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薬院法律事務所

刑事弁護

投資の回収金を受け取るために、口座を開設して他人に通帳を渡し、詐欺罪とされたという相談(刑事弁護)


2024年10月04日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は、福岡市に住む20歳の大学生です。先輩から、投資を勧められて始めることにしました。先輩は、お金を預けてくれれば、儲かったお金を入金するといわれて新たに銀行の預金口座を開設しました。振込だと時間がかかるし、振込手数料がかかるということでした。通帳とキャッシュカードを渡していたところ、先輩が逮捕され、警察から私の口座が詐欺の振込金の受取口座に使われていたと聞きました。私にも詐欺罪の嫌疑がかけられているということで、非常に困っています。どうすればいいでしょうか。

A、預金通帳等を第三者に譲渡する意図を秘して預金口座を開設する行為は、詐欺罪が成立するというのが最高裁判例です。もっとも、ご投稿の事情からすれば、ご質問者様も騙されたという事情がありますし、あくまで入金を受け取るためだけだったと思われます。不起訴になる可能性はありますので、弁護士に依頼して、警察、検察官と交渉すべきです。口座が犯罪に利用された場合、警察からの通報によりその口座が凍結されるだけではなく、今後他の銀行でも口座が開設できなくなるといったことも起こりえますので、速やかな対応が必要です。

 

【解説】

 

ご相談の事例では、そもそもその「先輩」の行動が違法行為だったのではないかと思われますが、それまでの人間関係から断れないとか、信用してしまったということでこういった事例は起こりえます。

令和6年6月28日更新 金融庁 詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!

https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/attention.html

 

そして、銀行口座を他人に利用させる目的で解説することは、最高裁判例により「詐欺罪」に該当するとされています。そのため、ご相談の事例では詐欺罪が成立する可能性はありますが、最高裁判例の事案と異なり、あくまで自己の投資の回収金を受け取る目的だったということがあります。事実関係の違い等を主張することで不起訴となる可能性もあります。

最判平成19年7月17日

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=34955

判示事項
預金通帳等を第三者に譲渡する意図を秘して銀行の行員に自己名義の預金口座の開設等を申し込み預金通帳等の交付を受ける行為は,刑法246条1項の詐欺罪に当たるか裁判要旨
預金通帳等を第三者に譲渡する意図であるのに,これを秘して銀行の行員に自己名義の預金口座の開設等を申し込み,預金通帳等の交付を受ける行為は,刑法246条1項の詐欺罪に当たる。