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薬院法律事務所

刑事弁護

大麻所持事件、いわゆる「物なし」事案での起訴される可能性があるかという相談(刑事弁護)


2024年09月02日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

Q、私は、以前大麻を購入していました。もう止めていたのですが、先日、警察から家宅捜索が入り、「麻薬特例法違反」だといわれています。尿検査は陰性だったのですが、処罰されるのでしょうか。

A、「違法薬物として譲り受けた」ということで、麻薬特例法違反で起訴される可能性があります。

 

【解説】

大麻所持事件について、既に大麻の現物が存在しない場合は、大麻取締法違反では起訴されないのが通例です。もっとも、大麻取締法違反にはならなくても、「麻薬特例法」8条2項違反で起訴されないかという論点があります。かつては単純な大麻所持事件では「物なし」では起訴されない傾向にあったようですが、近時は、「麻薬特例法違反」で起訴される実例が出てきています。その背景としては、大麻事案が重点的な検挙の対象とされていること、LINEなどで取引の履歴が残ることが多くなったということがあると思われます。

 

*国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律

*(規制薬物としての物品の輸入等)
第8条
2薬物犯罪(規制薬物の譲渡し、譲受け又は所持に係るものに限る。)を犯す意思をもって、薬物その他の物品を規制薬物として譲り渡し、若しくは譲り受け、又は規制薬物として交付を受け、若しくは取得した薬物その他の物品を所持した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000094

 

【参考報道記事】

「日大アメフト部の薬物事件、麻薬シンジケート向けの法律が拡大適用されている重大問題」

https://globe.asahi.com/article/15081775

【拡大適用された麻薬特例法
連日のように日大アメフト部の薬物事件が報道されている。

本年8月に3年生の部員が、乾燥大麻片と麻薬だと思って覚醒剤を所持していたことから逮捕され、麻薬及び向精神薬取締法違反の罪で起訴された。その後、3人の同部員が麻薬特例法違反で検挙されている(12月13日現在)。

この3人については、いずれも大麻と認識しながら密売人から薬物を譲り受けたという点が容疑となっている。同じアメフト部内での薬物事件だが、最初の逮捕者とその後の3人の罪名が異なっている点がこの事件の特徴である。

大麻を吸っていた部員が他にも10人程度いると言われており、もしもかれらが逮捕されるならば、同じ麻薬特例法違反ということになるだろう。】

 

 

 

【参考文献】

 

中川清明「第5章麻薬特例法の罪 第5節第8条(規制薬物としての物品の輸入等)の罪」藤永幸治編集代表『シリーズ捜査実務全書8 薬物犯罪(第2版)』(東京法令出版,2006年8月)254-255頁

【3 捜査上の留意点
本条の罪を立件するためには、通常の覚せい剤取締法違反事件の捜査におけるように、まず、輸入、譲渡し、所持等の行為及び行為者(共同正犯・幇助犯と成り得る関与者を含む)を特定することが必要であるが、これとともに
① 行為者において、行為時に、当該物が規制薬物であるとの認識があったこと
② 当該行為が、規制薬物であると認識し得る客観的状況下で行われたこと
に関する捜査が必要である。

(略)

本条の罪の客体には、前述のように、規制薬物であるか否かの証明が不十分である物も含まれるため、理論上は、対象物が現存せず、あるいは、これと結び付<尿の鑑定結果が存しない、いわゆる「物なし事件」についても本条で対応できることとなる。しかしながら、実務的に考えると、単発の譲渡行為について、譲渡物につながる鑑定が得られないからといって、譲渡人及び譲受人の具体性を欠<供述のみによって安易に本条の罪による立件をすることは、上記①の点の立証に難を残すこととなると思われる。】

https://www.tokyo-horei.co.jp/sousajitsumu8/

 

吉松悟『麻薬特例法違反事件の捜査・処理上の諸問題(報告書第87集第2号)』(法務総合研究所,1999年12月)106頁以下では、旧麻薬特例法11条1項(現麻薬特例法8条1項)違反単独で起訴した事例が複数紹介されています。覚せい剤の譲り受け事案ですが、過去にも実例がなかったわけではないです。

 

