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薬院法律事務所

刑事弁護

【解決事例】自白調書作成済みの傷害事件で嫌疑不十分不起訴を獲得


2024年08月15日読書メモ

【相談前】

相手方から、相談者から叩かれて怪我をしたということで被害届を出され、傷害事件として自白調書が作成されていました。しかし、納得がいかないということでご相談に来られました。

【相談後】

具体的な事実関係を聴き取り、相談者の行為が、人に対する不法な有形力の行使(暴行)にあたらないこと、相手方の「傷害」の事実について疑義があることを意見書で示しました。結局、検察官が嫌疑不十分として不起訴処分にしました。

【弁護士からのコメント】

警察は、医師からの診断書があり、物理的接触が認められればそれだけで「傷害罪」と判断することがあります。
しかし、物理的接触があるからといって「暴行」といえるとは限りません。例えば、酔っ払った人が他人に絡もうとしているところを肩を掴んで止めても、「不法」な有形力の行使とはいえません。
また、「傷害」の事実についても、「診断書」があるからといってそれだけで傷害の事実が立証できるわけではないのです。私が良く引用する論文を紹介します。
岸洋介「正当防衛に関する近時の判例の動向及び捜査実務上の留意点」捜査研究2015年7月号(773号)2頁~(13頁)
【傷害の診断書は, 受診者の愁訴のみに基づいて作成されていることがあるので,注意が必要です。この場合,診断書の記載を鵜呑みにして傷害の事実や内容を認定してしまうと,後に公判で争われたときに立証に窮することになってしまいます。そのため,比較的軽微な暴行事件で被害者から後日診断書が提出された場合には,それだけで傷害事件として立件するのではなく,捜査官自身が受傷部位を見て受傷の有無を確認し,その時点で受傷の事実を目視確認できなかった場合には,診断書を作成した医師に対し,診察時に発赤,腫脹などの他覚的所見が認められたか否かを確認することが必要です。頸椎捻挫(いわゆるむち打ち症)のように他覚的所見が認め難い傷害もあるので一概には言えませんが,診断書には打撲傷と記載されているのに,診察時にも診断書提出時にも発赤内出血腫脹といった他覚的所見が認められないのであれば, 当該診断書は受診者の愁訴のみに基づいて作成された可能性が高いので,傷害罪として立件するのは差し控えるべきと考えます。
他方で,事件当時は発赤や腫脹などの他党的所見が認められたのに,起訴時には傷が癒えてなくなっていることも少なくありません。比較的軽微な暴行・傷害事件は在宅送致されることも多く, この場合は,送致された時点では傷が完治していることがほとんどです。そのため,事件直後に被害者に発赤や腫脹などの他覚的所見が認められた場合には, これを鮮明に写真撮影し,証拠化しておくことが重要です。また,打撲傷の場合,受傷直後よりも,数日経過した後の方が,受傷部位付近に内出血が広がり,痛々しい状態になっていることがあります。そのため,被害者の受傷状態をより正確に証拠化するためには,受傷当初の状態を写真撮影するだけではなく,その後も,事情聴取などで被害者と接した際に傷の状態を確認し悪化している様子が見受けられた場合には.その状態も写真撮影して証拠化しておくことが必要です。】

きちんと事実関係を把握し、証拠の裏付け、法解釈を十分理解して対応することが依頼者が不当に刑事処罰を受けることを防ぐことになります。私は、大量の法律書(年間200~500万円)を購入して、知見を深めています。