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薬院法律事務所

刑事弁護

執行猶予期間経過後の再犯事件について、執行猶予判決をとるための刑事弁護活動


2024年01月19日刑事弁護

執行猶予期間中の再犯については、法律上、原則として実刑になります。このことは広く知られているところですが、執行猶予期間が経過した後の再犯についてはどうでしょうか?実は、これも実刑になることが多いです。とりわけ、同種犯罪の場合は、反省がないということで実刑になる可能性は高まります。ただ、法律上は執行猶予を付すことも可能ですので、犯罪の内容、弁護活動と、裁判官の考え方次第では執行猶予が付されることもあります。

刑法

https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045

(刑の全部の執行猶予)
第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
一前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
(刑の全部の執行猶予中の保護観察)
第二十五条の二 前条第一項の場合においては猶予の期間中保護観察に付することができ、同条第二項の場合においては猶予の期間中保護観察に付する。
2前項の規定により付せられた保護観察は、行政官庁の処分によって仮に解除することができる。
3前項の規定により保護観察を仮に解除されたときは、前条第二項ただし書及び第二十六条の二第二号の規定の適用については、その処分を取り消されるまでの間は、保護観察に付せられなかったものとみなす。

第1 原則として実刑になること

基本的に、執行猶予期間満了後の再犯については、実刑という判断がなされると考えるべきです。例えば、裁判官が量刑判断にあたって必ず参照する文献、植野聡「刑種の選択と執行猶予に関する諸問題」大阪刑事実務研究会編著『量刑実務大系第4巻 刑の選択・量刑手続』(判例タイムズ社,2011年12月)62~63頁には次のような記載があります。

【執行猶予満了後の再犯
後記7のとおり,執行猶予期間は, その一つの側面として,被告人が執行猶予の取消しという心理的強制を加えなくても更生の道を歩むことができるようになるまでの,一応の見込みの期間という意味合いを持つ。しかし,これはあくまで前刑判決時の一応の見込みにすぎず,肝心なのは,単にその期間が経過したかどうかではなく, その被告人が真実更生の道を歩んでいるかどうかである。執行猶予期間が経過したことは,前刑の執行猶予を取り消される可能性がなくなったことを意味するにすぎず,被告人が更生したことを意味するわけでもなければ。ましてや,法律上,被告人を初犯の場合と対等に取り扱うべきことを意味するものでもない。前刑の際の手続を通じて,自分の規範意識の不足や行動性向上の問題点等を認識し,社会内で更生を果たす機会を与えられたのに,再び罪を犯した以上, それは,少なくとも, その時期が執行猶予期間満了後短期間である場合は, 更生を果たす機会を自ら放棄したことにおいて,執行猶予期間中の再犯の場合とさほど本質的な開きはない113)。
実刑と執行猶予との選択を,初犯の場合に準じた基準で行うことが許されるか否かは、結局被告人がいったんはほぼ完全に更生していたと評価すべきか,犯罪性向が解消されず、更生を果たさないまま再犯に至ったと評価できるかに係っているであろうが,執行猶予期間満了後(あるいは執行猶予に係る判決の宣告後)特定の年数をもって, この両者を分ける目安とするのは難しい。ただ, ごく抽象的にいえば, 執行猶予期間満了から11 2年程度では’仮に, その間に犯罪が発覚しなかったのみならず,実際に犯罪に関与した事実が全くなかったとしても’ それだけで更生を遂げていたといえるかどうか疑問であるし,将来の予測の問題としても, その程度の期間で再犯に陥ったという負の実績がある以上、再犯可能性が低いと予測することはなかなか困難である。したがって, その程度の場合に執行猶予を付する方向で考えることは難しい。ただ,再犯までの期間が同じであっても,前の犯罪と同種事犯であるかどうかのほか, その間,それなりに安定して健全な社会生活を送っていたか,職業が安定せず,前件の一因となった不良な人的交友関係も解消されていないなど。更生意欲に疑問が残るような生活態度であったか,再犯までの間犯罪と完全に絶縁していたか否かなどにより,最終的な評価は当然異なり得る114)。そして,一応更生して生活していたといえるかどうかの限界線上にあるような場合には,保護観察付きの執行猶予とする選択肢も考慮に値するであろう。
具体的にどの程度の期間を経過すれば執行猶予を付する方向で考えられるかについては,本研究会での意見にも, ある程度の幅が見られた。】