※私は、麻薬特例法違反で立件された事件を不送致処分で終わらせた経験があります。

【解決事例】大麻取締法違反・麻薬特例法違反で捜索されたけど、不起訴にしたいという相談

※2025/1/7 chatGPT o1 proで検証してもらいました。

以下の文章は、

「大麻の現物(『物』)が見つからなくても、『麻薬特例法』に基づき起訴される可能性がある(いわゆる『物なし』事案で大麻譲受・所持を追及されることがある)。」

という趣旨を含んでいます。結論として、この内容は日本の刑事実務・麻薬特例法の運用に照らしてほぼ正しい**と言えます。ただし、以下のような補足・留意点があります。


1. 「物なし」でも大麻などの薬物犯罪が問われうる根拠

(1)麻薬特例法8条2項

  • 麻薬特例法(正式名称:国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律)8条2項は、

    「薬物犯罪(規制薬物の譲渡し、譲受け又は所持に係るものを犯す意思をもって、薬物その他の物品を規制薬物として譲り渡し、又は譲り受け…をした者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」 と定めています。

  • **「いわゆる大麻取締法・覚せい剤取締法等の本体法違反とは別に、麻薬特例法上の“規制薬物としての物品”を譲受・所持した行為を罰する」**狙いがあり、“規制薬物”かどうか客観的に確認できない(物が現存しない)場合でも、被疑者・被告人が「大麻と認識して譲り受けた」点が証明できれば立件可能という拡張的な趣旨の規定です。

(2)いわゆる「物なし」事案とは

  • 従来の大麻取締法・覚せい剤取締法違反では、「現物の薬物」を押収・鑑定することが立件の大前提でした。
  • 麻薬特例法8条2項は、「規制薬物だと思って入手(譲受)した」事実自体に罰則をかけるため、現物がすでに廃棄・消費されていても起訴できる可能性を広げた規定とされています。

2. 実務上のハードル:立証の難しさ

(1)「薬物と思って譲受けた」認識の証明

  • 現物がない状態で「確かに大麻だった」と認定するには、被疑者や関係者の供述、LINE・SNSのやり取り、通話記録などの周辺証拠が必要となり、捜査機関にとって立証ハードルが高いのが実情です。
  • しかし近年、LINEやSNSなどの電子コミュニケーションの履歴から「大麻を買った・譲り受けた」という事実を裏付ける例が増えており、警察・検察が麻薬特例法違反での立件を強化していると指摘されます。

(2)「物なし」では安易に立件されにくいが、可能性は否定できない

  • 実務的には、「単なる自白」だけで物なし事件を立件するのは慎重ですが、周辺事情や複数の供述が一致すれば、起訴される事例が出てきていると本文が述べるのはそのとおりです。
  • 実際の捜査指針(文献例)でも、「理論上、物なしでも麻薬特例法で対応可能だが、安易には行わない」といった旨が書かれています(「中川清明『捜査上の留意点』」等)。

3. 本文の結論と真偽

  1. 「大麻の現物がなくても『麻薬特例法』で起訴される可能性がある」
    • 正しい。8条2項違反がその根拠となり、捜査機関が被疑者の譲受行為を立証すれば起訴はあり得る。
  2. 「近時はLINE履歴などから立件実例が増えている」
    • 十分に考えられる。日大アメフト部事件でも、最初の逮捕者と異なる形で後から部員が「特例法違反」で立件された例が報道されている。
  3. 「過去には単純大麻取締法違反で物がなければ不起訴となっていた事例が多かったが、状況が変わりつつある」
    • これも実務の流れに沿った指摘であり、本文の説明は妥当といえる。

結論として、本文の説明は、現在の捜査実務や麻薬特例法の立法趣旨に基づき、「物なし」でも譲受行為を認定できれば起訴される可能性がある、という認識を正確に示している。したがって、本文章の内容は真実性が高いです。


まとめ

  • 「大麻が現存しない」「尿検査も陰性」という状況でも、大麻と認識して買った・譲り受けた等が周辺証拠で立証されれば、麻薬特例法違反8条2項で起訴される可能性がある。
  • 本文は、そのような近年の運用実態を指摘しており、事実に即した正しい説明となります。