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薬院法律事務所

刑事弁護

14歳未満の少年は逮捕できない?


2019年09月28日読書メモ

タイトルの通りです。

14歳未満の少年は逮捕できません(少年法6条の5)。
では、例えば、重大な非行事件を起こした中学1年生をどのようにして拘束するかという問題がありますが、3つの手法があります。
1警察官職務執行法による保護、2児童福祉法による一時保護、3家庭裁判所の緊急同行状です。緊急同行状はあまり知られていないように思いますが、少女が暴力団関係者に引き込まれているような場合などに活用されているようです。

大塚尚『少年警察ハンドブック』(立花書房,2018年2月)205頁~

98触法少年の身柄を確保する必要があるとき

【2 警職法の保護
(1)警察官職務執行法3条の保護は,現場における即時強制としての保護である。
(略)
(2)保護の要件は,①異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して精神錯乱等による自傷他害のおそれ等があることが明らかであり,かつ,②応急の救護を要すると信ずるに足りる相当な理由があることである。
(3)保護の期間は,原則として24時間である(警察官職務執行法3条3項)。
(4) 個々の警察官が現場で判断できる点に特徴があるが,要件が厳しいので,適用できるケースは限定される。また,期間が短いので,継続的な保護を必要とする場合には不十分である。
3児童福祉法に基づく一時保護
(1) 児童福祉法33条の定める一時保護は,児童福祉機関が職権で要保護少年を保護するという行政処分である。
(略)
(3) 一時保護には,一般に,①緊急保護,②行動観察,③短期入所指導の3つがあるところ,警察活動との関係では①が問題になる。
緊急保護が認められる要件は条文上必ずしも明らかでないが,一般に,おおむね次の3つの場合とされている。
①「棄児,迷子,家出した子供等現に適当な保護者又は宿所がないために緊急にその子供を保護する必要がある場合」
②「虐待,放任等の理由によりその子供を家庭から一時引き離す必要がある場合」
③「子供の行動が自己又は他人の生命,身体,財産に危害を及ぼし若しくはそのおそれがある場合」
(4) 一時保護の期間は,原則として2月を超えてはならない。ただし延長が可能である(児童福祉法33条3項)。
(略)
4家庭裁判所の同行状
(1)家庭裁判所の同行状とは,保護処分に向けた手続を進める上で少年の身柄を確保する必要がある場合に,家庭裁判所が職権で行う措置である。通常の同行状と緊急同行状がある。
警察との関係で問題になるのは主として緊急同行状である

(略)

(2) 触法調査中であっても,家庭裁判所から緊急同行状が発付されれば,少年の身柄を確保することができる。
典型的には,家出や逃走等で所在不明であり, あるいはそのおそれがある場合,家族等から虐待や著しい悪影響を受けるおそれがある場合,不良集団の悪影響等で非行に陥り, あるいは急速に非行性が進むおそれがある場合, 自殺.自傷の虞がある場合,精神障害があり保護を要する場合等には同行状を発付し得るとされている(田宮=廣瀬145頁)。(3) 緊急同行の必要がある場合,警察としては,家庭裁判所に対してその職権発動を促すことになる。ただし,家庭裁判所に事件が係属することが同行状発付の前提条件となるため,触法調査が終了していなくても,家庭裁判所に事件を迅速に通報しなければならない。
この点について留意事項通達は, 「家庭裁判所の審判に付すべきであると認められる少年が緊急に保護しなければならない状態にあって,その補導上必要があると認められる場合においては,電話その他の方法により,直ちに家庭裁判所にその状況を通報するものとする」と定めている(留意事項通達第7の10)80)。
(4) 緊急同行状の執行が警察官に委託されることがある。その場合,少年の身柄は, 同行状の記載に従い,家庭裁判所に送る(→60参照)】