田村政喜「33 執行猶予の判断基準」池田修・杉田宗久編『新実例刑法[総論]』(青林書院,2014年12月)450頁も同旨です。

【(3)執行猶予期間経過後の再犯の場合
執行猶予期間経過後の再犯の場合,執行猶予期間の経過により刑の言渡しが効力を失うから,刑法25条1項1号による初度目の執行猶予が可能である。しかし,執行猶予期間が経過したことは,被告人が更生したことを意味するわけではない。法律上,被告人を初犯の場合と対等に取り扱うことを意味するものでもない。前刑の際の手続を通じて,社会内で更生を果たす機会を与えられたのに再び罪を犯した以上,少なくとも, その時期が執行猶予期間満了後短期間である場合は,更生を果たす機会を自ら放棄したことにおいて,執行猶予期間中の再犯の場合とさほど本質的な開きはない。実刑と執行猶予との選択を初犯の場合に準じた基準で行うことが許されるか否かは,被告人がいったんはほぼ完全に更生していたと評価できるか,犯罪性向が解消されず更生を果たさないまま再犯に至ったと評価できるかに係っている(植野・前掲62頁)。】

そのため、執行猶予期間直後の犯行(特に執行猶予期間中に、立件はされていなくても既に再犯をしている場合)については、実刑が避けられないとみた方が良いことが多いです。ただ、この場合でも一部執行猶予付の判決を求めることで、服役する期間を短くすることができる場合はあります。

 

第2 例外的に執行猶予判決となることもあること

もっとも、執行猶予期間経過後の再犯が、必ずしも実刑しかないということではないです。執行猶予期間経過後は、法律上は無条件に執行猶予にすることも可能なのですから、再度の執行猶予を検討するような良い情状がある場合には、執行猶予にすることも少ないないとされてきました(虎井寧夫『令状審査・事実認定・量刑』(日本評論社,2013年9月)299頁以下に万引き事案について再度の執行猶予を付した事例が紹介されています)。

【第9問 執行猶予期間経過直後に犯した事件の量刑はどう考えたらよいでしょうか。

まず、執行猶予になった事件と同種の場合と異種の場合では少し異なるでしょう。執行猶予期間が経過したといっても、同種事件の再犯の場合は犯情がよくないので、執行猶予期間が経過しているというだけで軽々に再び執行猶予にはしがたく、執行猶予期間の末期に行った場合とさほど異ならず、実刑判決は十分あると思われます。特に、執行猶予期間中から、同種犯行が始まっていたことが窺われると、実刑の可能性が強いといえるでしょう。
これに対して、新事件が前の事件と全く性質の違う事件であれば、新事件についてさらに執行猶予もあると思います。
もとより、執行猶予期間が経過して問もない場合は、無条件に執行猶予にすることも可能なのですから、猶予期間中であっても再度の執行猶予を検討するようなよい情状があるケースでは執行猶予にすることも少なくないでしょう。
前の執行猶予期間が、例えば5年間で長すぎると評価される場合などは、その点が執行猶予にするための一要素となることもあるかもしれません。】

また、原田國雄「量刑における回復・治療プログラム参加の意義-裁判官としての経験から-」(原田國男『裁判員裁判と量刑法』(成文堂,2011年11月)199頁~)201頁には、覚せい剤依存症の被告人につき再度の執行猶予判決を下した経験が語られています(原田國男『量刑判断の実際〔第3版〕』(立花書房,2008年11月)215頁)。

