岡口基一・中村真『裁判官!当職そこが知りたかったのです。 民事訴訟がはかどる本』
2018年07月20日企業法務
日本一有名な裁判官である岡口基一裁判官と、中村真弁護士の対談記録。酒の席でざっくばらんに聞いてみました、という雰囲気の書籍です。
一般的に弁護士では常識と思われているようなことに、それは違うといった話もあり、びっくりしました。しかし、そう考えると納得出来ることも、、、とりあえず、訴状はしっかり練り上げること、訴訟物と要件事実を意識した端的な書面を書くことを肝に命じました。私は書面を依頼者との打ち合わせをしながら作ることが多く、構成が雑になりがちなので、作成後の練り上げを改めて考えたいと思います。
印象に残った箇所。
準備書面でも事実摘示は要件事実を意識して、そこに肉付けをする形で最も正確な事実摘示をする(18頁)
裁判官は訴状の印象にしばらく拘束される。ベストエビデンスを挙げて説得することをまずする(19頁)
『裁判官がどのように事実認定をしているかというと、この人はこういう動機があるからこうしたんだろうと、どちらかというと動機を中心に考えるんですね(略)まずは動機を中心に見て、次に同じ動機をもっていて、やるかやらないかは人によって違うので、どういう人間なのかみたいなところを見るんですよ。どこに住んでいるか、兄弟は何人で、どこの会社にいるかと。割と周辺事情を見ています』(51頁)
尋問は自然体がいい。練習しすぎは良くない(56頁)
最終準備書面は間接証拠を潰すことが大事(96頁)
いい代理人は証拠の出し方も上手いし、最初の訴状提出の段階から証拠を出します。あらゆるプロセスで代理人で差がつく(103頁)
裁判官から信頼されている代理人の書面は信用される。信用されるには、きちんとした書面を書く、依頼者を説得出来る弁護士は信頼される(139頁)
生の事実をそのまま記載するのでは素人と同じ。法曹の法曹たるゆえんは、それを法的な観点から再構成して、要件事実として摘示することができること(154頁)
一読の価値があります。特に、動機で判断されるという話は意外でした。もちろん、証拠も確認はきちんとされていて、判決を書く段階であっとするような証拠を発見することもあるそうです(80頁)。
しかし、司法研修所編「民事訴訟における事実認定」では動かしがたい事実を合理的に説明出来るかで認定される(同書25~28頁)などとありますので、一般的にはそうかと思っていました。確かにベテラン裁判官は岡口判事のおっしゃるような筋での判断を重視しているように思います。
http://www.gakuyo.co.jp/book/b333397.html