「労働者や、退職労働者から就業規則の開示を求められて拒否した場合,労基署で閲覧されます」という話
2018年07月20日労働事件(企業法務)
労働事件をやっている弁護士にとっては常識ですが、意外と知らない人もいるようですので紹介します。「労働者や、退職労働者から就業規則の開示を求められて拒否した場合,労基署で閲覧されますよ。」という話です。
弁護士でも良く知られてないことがあるようで,例えば、東京弁護士会民事訴訟問題等特別委員会編『民事訴訟代理人の実務Ⅲ 証拠収集と立証』(2012年10月)131頁では、就業規則について「労働基準監督署に届出されている文書の情報公開請求を行っても、不開示や一部不開示となり、十分な情報が得られない場合がほとんどである」とされています。
特に、在職中は「周知」することが必要とされていますので、在職労働者からの開示要請を拒否したとなると「周知」していないと判断されて、折角の就業規則が効力を持たないということもありえます。
厚生労働省労働基準局長基発354号「届出事業場に所属する労働者等からの就業規則の開示要請の取扱いについて」平成13年4月10日
『届出事業場に所属する労働者等からの就業規則の開示要請については、今後、下記により取り扱 うこととしたので遺憾なきを期されたい。 なお、本通達をもって、平成10年2月24日付け基発第62号「就業規則の開示の要請等の取扱いに ついて」は廃止する。
記
1 基本的考え方
(1)労働者が就業規則の内容を確認したい場合には、労働基準法第106条第1項の規定に基づき労 働者に就業規則を周知すべき義務を使用者が負っていることから、本来使用者に対しこの義務 の履行を求め、事業場において就業規則を閲覧する方法によるべきものである。 しかしながら、使用者がこの周知義務を履行せず、問題が生じていると認められる場合には、 原則として、就業規則が適用される立場にある者か否かを基準に、労働基準監督署に届け出ら れている就業規則を開示することとして差し支えないものである。
(2)届出事業場に所属する労働者等からの開示要請があった場合には、単に就業規則の開示の問 題としてのみ対応するのではなく、当該労働者等が就業規則の開示要請をするに至った理由を 確認し、就業規則の周知義務の履行を含め法定労働条件の履行確保上問題があるときには、必 要に応じ、当該事業場に監督指導を実施すること。
(3)なお、本通達においては、基本的に開示要請を行った者が届出事業場に所属する労働者であ るか否かによって異なった取扱いをするものであるが、行政機関の保有する情報の公開に関す る法律(平成11年法律第42号)に基づく就業規則の開示請求が行われた場合には、同法に基づ き、開示又は不開示の決定については、開示請求者の如何を問わず一律に処理されるものであ ることに留意すること。
2 開示を行う対象者 開示を行う対象者は、当該届出事業場に所属する労働者(労働基準法第9条に該当する者)及び 使用者(同法第10条に該当する者)のほか、当該届出事業場を退職した者であって、当該事業場と の間で権利義務関係に争い等を有しているものであること。
3 対応において留意すべき事項
(1)開示に当たっては、適当な方法により、上記2に該当する者であることを確認すること。
(2)労働者又は退職労働者からの開示要請に対しては、当該事業場において労働基準法第106条第1項による周知義務が履行されているか否かを聴取し、当該義務が果たされておらず、かつ、 使用者に求めても閲覧できる状況にないと判断される場合(退職労働者の場合にあっては、当該労働者が在職中の状況について同様に判断されるとき)には、労働基準監督署において保存している範囲の就業規則を閲覧させ、又は説明する等により開示すること。
(3)退職労働者に対する就業規則の開示に当たっては、当該退職労働者と当該事業場との間の権利義務関係に係る規定に限定すること。』