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薬院法律事務所

刑事弁護

アリバイがあるのだけど、正直に言えないのでどうすれば良いかという相談(刑事弁護)


2024年01月30日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は福岡市に住む50代の会社経営者です。先日、警察が自宅にきて、付近のマンションに私が侵入して不同意性交をしたのではないかと疑っていると言われました。確かにその日は私はマンションに立ち入りましたが、それは不倫相手と会うためであって、他の部屋には行っていません。ですが、このことを話すと妻と子どもに軽蔑されそうで、警察には「行っていない」と嘘をつきました。どうすれば良いでしょうか。

A、嘘をついたことで逮捕勾留される危険性があり、実名報道の危険性も高まります。正直に述べた上で、警察に対して家族に言わないことを求めるやり方が無難でしょう。

 

【解説】

依頼者の言い分が「信用できない」と感じることは、弁護士をしていれば時折あることです。刑事事件だけでなく、民事事件でもあります。そういった場合に弁護士がとるべき基本的な態度としては、本人の語る理由を傾聴するということになります。一見不合理に見えることでも、詳しく背景事情を聞いていけば「なるほど」と思うことはあります。そういった場合は、裁判所や捜査機関に対して、依頼者の言い分が信用できることを主張していくことになります。ただ、それでも依頼者が「嘘をついている」と判断せざるを得ないことがあります。そういった場合にどうすべきか。ここでひとつ重要なのは、仮に依頼者が「嘘をついている」とすれば、何故「嘘をついている」のかを考えないといけないということです。この視点は見落としがちです。

相談のような事例では、弁護士相手にも真実を話さないことがありますが、警察が来たということは防犯カメラ等で確認しているということです。掘り下げて事情を確認することで、相談者も真実を話すことがあり得ます。

 

【参考文献】

越智啓太「取調べにおける心理学(第15回)被疑者調べの心理学(5)被疑者行動の心理分析」捜査研究2021年10月号(852号)

116頁

【気をつけなければならないのは「犯人でなくても嘘はつく」ということだね。例えば,実際には犯人でないけれども。自分の行った行動がほかの犯罪になる場合,倫理的に推奨されるようなものでない場合,他の人をかばいたい場合, 自分にとって恥となる場合などは犯人でなくても嘘をつく。例えば,実際はアリバイはあるけど、それが不倫相手との逢い引きだった場合,風俗に行っていた場合,仕事中にパチンコに行っていた場合などは, あまり正直に言わないし, 途中から,供述を変えてきたりすることもあるよね。だけど, これだけから「怪しい」と思うのはちょっと,危険かもしれない。】

 

警察庁刑事局刑事企画課「取調べ(基礎編)」』

https://www.npa.go.jp/sousa/kikaku/20121213/shiryou.pdf

8頁

【1 虚偽供述の原因
被疑者取調べにおける虚偽自白について、心理学においては以下のような分類がなされている。
(1) 自発型虚偽自白
供述を強いられるような圧力を受けていないにもかかわらず、「より重い罪が明らかになることを防ぐため。」、「大切な人を守るため。」、「悪名を得るため。」等の理由から、自発的に虚偽の自白をする者がいる。
また、「相手(取調官)によく思われたい。」という強い欲求のために、取調官に黙従し、虚偽の自白をしてしまう者もいる。】

 

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