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薬院法律事務所

刑事弁護

大麻を購入したので、友人にあげようとしたらブロックされたという相談(大麻、刑事弁護)


2024年11月20日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は福岡市に住む20代大学生です。インターネットで大麻に興味を持って購入して、吸ってみました。ネットでは凄くいいといわれていたのですが、自分がやってみた感じではピンと来なかったので、残りは捨てようと思いました。ただ、以前大学の友人との雑談で、友人が大麻を吸ってみたいといっていたことを思い出して、メッセージアプリで「大麻買ってみたけどいる?」と画像をつけて送ったところ、既読になった後、ブロックされました。マズいことになりそうな気がするのですが、どうすべきでしょうか。

A、友人から通報された場合には警察が捜査にくる可能性はあります。まだ譲渡していないので、譲渡罪は未遂犯も含めて成立せず、所持罪または施用罪での立件が考えられます。「公然性」が欠けるので、「煽りまたはそそのかし」罪は成立しないでしょう。自首すべきかどうか、自首しなかった場合にどうすべきかは難しい判断が必要なので、薬物問題に詳しい地元の弁護士に相談をしておくべきでしょう。いずれにしても、二度と購入されないことです。

※大麻施用罪は令和6年12月12日施行です。

 

【解説】

 

現在は、大麻がインターネット上が簡単に購入しやすい環境になっています。そのため、軽い気持ちで購入してしまう人もいるようです。しかし、れっきとした犯罪です。私自身は、もちろん大麻や違法薬物をしたことはありませんが、これまで違法薬物をしてしまった人たちの事件を取り扱ってきました。その経験から確信していることは「違法薬物を使用することには、人生を懸けるほどの価値はない」ということです。興味本位で手を出すようなものではありませんし、合法薬物であるアルコールやタバコなどもあるなかで、あえて「違法」な薬物を選択するだけの理由はないと思っています。

 

※国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律

https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000094#Mp-Ch_3

(あおり又は唆し)
第九条 薬物犯罪(前条及びこの条の罪を除く。)、第六条の罪若しくは第七条の罪を実行すること又は規制薬物を濫用することを、公然、あおり、又は唆した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

なお、刑事事件を弁護士に依頼する場合は、捜査弁護の知識・経験、薬物事犯の知識・経験が豊富な弁護士を選ぶことが大事です。依存症問題についても詳しい弁護士だとなお良いでしょう。

私は、覚せい剤取締法違反事件で令状発付が違法であるという認定を得たことがあります(福岡地判令和2年12月21日最高裁判所刑事判例集76巻4号430頁)。国選弁護事件で、前例のない論点での違法収集証拠を主張し、強制採尿令状発付の違法が認定されました。一審は有罪判決でしたが、高裁では別の弁護人が就任して無罪判決となっています。最高裁では逆転有罪となっていますが、全ての審級で令状の発付が違法と認定されています。

最判令和4年4月28日

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=91131

【参考リンク】

令和6年12月12日に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」の一部が施行されます

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43079.html

厚生・労働2024年06月19日
大麻草から製造された医薬品の施用等の可能化・大麻等の不正な施用の禁止等に係る抜本改正
~大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律~ 令和5年12月13日公布 法律第84号
法案の解説と国会審議
執筆者:木村歩

https://www.sn-hoki.co.jp/articles/article3567820/

【(2)大麻等の施用等の禁止に関する規定・罰則の整備
① 大麻等を麻薬及び向精神薬取締法上の「麻薬」に位置付けることで、大麻等の不正な施用についても、他の麻薬と同様に、同法の禁止規定及び罰則を適用する。
なお、大麻の不正な所持、譲渡し、譲受け、輸入等については、大麻取締法に規制及び罰則があったが、これらの規定を削除し、他の麻薬と同様に、「麻薬」として麻薬及び向精神薬取締法の規制及び罰則を適用する(これに伴い、法定刑も引上げ)。】

 

【参考文献】

 

藤永幸治編集代表『シリーズ捜査実務全書8 薬物犯罪(第2版)』(東京法令出版,2006年8月)

白濱清貴「第2編各論 第1章違反態様 第2節譲渡し、譲受け」

56-57頁

【(1) 譲渡罪における「譲渡し」、「譲受け」の意義
ア譲渡し、譲受け
「譲渡し」とは、一般に相手方に対し、物についての法律上又は事実上の処分権限を与えて、物の所持を移転することをいい、「譲受け」は、その反対概念であって、相手方から、物についての法律上又は事実上の処分権限を与えられて、その所持の移転を受けることをいうと解される。…(略)…ただし、所持の移転が必要であるから、「単なる売買契約など所持の移転を伴わない譲渡の合意だけでは、譲渡の実行の着手もなく、未遂罪も成立しない」ので注意を要する(高松高判昭27. 1. 31 高刑集5.2.139) 。】

 

中川清明「第5章麻薬特例法の罪 第6節 第9条(あおり又は唆し)の罪」

258頁

【「公然」とは、不特定又は多数の人が知ることができる状況をいう。大阪地裁判決平成12 年9月28 日は、インターネットのホームページ上に情報を掲載した事例において、被告人が「電話回線等を使用してインターネットに接続可能なパソコンを有する不特定多数のインターネット利用者をして、これら情報が再生閲覧可能な状況を設定」したことをもって公然性を認めている。】

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