその駐車場内をたまたま通行することがあっても、それだけで一般交通の用に供する場所になるわけではないとも述べています。要するに、公営で誰でも利用可能な駐車場であっても、それが純粋に駐車の目的で設けられた空間**であり、通り抜け道路や広場として機能していない場合には「道路」とみなさないという判断です。

この最高裁判例は、公営駐車場における道路該当性判断の代表的先例であり、その後の下級審にも影響を与えています。ただし、この事案では「たまたま一部の者が通行に利用しているに過ぎない」と事実認定されています。したがって、市営駐車場であっても、もし駐車場内の道路が近隣の公道どうしを結ぶ抜け道として機能しているような場合や、駐車目的以外の一般通行が常態化しているような特殊な事情があれば、「道路」と認定される可能性はあります。実際、下級審には昭和62年の大阪高裁判決のように、行き止まりの私道で主に居住者等しか通らないような場所でも「一般交通の用に供されている」として道路と認めた例もあります。このように、公共か私有かという所有形態それ自体よりも、不特定多数に開放され通行の用に供されているかという実質が重視されます。

以上から、公共の駐車場についても原則的には道路交通法の適用を受けると考えられますが(特に多数の一般利用が見込まれる場合)、その駐車場の構造・利用実態によっては例外的に「道路ではない」と評価される可能性がある点に留意が必要です。例えば、市営の大規模駐車場内で事故や飲酒運転事件が発生した場合、まずその駐車場が一般交通の用に供されていたか(利用制限の有無、通路の配置など)を検討することになります。

「道路」該当性と酒気帯び運転罪成立の関係

道路交通法第65条第1項は「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」と規定し、酒気帯び状態での運転行為を禁止しています。しかし、この規定の前提として、その運転行為が道路(道交法上の道路)上で行われたものでなければ、同法の適用は及びません。したがって、場所が「道路」に該当するか否かは、酒気帯び運転罪(道交法違反)の成立要件として決定的に重要です。

これまで述べたように、私有地内でも一般に開放された駐車場であれば「道路」とみなされ、そこでの運転は酒気帯び運転禁止(65条)の対象となります。逆に、完全にクローズドな私有地(たとえば自宅敷地内や関係者限定の私道など)での運転であれば、たとえ酩酊状態であっても道路交通法上の酒気帯び運転罪には問われません。実務上も、「駐車場内は公道ではない」と主張して争われるケースがあり、その成否が直ちに有罪・無罪を分けるポイントとなります。

たとえば、駐車場内で発覚した飲酒運転事案では、まず警察・検察がその駐車場の道路該当性を検討します。前述のように、コンビニ駐車場のケースでは道路と認められなかったために酒気帯び運転の成立自体が否定された例もありました。このように、場所的要件(道路性)の立証は酒気帯び運転事件の実務上の重要な争点です。防御側としては、仮に運転の事実自体は争えない場合でも、「そこは道路ではない」と主張することで法適用を免れる余地があります。逆に検察側は、万一その主張が認められて無罪となるリスクに備え、先述のように公道上の運転行為を予備的に訴因に追加するなどの対応策を講じることがあります。

なお、酒気帯び運転罪の成立には「道路上で車両を運転した」ことに加え、「酒気を帯びた状態」であったことの立証も必要です。後者については呼気中アルコール濃度(呼気1リットル中0.15mg以上)によって客観的に裏付けられますが、実際の運転行為が確認されていない場合(例:駐車中の車内で寝ていたケースなど)には、「運転した事実」の有無が別途問題となります。しかしこの点は今回の論点の中心ではないため詳細は割愛しますが、基本的にはエンジンをかけ車両を動かした時点で「運転」と評価され得るため、駐車場内での車両移動も客観的に見て運転行為とされる可能性が高いことに留意が必要です。

危険運転致死傷罪など刑法(自動車運転処罰法)との関係

仮に道路交通法上の「道路」に該当しない場所で飲酒運転を行った場合、道交法違反としての処罰はできません。しかし、人身事故を起こしてしまった場合には、道路か否かにかかわらず刑事責任を問われる可能性があります。具体的には、平成26年施行の「自動車運転死傷行為処罰法」(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)により、飲酒や薬物の影響下での危険運転致死傷や過失運転致死傷が処罰される仕組みがあります。この法律は道路交通法とは独立した刑法的規定であり、適用範囲に「道路」の限定がないため、純粋な私有地内での事故であっても適用されます。

例えば、私有地内(港湾施設内や工場敷地内など)で酔った運転手が人身事故を起こして死亡・重傷事故となった場合、道交法の飲酒運転罪には問えなくても、「過失運転致死傷罪」や「危険運転致死傷罪」で起訴される可能性があります。実際に、貨物船内(公道外)でトレーラーを飲酒運転し、誘導員を轢いて死亡させた運転手が過失運転致死罪に問われた事故も報道されています。このように、場所を問わず人を死傷させた場合には刑法的責任が生じうることに注意が必要です。