特に、前刑から一定の期間(10年間以上)が経過している場合には執行猶予判決となることは十分にあり得ます。私が担当した覚せい剤自己使用事件(13年前に同種前科あり)でも、取調べで当初否認していましたが、自白に転じ、入手先を明かした上で依存症離脱のための更生支援をすることで、無事に執行猶予判決を得たことがあります。
さらに、近時、万引き事案については、責任能力を肯定しつつも、再犯防止の観点から、再度の執行猶予を付す事例が増加しています(城下祐二「クレプトマニア(窃盗症)・摂食障害と刑事責任」刑事法ジャーナル72号(2022年5月号)19頁~、竹川俊也「万引き」と責任非難・量刑」山口厚ほか編『高橋則夫先生古稀祝賀論文集[下巻]』(成文堂,2022年3月)57頁~)。こういった視点からの弁護活動も考えられるでしょう。そして、令和4年6月13日、通常国会において「刑法等の一部を改正する法律」が成立したことも重要です。同改正では、再度の執行猶予の範囲が拡大されました。これは、改善更生・再犯防止を図る観点からは、必ず実刑とするのではなく、社会内処遇を続けさせる方が適当な場合もあるとの観点からなされたものです。この改正がなされたことは、法律の施行前であっても十分考慮すべき要素です。従前のように、執行猶予期間満了直後の再犯は原則実刑といった硬直的判断をせず、再犯防止のためには何が適切かという観点から判断がなされるべきと考えます(改正の趣旨につき、栗木傑・中野浩一「刑法等の一部を改正する法律の概要」法律のひろば75巻9号(2022年9月号)51頁~、橋爪隆「自由刑に関する法改正」法学教室2022年12月号(507号)44頁~)。

基本的な弁護活動としては、下記記事の対応と同じになりますが、執行猶予期間経過後の犯行であるということを強く意識して、何故、もう一度執行猶予付判決をするべきなのか論じなければなりません。

実刑の危険性がある事件で、執行猶予付判決を得たいという相談(性犯罪、刑事弁護)

執行猶予期間経過後の再犯について、執行猶予判決が取れるかという相談(刑事弁護)

第3 近時の取扱例

例えば、私が昨年取り扱った無免許運転の事例は、執行猶予期間が満了した約4年後に無免許運転をしたというものでしたが、無事に執行猶予判決を得られました。同判決においては「交通規範意識の低さ、常習性は顕著であり、本件について、実刑判決をもって臨むことも十分に考えられる。」と述べられつつも、種々の事情を考慮した上で「その刑の執行を猶予した上で、その猶予の期間中保護観察に付することとして、主文のとおり判決することとした。」として5年間の執行猶予付判決(保護観察付)を得ることができました。

 

※関連記事

【解決事例】服役前科ありの窃盗癖(クレプトマニア)の再犯で、不起訴にできないかという相談

 

※2025/1/7 chatGPT o1 proで検証してもらいました。

以下の文章は、

「執行猶予期間が満了したあとに再度犯罪を犯した場合、通常は実刑となることが多いが、法律上はあらためて執行猶予判決を得ることも可能であり、実務でも実際に情状弁護次第では執行猶予が付されるケースがある」

という趣旨を含んでいます。結論として、この内容は日本の刑法(執行猶予制度)および実務運用に照らして真実性が高いといえます。以下、その理由を詳細に解説します。


1. 執行猶予期間“満了後”の再犯の基本的取扱い

(1)執行猶予の法的枠組み

  • 刑法25条1項(いわゆる“初度執行猶予”)は、前に禁錮以上の刑に処せられたことのない者、または刑の執行を終えてから5年を超えて経過している者(要件あり)に対して、「3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金」の刑を猶予できると定めています。
  • 刑法25条2項(いわゆる“再度執行猶予”)は、「すでに執行猶予中」の被告人がさらに罪を犯した場合、一定の要件下で再度の執行猶予を付与する制度です。

