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薬院法律事務所

刑事弁護

【解決事例】大麻取締法違反・麻薬特例法違反で捜索されたけど、不起訴にしたいという相談


2024年08月15日刑事弁護

※解決事例は実際の取扱事例をモデルにしていますが、特定を避けるため、複数の事例を組み合わせる等した上で、大幅に内容を変更しています。

 

【相談】

 

Q、通販サイトで大麻を購入したところ、麻薬特例法違反(規制薬物として購入)として家宅捜索を受けました。前科をつけたくないのですが、不起訴にならないでしょうか。

A、いわゆる【物なし】事件でも、内容によっては大麻取締法違反または麻薬特例法違反で起訴される可能性があります。弁護人が意見を述べることで処罰を回避できる可能性があります。

 

【解説】

 

私が以前取り扱った事例をモデルにしています。すでに送られてきたものはなくなっていましたが、【物なし】事案として大麻取締法違反、麻薬特例法違反で処罰されるかもしれないということで相談がありました。違法薬物事件については、薬物を規制する法律そのものではなく、麻薬特例法8条違反で捜索・処罰がされることがあります。実際に取引されたものが違法薬物と立証できなくても捜索可能になるところがポイントです。「物なし 麻薬特例法 大麻 起訴」で検索すればの大麻での起訴事例のニュースが出てきます。モデルケースでは、本人には正直に話をさせた上で、捜査機関の担当者と面談し、最終的には不送致処分で終わりました。

違法薬物自己使用・所持案件で、家宅捜索を受けて弁護士に相談に来る際は、すでに警察で自白調書が作成されているということが多いです。そうなると、「完全黙秘」をして証拠不十分を狙うということは難しいですし、基本的には供述証拠の証拠としての脆弱性を指摘して、嫌疑不十分不起訴か、起訴猶予を狙うことになります。今回の事件も証拠を想定して捜査機関と面談した結果、最も良い結果である不送致処分に至りました。最近はインターネットで簡単に違法薬物が手に入る現状があり、ふとしたことから若い人が手を出してしまうことがあります。しかし、そのことが本人や家族の人生に大きな影響を与えてしまうのです。悩まれたら、ぜひご相談ください。

*国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律

*(規制薬物としての物品の輸入等)
第8条
2薬物犯罪(規制薬物の譲渡し、譲受け又は所持に係るものに限る。)を犯す意思をもって、薬物その他の物品を規制薬物として譲り渡し、若しくは譲り受け、又は規制薬物として交付を受け、若しくは取得した薬物その他の物品を所持した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000094

 

※不送致について
刑事訴訟法246条では、司法警察員が犯罪の捜査をしたときは、微罪処分の場合を除き、検察官に送致(書類送致)しなければならないと定めています。

第二百四十六条 司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131

従って、強制捜査にあたる捜索差押がなされた場合、検察官に記録を送る、、、はずですが、実は警察実務では警察限りとして、送検されないことがあります。これは大コンメンタール刑事訴訟法にも載っていませんし、弁護士をはじめとする法曹にもあまり知られていない警察独自の取り扱いです。

理屈としては、この規定は、捜査活動によって犯罪であることが明らかになった場合に送検すべきという趣旨なので、嫌疑がはれた場合には「犯罪」の捜査はしていなかったというもののようです(もっとも、私の調べた限りではこの理屈を支持する裁判例や学術書は見当たりません)。

この理屈は現在においては警察庁において適当なものではないとされる一方で、すべて送致するかについては実務上の問題があることから見解が留保されています。(刑事法令研究会編『新版第2訂 逐条解説犯罪捜査規範』(東京法令出版,2002年3月)447頁~にも記述があります。弁護人としては積極的に狙っていきたいところです。

 

【参考文献】

 

須賀正行「元検察官のキャンパスノートNo.42-麻薬特例法-業として行う覚せい剤の譲り渡し」捜査研究2012年11月号(738号)53-54頁
【「規制薬物として」とは,規制薬物ではない薬物若しくは規制薬物であるか否か不明な薬物その他の物品の輸入,輸出,譲渡し,讓受け又は所持の各行為に及んだ者が,その行為の時に,その薬物その他の物品を規制薬物であると認識していることをいうと解され,輸入,輸出及び所持については,その行為の客体が規制薬物として交付を受け,取得した薬物その他の物品とされています。
これは,本条が成立するためには,行為者がその取扱いに係る薬物その他の物品を単に主観的に規制薬物であると認識していただけではなく客観的に見ても規制薬物と認定し得る状況下で,その行為が行われたことを要する趣旨であると解されています。
つまり,輸入,輸出及び所持は,その行為態様として行為の相手方の存在を必要としないため, 当該薬物又はその物品を入手するに際し,相手方から明示的,黙示的に規制薬物であると表示された場合等, 当該行為者がそれを規制薬物であると認識していたのみならず,一般人からみてもその状況下では,行為者が輸入し,輸出し,所持していた物が規制薬物であると認識するのが通常である場合に限る趣旨であるとされています。讓渡し,讓受けの場合も, 当該薬物が規制薬物であると認識するのが通常であるという客観的状況が存在することが必要ですが,讓渡し,讓受けの各行為はその行為態様として必ず相手方の存在を必要としていますから,例えば讓渡人が物を譲り渡す際に,それが規制薬物であることを明示的,黙示的に表示する等,規制薬物であると認識し得る客観的状況下で行われた場合に当該行為が処罰されることとなります。】