危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法2条)は、アルコールや薬物の影響で正常な運転が困難な状態で走行し人を死傷させた場合に適用される重罪です。その法定刑は、被害者負傷の場合で15年以下の懲役、死亡させた場合は1年以上20年以下の有期懲役と非常に重く定められています。たとえば「飲酒により正常な運転が困難な状態」で人を負傷させれば15年以下、死亡させれば最大20年の懲役刑が科され得ます。これは道路か否かを問わず適用されるため、極端な例では自宅敷地内であっても泥酔状態で運転して人を轢き殺せば本罪の適用対象となり得るわけです(実務的には飲酒の程度・態様から正常な運転困難といえるかが争点になります)。

一方、飲酒の程度がそこまで深刻でなくとも、結果的に人を死傷させてしまった場合には過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法5条)で処罰されます。こちらは自動車運転上必要な注意を怠った過失犯で、法定刑は7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金(被害軽微な場合は情状により刑の免除も可)と定められています。飲酒運転による事故では、加害者の飲酒状況が「正常な運転が困難な程度」だったか否かで、危険運転致死傷罪が適用されるか(非常に重い処罰)、単なる過失運転致死傷罪にとどまるか(比較的軽い処罰)に分かれます。いずれにせよ、人身事故を起こした以上は私有地内であっても刑事責任は免れ得ないという点は極めて重要です。

道交法違反に伴う行政処分(免許停止・取消)と具体的事例

酒気帯び運転が成立した場合、刑事処罰だけでなく運転免許行政処分(違反点数に基づく処分)も科されます。行政処分は違反内容と過去の違反歴に応じて**免許停止(一定期間の運転禁止)免許取消(免許剥奪と一定期間の再取得不可)**が科せられる制度です。

酒気帯び運転の点数は、呼気中アルコール濃度の程度によって定められています。具体的には以下のとおりです:

  • 呼気1L中アルコール濃度が 0.15mg以上0.25mg未満 の場合 … 違反点数13点(前歴がなければ免許停止90日)。
  • 呼気1L中アルコール濃度が 0.25mg以上 の場合 … 違反点数25点(免許取消+欠格期間2年)。

※参考までに、さらに重い「酒酔い運転」(アルコールまたは薬物の影響で正常な運転ができない状態の運転)は違反点数35点で即取消(欠格3年)となりますが、これは酒気帯び運転とは別罪です。

上記のとおり、呼気0.25mg/L以上の高い数値が検出されると、一発で免許取消しとなる点が特徴です。たとえば実務上、呼気0.60mg/L(基準値の4倍)のアルコールが検出された事案では「免許の取消は免れない」と判断されます。実際に検出値が0.6mg程度であれば、刑事処分(罰金刑40万円程度が見込まれる)に加え、行政処分として免許取消(欠格期間2~3年)が科されるのが通常です。初犯か再犯か、過去の違反歴などによって処分内容は変わり得ますが、酒気帯び運転はいずれにしても重い違反カテゴリーに属し、運転者に対する行政上の不利益処分も厳重です。

他方で、先述のように道路交通法上の酒気帯び運転罪が成立しなかった場合(場所が道路に該当しない等)には、厳密には道交法違反の点数は付されません。例えば、私有地内のみで運転が完結してしまい起訴もされなかった場合、違反記録が残らないため直ちに免許停止等の行政処分も行われないことになります。ただし、人身事故を起こして後日「危険運転致死傷罪」や「過失運転致死傷罪」で有罪判決を受けたようなケースでは、公安委員会が個別にその事実を考慮して免許の取消処分を行うことも想定されます(重大な交通犯罪を起こした場合、道交法の点数制度とは別枠で欠格事由に該当し免許取消となる可能性があります)。いずれにせよ、道路交通法違反として処理されれば免許への影響は避けられず、特に重度の飲酒運転は長期の運転資格喪失につながる点は実務上周知されています。

