【えん罪】痴漢はしていないけど、不起訴にするために示談して欲しいという相談(痴漢、刑事弁護)
2024年02月14日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は東京都に住む30代の男性です。先日、電車内で女性のお尻を触ったということで、通報されました。電車内が混んでいたので手がお尻にあたったことは事実ですが、偶然当たっただけで故意はありません。ですが、痴漢は「被害者」が触られたといったら有罪になってしまうと聴いていますので、示談で不起訴で済むのであれば示談もやむを得ません。
A、基本的には、そういった提案で示談がまとまることはないと思います。とはいえ、「触っていない」という否認ではないので、提案すること自体は考えられるでしょう。
【解説】
一般論としては、否認事件でも示談して賠償をすることにより不起訴を狙うということはあります。
例えば、性交の事実には争いがなく、不同意性交であるか否かが争われていて、一見すると口頭での「同意」はあるものの「強いられた同意」であり相手は拒絶できない状況であったとか、そもそも明確な同意がなかったけど、不同意の表明もなかった、といった場合は不同意性交罪が成立するか否か判断が難しいことがあります。そういった場合、少なくとも相手方にとって意思に反した性交であったことを認め、被害弁償として慰謝料を支払い、示談する、ということはありえます。
一方、「犯人でない」という否認の場合は示談交渉はあり得ません。被害者に対しても侮辱になります。
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
(昭和37年10月11日東京都条例第103号)
(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
第5条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(1) 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。
【参考文献】
日本弁護士連合会『平成22年度研修版現代法律実務の諸問題』(第一法規,2011年8月)
パネルディスカッション
倫理研修
【森下弘 結局、示談や被害弁償、それから宥恕の意思表示、すなわち 嘆願書については、事案によってかなり性質が違うと思うのです。
例えば、性犯罪の場合に、「やってはいないが、弁償します」と言ってしまうと、被害昔がまず納得をしないですね。「私は、そんな 金で頬をはられることで示談をしてしまうつもりで、被害届を出したのではない。犯人を捕まえてもらいたいから、恥を忍んで被害届を出したのだ」、「それを、私はやっていないが、弁償しますとは、一体何事ですか」という形で、120パーセントといってよいほど示談は成立しないですね。】