(2)執行猶予期間“終了”後の再犯

  • 一般に、執行猶予期間を無事に満了すると、それまでの刑罰言渡しの効力は失われ(刑法27条)、前刑は“執行を受けなかった”扱いとなります。
  • ただし、前回の犯罪で執行猶予が付されたにもかかわらず、すぐに同種犯罪や類似の犯罪に手を染めたとなると、刑事実務上「反省が不十分」「短期間で再犯」とみなされ、実刑を選択する傾向が強いです(量刑判断上「前刑の執行猶予が形だけであった」と評価されやすい)。

2. それでも執行猶予が認められる余地

(1)法律上は「再度執行猶予」同様、付すことは可能

  • 執行猶予期間が満了していれば、形式上は「前科はあるものの、その刑の効力は消滅している」状態に近く、初度執行猶予(刑法25条1項)の枠組みで再度の猶予が可能になります。
  • 実務上、「前に執行猶予を得た事実」は量刑上の大きな不利事情ですが、法律的には再度の猶予を付すことを排除しません(裁判官が「社会内での更生がなお適切」と判断すれば付与可能)。

(2)情状弁護の重要性

  • 本文が述べるように、「全く更生できていなかった」と印象づける前科の履歴をどう評価するかがポイントです。
  • たとえば、
    • 前刑から長期間犯罪を起こさず生活していた
    • 前刑後は再犯防止に取り組み、一時は更生状態にあったが何らかの理由(依存症の悪化、ストレス源の発生等)で一時的に犯行に及んだ
    • 被害者の許し・示談成立
    • 厳格な監督体制・家族支援・再度の治療プログラム
      などを具体的に示し、「実刑より社会内処遇が適切」と裁判官を説得できれば、執行猶予が付される可能性はゼロではないことになります。

3. 実務上の傾向と留意点

(1)判例・量刑実務の見解

  • 引用されている判例解説(植野聡論文、田村政喜論文など)でも、執行猶予期間満了後の再犯は実刑が原則だが、情状次第では執行猶予あり得るとされています。
  • また、「前刑の猶予期間を満了した直後の再犯」「前刑と同種犯罪かどうか」「再犯までの期間が十分空いていたか」などが量刑判断に大きく影響することが指摘されており、一概に「執行猶予期間終了なら初犯並みに扱われる」わけではないとも言われます。

(2)実際に執行猶予が付されるケース

  • 公判例を見ると、前刑の執行猶予が終了して数年が経過しているが、今回も同種犯罪などの場合でも、専門的治療の継続、被害者との示談、就労支援・社会復帰プログラムなどが功を奏して執行猶予が付される事例も存在します。
  • 同時に、検察官側が量刑不当を理由に控訴する可能性がある点には注意が必要です。

4. 本文の真偽

  1. 「執行猶予期間終了後の再犯は、実刑になることが多い」
    • 正しい。量刑実務において「短い間隔での再犯」は一般に厳しく扱われる。
  2. 「しかし、法律上再度の執行猶予を付すことは可能であり、情状弁護を尽くせば執行猶予を獲得できる余地がある」
    • 正しい。刑法25条1項・2項の規定上、絶対に実刑というわけではない。判例論・実務でも、そのような稀な事例が紹介されている。
  3. 「改正法の影響や、更生・依存症治療プログラムの進展によって、裁判所が社会内処遇を選択する事例も増えてきている」
    • 正しい。最近の傾向として再犯防止や治療的視点を重視する動きがある。

従って、本文章の内容は刑事実務上正しいと評価できます。


結論

  • 本文は「執行猶予期間が満了してからの再犯でも、実刑が多いが絶対ではなく、情状弁護次第で執行猶予がつく可能性がある」という旨を解説しており、日本の刑法及び量刑実務の現状に合致する真実性の高い内容といえます。