駐車場内飲酒運転事件の実務上の争点と立証ポイント

最後に、駐車場内での酒気帯び運転事案における実務上の立証・争点について整理します。

①「道路」に該当するか否か:繰り返しになりますが、最も基本的かつ重要な争点は「その駐車場が道路交通法上の道路と言えるか」です。警察官が現場で検挙する段階では、厳密な法的検討まではされずに現行犯逮捕・送致されることもあります。しかし、検察段階や公判では弁護人からこの点が強く争われることが少なくありません。立証のポイントとしては、駐車場の利用形態・構造を具体的に示すことが挙げられます。例えば検察側は、駐車場の入口に誰でも入れる構造になっていたこと、不特定の車が頻繁に出入りしていた状況、防犯カメラ映像や利用者の証言、看板表示(「来客用駐車場」「○○様以外駐車禁止」など)を証拠として提出し、「一般交通の用に供されていた」ことを証明しようとします。逆に弁護側は、入口にチェーンが張られていた、鍵付きのゲートがあった、特定の許可車両しか入れない旨の標示があった、周辺住民や利用者以外は通常立ち入らない場所だった、等の事実を主張して「一般の交通の用には供されていない」ことを示そうとします。また、仮に一部一般人が通り抜けに使っていたとしても、それが「たまたま一部の者が事実上利用しているにすぎない」程度であれば道路とは言えないとの最高裁判断を援用し、道路性を否定する論法も考えられます。

② 運転行為の存在と態様:駐車場内で発覚する飲酒運転事案では、現行犯で警察官が確認するケースばかりではなく、事故後や通報により警察が駆け付けた際には運転行為の直接の現認がない場合もあります。その場合、「いつどこで運転したか」をめぐって事実認定上の争いになることがあります。例えば「エンジンを切って車内で寝ていただけだ」と主張された場合、それが本当に運転していなかったのか、それとも直前まで運転して停車したのかの立証が問題となります。基本的にはエンジンの温度や鍵の位置、防犯カメラ映像、目撃証言などの間接事実から総合的に運転の有無を認定せざるを得ません。この点、仮に「運転」はあったと認められても、前述のとおり場所が道路でなければ道交法違反は成立しないため、弁護側としては運転行為が公道に及んでいないことを強調する戦術が考えられます。実際に「駐車場内を少し移動しただけで、公道は走っていない」といった主張がなされるケースもあります。そのため検察官は、運転の事実とともにその経路(公道から駐車場まで至る経緯など)にも言及し、公道走行部分が含まれることを示そうとすることがあります。先述の平成12年東京高裁の事例で予備的訴因が認められたように、公道部分の走行が立証できれば最終的な有罪立証の手当てとなるからです。

③ 事故との関連(報告義務違反など):駐車場内で物損・人身事故が起きた場合、酒気帯び運転だけでなく事故後の対応(いわゆるひき逃げ、当て逃げ)についても問題となります。道路交通法上の救護義務違反・報告義務違反(ひき逃げ等)が成立するためには、「交通事故」が道路上で発生したことが要件です(道交法72条、119条など)。従って、事故現場が道路に該当しない駐車場内だとすれば、法律上はひき逃げの罪には問えないことになります。この点について最高裁昭和46年決定は、駐車場内で発生した物損事故について「その駐車場は道路ではない」と判断し、報告義務違反の不成立を示しました。もっとも、現実には駐車場内で事故を起こして逃走すれば道交法以外にも民事上の責任追及や場合によっては刑法の保護責任者遺棄罪などが問題となり得ますが、少なくとも道交法上の処罰は免れるという理屈になります。従って、飲酒運転と絡む事案では、事故現場が道路か否かも含めて総合的に検討する必要があります。

④ まとめ:駐車場内における酒気帯び運転事案は、道路交通法の適用範囲という基本的な論点から、事故が生じた場合の刑法上の罪責、行政処分の帰趨、そして事実認定上の細かな点まで、多角的な検討を要します。本稿で述べたとおり、まずは当該駐車場が道交法上の「道路」かどうかの判断が出発点となり、その結論によって道交法違反として処理できるか否かが決まります。そして、道交法が適用できない場合であっても、人身事故であれば自動車運転処罰法による処罰が検討されること、酒気帯び運転が成立した場合には厳しい行政処分が付随することにも留意が必要です。判例上もコンビニ駐車場や月極駐車場に関する興味深い判断が蓄積されており、それらは本件のような事案を検討する際の指針となります。実務家(弁護士)としては、個々の事案の事実関係を精査し、判例・通達・学説を踏まえて、依頼者にとって最善の主張立証を行っていくことが求められるでしょう。

参考判例・資料:最高裁判所昭和46年10月27日第二小法廷決定、大阪高裁昭和62年10月27日判決、東京高裁平成12年10月31日判決、東京高裁平成14年10月21日判決、大阪高裁平成14年10月23日判決、東京高裁平成17年5月25日判決、道路交通法2条1号、道路交通法65条、自動車運転死傷行為処罰法2条・3条・5条ほか。併せて警察庁交通局編「道路交通法解説」(東京法令出版)、実務書『交通事件重要判例要旨集』等も参照。酒気帯び運転の基準値・罰則については警視庁資料および弁護士解説を参照しています。