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薬院法律事務所

読書メモ

交通事故事件で「自首」が成立するかという相談


2023年06月20日月刊交通

【相談】

 

Q、交通事故を起こしたのですぐに警察に連絡して状況を説明しました。これは「自首」にはならないのでしょうか。

A、実務上は「自首」として扱われていませんが、理論的には自首が成立する場合もあります。

 

【解説】

 

月刊交通2023年5月号の城祐一郎先生の論考がありました。いわく、道路交通法上の報告義務は自らの刑事責任を負うとの申告を求めるものではないので、単に事故内容の説明をするに留まらず、自らに過失があったと具体的に犯罪事実を申告するのであれば、それが警察に発覚する前であれば理論上過失運転致死傷罪の自首があったと認めて良い、ということです。盲点でした。ただ、実務的にはそのような取扱いがなされていないので、弁護人から積極的に主張していく必要があると思います。

※刑法
(自首等)
第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045

【参考文献】

 

岡野光雄『交通事犯と刑事責任』(成文堂、2007年1月)141頁

【(5)事故報告と「自首」
法定五事項を完全に報告する者は少ないと思われるが,報告義務を履行した場合,「自首」(刑法42条)との関係が問題となる。自首とは,罪を犯した者が,犯罪事実または犯人が捜査機関に発覚する前に自発的にその犯罪事実を申告し,訴追等を求めることをいい,報告義務を履行しても自首に当たらな37)い。「未発覚」と申告・報告の「自発性」という点では事故報告と自首とはほぼ共通しているといえるが,判例によると,報告事項は刑事責任の追及直接関係ないとされているのであるから,訴追等を求める自首とは基本的に異なることになる。しかし,報告義務の現実の運用からすると,それは刑事責任の追及と密接な関係を有していることが分かる。換言すると,事故報告義務は自首に類した行為を義務づけるものといえるのであるから,このことを看過して報告義務を論ずることは現実を無視することになる】

自首の手順(万引き・盗撮・痴漢・児童買春等)