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薬院法律事務所

盗撮

犯罪行為を行って警察に連れて行かれたが、示談書を交わして終わったという事例(盗撮、万引き、痴漢、傷害事件等)


2021年08月28日盗撮

【相談】

 

Q、先日、酔っ払って近くの人に絡んでしまい、怪我をさせてしまいました。交番に連れて行かれたのですが、お詫びして、治療費として金5万円を支払って、「示談書」を書いて帰されました。これは刑事事件にはなっていないのでしょうか。

A、刑事事件にはならずに終わっていると思います。もっとも、後日になって正式な刑事事件として立件される可能性はゼロではないです。

 

【解説】

 

時折あるタイプの相談です。暴行事件や盗撮事件などで、現行犯で捕まって警察に連れていかれることがあります。その場で、「示談書」を作成してお金を支払うことになり、「上申書」を書いて帰されたがどうなるのか、というものです。良くある話なのですが、インターネットには正確な情報がないようです。犯罪捜査規範の「微罪処分」と混同されていることもあります。この問題については、警察公論2016年10月号の「クローズアップ実務 青年警察官の執行力向上を目指して 交番勤務立花巡査の一日(第71回)和解書を徴するべき?(その1)」と、翌月号の(その2)に解説があります。被害者が事件化を望んでいないのであれば、後で紛争が生じないように被害者の意思を書面化しておくこと(答申書の作成)と、加害者が反省していること、後で事件化したときに自供していることを示すため書面化しておくこと(上申書の作成)が勧められています。併せて、写真撮影等の証拠保全をして事後の事件化に備えた措置をとることが勧められています。

一方、和解書を警察が保管することは、警察から和解を強制されたといった紛議を生じたり、和解金が入らないと和解書を被害者から開示請求されても加害者名が黒塗りになる等の問題もあるのでやるべきではないとされています。なお、各都道府県により取扱いが異なることもあるそうです。いずれにしても、前科にはなっていません。警察のデータベースで犯罪事件として登録されているかは不明ですが、被害届が出ていないので登録されていないのではないかと思います。

犯罪捜査規範の「微罪処分」は次のとおりで、その場で終わるような手続ではないです。

 

※犯罪捜査規範

https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50400000002

(微罪処分ができる場合)
第198条捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。
(微罪処分の報告)
第199条前条の規定により送致しない事件については、その処理年月日、被疑者の氏名、年齢、職業及び住居、罪名並びに犯罪事実の要旨を1月ごとに一括して、微罪処分事件報告書(別記様式第19号)により検察官に報告しなければならない。
(微罪処分の際の処置)
第200条第198条(微罪処分ができる場合)の規定により事件を送致しない場合には、次の各号に掲げる処置をとるものとする。
(1)被疑者に対し、厳重に訓戒を加えて、将来を戒めること。
(2)親権者、雇主その他被疑者を監督する地位にある者又はこれらの者に代わるべき者を呼び出し、将来の監督につき必要な注意を与えて、その請書を徴すること。
(3)被疑者に対し、被害者に対する被害の回復、謝罪その他適当な方法を講ずるよう諭すこと。

 

【参考文献】

 

昇任試験研究会編著『部内用 MPD SA 過去問2019』(立花書房,2018年11月)255頁

【<相互暴行の取扱い〉 和解・示談については,当事者間のことであり,警察が関与すべきものではないので,取扱い時において和解書等を作成させて受理するのではなく,当事者それぞれから上申書や答申書等を徴しておき, また取扱いの状況を報告書等にしておく,必要な写真を撮影しておくなど,後に立件することも視野に入れた措置を執っておくことが妥当である。当事者間で和解書等を作成するのであれば, 当事者らに対し,双方の署名押印のある原本を2通作成し, それぞれが保管しておく方法を教示すればよい(平27. 10.15刑事指導旬報第1505号「適正な事件処理について~和解書等を徴することの適否~」P2)。】