【解決事例】債務者の詐害信託行為を取り消し、強制執行を実現しました
2024年08月15日企業法務
【相談前】
確定判決を得ていましたが、相手方が所有する建物が「信託契約」により第三者に所有権が移転していたことがわかりました。
【相談後】
信託契約がなされている場合は、その「信託受益権」を差し押さえるというのが原則です。しかし、きちんとした会社であればともかく、関連会社などであれば信託受益権を差し押さえても換価することができず無意味に終わります。信託契約の当事者を調査して、その関係性を明らかにして詐害信託取消権に基づく仮処分で登記を保全し、詐害信託取消訴訟を提起しました。結果、詐害信託を取り消して強制執行を実現しました。
https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108
(詐害信託の取消し等)
第十一条委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、受託者が債権者を害することを知っていたか否かにかかわらず、債権者は、受託者を被告として、民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる。ただし、受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が、受益者としての指定(信託行為の定めにより又は第八十九条第一項に規定する受益者指定権等の行使により受益者又は変更後の受益者として指定されることをいう。以下同じ。)を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において債権者を害することを知っていたときに限る。
2前項の規定による詐害行為取消請求を認容する判決が確定した場合において、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者(委託者であるものを除く。)が当該債権を取得した時において債権者を害することを知らなかったときは、委託者は、当該債権を有する債権者に対し、当該信託財産責任負担債務について弁済の責任を負う。ただし、同項の規定による詐害行為取消請求により受託者から委託者に移転する財産の価額を限度とする。
3前項の規定の適用については、第四十九条第一項(第五十三条第二項及び第五十四条第四項において準用する場合を含む。)の規定により受託者が有する権利は、金銭債権とみなす。
4委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合において、受益者が受託者から信託財産に属する財産の給付を受けたときは、債権者は、受益者を被告として、民法第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる。ただし、当該受益者(当該受益者が受益権を譲り受けた者である場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)が、受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において債権者を害することを知っていたときに限る。
5委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、債権者は、受益者を被告として、その受益権を委託者に譲り渡すことを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
6民法第四百二十六条の規定は、前項の規定による請求権について準用する。
7受益者の指定又は受益権の譲渡に当たっては、第一項本文、第四項本文又は第五項前段の規定の適用を不当に免れる目的で、債権者を害することを知らない者(以下この項において「善意者」という。)を無償(無償と同視すべき有償を含む。以下この項において同じ。)で受益者として指定し、又は善意者に対し無償で受益権を譲り渡してはならない。
8前項の規定に違反する受益者の指定又は受益権の譲渡により受益者となった者については、第一項ただし書及び第四項ただし書(第五項後段において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。
【弁護士からのコメント】
詐害信託というのはやったことがない事件でした。しかし、文献を調べて、当事者の関係を可能な限り調査した上で提訴したことで、依頼者の希望を実現することができました。とりわけ難しかったのが「詐害性」について受益者が知っているかどうかということでしたが、両者の関係性を丁寧に調べることでこの要件をクリアできました。