万引き事件、現行犯逮捕や家宅捜索がなされた場合でも微罪処分ができるか
2024年09月17日窃盗(万引き)
【相談】
Q、私は、先日スーパーマーケットで食品を万引きしてしまいました。前科はありません。何度か繰り返していたせいか、突然自宅に警察が来て家宅捜索をされ、警察署に連れて行かれました。警察署で、私が何度か万引きをしていることを認めています。インターネットで調べていると、被害者が赦している場合には微罪処分という形で前科がつかないようにできるとみました。微罪処分で終わらせることは可能でしょうか。
A、地域の運用によりますが、微罪処分の他の要件が満たされていても、微罪処分はできない可能性があります。ただ、それでも不起訴処分は狙えるでしょう。
【解説】
万引き事件では、特に初犯の場合は、「微罪処分」として前科がつかない警察限りの処分で終わることがしばしばあります。もっとも、この微罪処分には色々な要件があり、そのうちの一つとして「逮捕や捜索」がなされていない事案であることが必要とされている場合もあります。そのため、逮捕、捜索がされている事案では、微罪処分を狙うこと自体ができない、という場合もあります。実務的には、不起訴を狙う場合と弁護活動の内容は重複するので問題となることは少ないと思われますが、要件を正確に把握しておくことは重要でしょう。
【参考文献】
古田佑紀『刑訴法からみた犯罪捜査規範』(真正書籍,1989年11月)436頁
【細目(微罪処分のできる事件)
成人の被疑事件の、うち犯罪事実が軽微であって、次に掲げるものの一に該当するものは微罪処分をすることができる。ただし、被疑者を逮捕した事件、令状の発付を受けて押収、捜索、検証その他の強制捜査をした事件、告訴、告発、請求または自首にかかわる事件および検察官から特に送致すべきものと指示された事件については、微罪処分をしてはならない。】
警察実務研究会編著『地域警察官のためのチャート式事件処理要領(第2版)』(立花書房,2014年6月)7-8頁
【イ 根拠と対象事件
微罪処分の根拠は,刑事訴訟法246条ただし書による,各地方検察庁検事正の指示「送致手続の特例の件」であり,この検事正指示で示された微罪処分相当事件は,各地方検察庁単位で異なるが,おおむね次のとおりである。
(略)
また,対象外事件としては
・被疑者を逮捕した事件
・許可状の発付を得て,押収,捜索,検証その他強制捜査をした事件
・告訴,告発,請求又は自首に係る事件
・少年事件
・駐留軍の構成員,軍属又は家族の犯罪
(各地検,検事正の別途指示・送致手続の特例に関する件による)
・検察官から特に送致すべきものと指示された事件】