被害者と示談できていない事案で、微罪処分は可能かという相談(刑事弁護、万引き、置き引き)
2024年08月31日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私はコンビニでお菓子の万引きをしてしまいました。インターネットで調べると「微罪処分」というものがあるようですが、被害店舗と示談ができていません。その場合でも微罪処分にはなるのでしょうか。
A、被害者が処罰を希望しない場合は可能性があります。
【解説】
万引き事件や置き引き事件などで、相談者が「微罪処分」になることを希望されることがあります。
微罪処分の要件については、一般的に公開されていませんし、毎各地方検察庁の検事正の指示に基づき、都道府県の警察ごとに決まっていますので地域毎の違いがある可能性があります。もっとも、一般的な要件については、警察官向けの昇任試験雑誌(警察公論等)に掲載されています。微罪処分の要件としては、犯罪事実が極めて軽微といった基本的な要件(犯罪捜査規範198条)に加えて、罪種毎の要件があります。
警察公論2023年1月号付録論文2023 298頁
【ア 窃盗、詐欺、横領及びこれに準ずる事由のある盗品等に関する事件
〇被害額が僅少(20,000円以下)である。
〇犯情が軽微(手段方法が悪質でない)である。
〇 盗品等の返還等被害の回復が行われている。
〇被害者が処罰を希望しない。
〇素行不良者でない者の偶発的犯行で、再犯のおそれがない。】
弁護人としてはこれらの基準を参照しながら弁護活動を行うわけですが、このうち、【被害者が処罰を希望しない。】の要件は、実は示談が必須というわけではありません。重要なのは被害者の心情そのものですので、示談が出来ていなくても、被害者が「処罰を望まない」と警察に表明すれば要件を満たすことになります。通常は被害届を出している場合にはこれにあたらないことが多いでしょうが、すべて個別判断です。
※犯罪捜査規範
https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50400000002#Mp-Ch_11
(微罪処分ができる場合)
第198条捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。
(微罪処分の報告)
第199条前条の規定により送致しない事件については、その処理年月日、被疑者の氏名、年齢、職業及び住居、罪名並びに犯罪事実の要旨を1月ごとに一括して、微罪処分事件報告書(別記様式第19号)により検察官に報告しなければならない。
(微罪処分の際の処置)
第200条第198条(微罪処分ができる場合)の規定により事件を送致しない場合には、次の各号に掲げる処置をとるものとする。
(1)被疑者に対し、厳重に訓戒を加えて、将来を戒めること。
(2)親権者、雇主その他被疑者を監督する地位にある者又はこれらの者に代わるべき者を呼び出し、将来の監督につき必要な注意を与えて、その請書を徴すること。
(3)被疑者に対し、被害者に対する被害の回復、謝罪その他適当な方法を講ずるよう諭すこと。
(犯罪事件処理簿)
第201条事件を送致し、又は送付したときは、長官が定める様式の犯罪事件処理簿により、その経過を明らかにしておかなければならない。
【参考文献】
刑事法令研究会編『3訂版 ヴィジュアル法学 事例で学ぶ刑事訴訟法』(東京法令出版,2015年12月)242頁
【この検事正の指示は、検事総長指示の範囲内で、各地方の実情に応じてなされるため、全て同一の内容ではなく、例えば、現行犯逮捕された事件や捜索差押等強制捜査した事件を除外事件として微罪処分することができないものもある。】
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